ギャル子、とくろぽよ
ウチにとっては、この世界って漫画のなかなんですけど。
でもこれ、言ったらまずい系じゃんね。
>絵比奏度18
ギャル子、とくろぽよ
プリンには、言った気がする。
いちめろおばあちゃんには言えなかった。
ヤマンバとドラピッピは勿論無理ぽ。
無理ぽ無理ぽ。
信頼してない訳じゃねーけど。
ヤマンバとか、性格趣味嗜好男の好み含めてぜんっっっっぜん!!!あってないけど?
嫌いではないし。
悪いやつじゃないし。
でも、秘密は話せない。
例えばウチが向こうの世界にいて、その世界が漫画になってる別の場所から来ましたーなんて言うやつにあったとして。
もし、それが本当らしいってなったら、ウチ、真っ先にこう聞くと思う。
え、それ未来が分かる的な?やばたんー!って。
だって漫画なんでしょ、先知ってたりしないのって。
でもそれって、ウチの場合、多分、話しちゃまずいやつじゃんね。
もーほんとざっくりしか覚えてないけど、あくまで詳しいのはミサだけど、ウチもちょっとは知っちゃってる。
それがドラピッピとかにばれたら、間違いなく使うでしょ。
場合によっては展開変わるでしょ。
それじゃあ、だめじゃん。
別に難しいこと考えてる訳じゃない。
でもダメだと思う。
だってそしたら、あの時この漫画の話をしてたウチとミサは、どーなるのって、思う。
ここが、漫画の世界なのか、よく似てて違うとこなのかは知らないけど、漫画の世界かもしれないんなら、ウチには話せない。
ウチが勝手なことをしたせいで、漫画のストーリーが変わっちゃったとしたら。
ミサがたのしそーに“今週のアストランティス”語りしてた時間が、もしかして変わっちゃうかもしれない。
それだけは、やだ。
“ちょっとアミー!今週のちょーやばかったー!やばたんー!やばばー!”
“えー、それ先週も聞いたってー”
“先週を遥かに超えてた!”
“それも先週聞いたっちょ、ワインかよ”
本当は、ウチの代わりにアミがこっちに来ればいいのになって思ってる。
ウチ、分かんないし。
アミの王子さま?とか、アミ会いたかったろうし。
せめてスマホがあれば、写メってお土産にすんのに。
「…あーあ」
今日は、プリンは忙しいから来ないって言ってたので、裏庭にはウチしかいない。
そのうちドラピッピにここもばれちゃうだろうけど、今はまあ、一人平和だ。
大きな石造りのお城も、キラキラ光る粉を纏った花も、どれもリアリティーなんでぜんぜんないのにぜーんぶ本物だと思うと頭がいたい。
ちょっと花の仕組みが気になって、一輪摘んでみようとした、その時だった。
がさり、って音と共に、その花のすぐとなりの植え込みが、揺れた。
「え、猫でもいんの?」
そもそもこの世界に猫的な生き物がいるかもちょっと分かんないんだけど。
がさがさ、がさがさ、と茂みが揺れる。
それをガン見するウチ。
とりあえず小動物っぽい音だ。
ヘビ?それないか。
「おいおまえ!」
そして出てきたのは。
「ねこってなんだ!」
黒い、ぽよぽよした、ゼリーの塊みたいな丸々している、良くわからない生き物だった。
「やべえしゃべった、やばばば…」
「あぁ!?」
もちもちしてて、まるっこい。
ぽよんぽよんと跳ねてはこっちへと近づいてくるそれ。
わりと元気だ、柄は悪いけど。
抱き締めたら気持ち良さそう。
決めた。
とりあえずお前のあだ名はくろぽよな、くろぽよ。




