ギャル子、走る
死んでねーし、ウチまだ死んでねーし。
全力失踪して死にそうだけど、ワンちゃんあるはず。
走れ、ウチ。
>絵比奏度 02
ギャル子、走る
後ろから、プリンがウチを追ってくる。
追われてるから、ウチは逃げる。
周りは森だし、木ばっかだし、人気はないし、後ろはドスドスうるさいし。
ウチは木をよけて走るじゃん?こいつは木をこん棒で凪ぎはらって直進するじゃん?
本当に急速に距離詰められてるから。
絶対コイツ、ミサの好きな漫画に出てたって。ウチ見たもん。
こいつのこと、ミサ何つってたっけ。
ウチあんまり漫画とか読まねーし、記憶がヤバイ。
はいはいはいーって話流してたもん。ミサの語りマジで長いし。
マジ、ちょーヤバい。
記憶を甦らせろウチ、ウチならできるってマジ。
“アミー!今週のアストランティスがちょーやばくて!聞いて、つか聞け”
“え、レストランが何?”
“死ね”
“マジ理不尽ウケる”
違う、これタイトル。
“でさー、その王子に飛びかかったゴブリンのせーでウチの王子が怪我して!マジないわー”
“プリン?てか、いやミサの王子じゃないべ?漫画のキャラっしょ、ウケるわー”
“いっぺん死んでこいよ”
…あ。
思い出した、思い出した!
緑色のプリンの小さいやつ、プリンじゃない。
ゴブリンとか言うやつぢゃん。
ミサの王子(笑)が顔怪我してイメチェンしたときのじゃん!
てかプリンな訳なかった、プリン頭でもねーし黄色くもないもん後ろの鬼ヤバイの。
落ち着け、うち。
“で、ゴブリンのリーダーにでかいのがいるんだけど、こいつが王子に向かって弓でがーって”
“王子ボロボロじゃね?鬼ヤバ”
“殴りかかって”
“…弓で?”
“弓は殴るもんっしょ、これアストランルール。絶対外れて距離詰められてぶつなぐ”
“弓向いてないってぜったい、ウチが保証しちゃる”
“ミサもそれは思う”
アストランルール(笑)
あの作者絶対あのとき病んでたべ。
弓で殴りかかるとか新しすぎじゃんね。
でもウチの頭、今思い出したいのはそこじゃねーし。
頑張って、マジで頑張って。
あとちょっと、あとちょっとだから。
ミサ、あのときなんか言ってたっしょ。
弱点的な話してたっしょ。
マジで頑張って。
もう割りとヤバイから、割りと追い付かれてるから。
さっき髪の毛引っ張られてエクステ抜けたし。
髪もブチって言ったし。
マジで痛かった。
誰か泣かなかったウチを誉めろ。
“でー、そこで王子が閃くんだって”
“何を?”
“えー、打開策的な?なんかこう、弱点を思い出して”
“どんな?”
これだ。
“知らない、来週じゃね?”
詰んだ。
…この事態をどーにかしたら絶対ミサにスイフェス奢らせるから。
スイーツフェスからのスターダックス安定だから。
てかそもそも、ウチ、なんでこんなことなってんの。
可笑しくね?おかしいじゃんね。
今もう一回後ろ見たけどアレ、明らかに日本にいない系の生き物じゃん。
つか、あ、ヤバい。
振り向いたりするんじゃなかった。
ローファー滑った。
あ、これ、転、