ギャル子、と世界
だからさあ、まじめなのはダメぽよっていったじゃーん。
>絵比奏度17
ギャル子、と世界
つまるところ、馴染むかどうかが問題なのじゃ。
おばあちゃんはウチにそう言った。
「簡単なことなんじゃよ、魔王様や。魔族と言うのは、何百年も生きる。魔王と言うのは、魔族じゃな?よって、同様に長生きじゃ。魔王様が魔王様に“成れば”、自然と体も作り変わる。とはいえ魔王様が帰りたいと思うている間は、変わりはせぬが」
「なにそれやばたん、ダイエット広告の詐欺っぽくね?」
「中には、先代のように若くして死んでしまうものもおるが…これは、寿命と同じじゃな」
「へえ…」
また出たな、センダイサマ。
てかその人、そんなに早く死んだならフツーに“魔王になってなかった”とか言うだけじゃないの?
そう言うのは言っちゃダメ系?
KY?
「時々異界から迷い込むもの、それをこの世界では魔王と崇めておる。言うなればそういう…システム、じゃな」
「特別な力がーってやつでしょー?知ってる知ってるー、でもウチそもそも魔力?、がないし?」
「それが不思議ではあるのう」
「おばあちゃんも分かんないんだ」
「ああ、けれど魔王は複数とは現れぬ。…魔王様の力も…まあそのうち発揮されてくるやもしれんな。ワシの先見の力もな、すこぉし分かるのが遅かったのじゃ」
割りとテキトーな感じでいいんだ。
おばあちゃんはウチに笑って見せる。
ウチにはなんにも見えないけど、おばあちゃんには水晶玉になにか見えてるのか。
いーなあ、ウチもそー言うの欲しい。
でもさあ。
「置いてかない?」
「ん?」
ウチが気になるのは、一つだけだ。
「ウチさぁ、ノリで魔王とか言っちゃったの、ちょっち反省なうなんだよね。死にたくなかったからー、撤回できないけど」
「うむ」
「けどさあ、ウチ、やっぱり帰りたいし。こっちで一年過ごしても、向こうじゃ三日か四日!ってのは分かったけど、ウチの体はさぁ、一年分、年取んない?」
「…うむ」
「そしたらウチ、置いてっちゃってない?向こうの時間」
具体的にはさぁ、17、8と19とって、明らかに差があるじゃーんってことで。
ウチは女子高生だし、もーちょい女子高生でいるつもりだしだし?
でも無理があるよねー的な見た目は勘弁。
「あまり長居はできんじゃろうな。魔王様が此方に馴染めば老化は遅くなるが、そうなってはもう帰れぬ」
「そっかぁ」
やっぱり、のんびりしてられないんだ。
「どーやったら帰れんの?」
「そういう泉があるのじゃ。生き物を一度だけ、そのものが心底望む場所に送ってくれる」
「おぉ…!」
「まあ隣国のイヴァリースにあるんじゃがな」
「えっ」
姫じゃん、姫が居る国じゃん。
ちなみに今貿易止まってるんじゃなかったっけ。
もらえますか貿易もやめてるのに人が入れるわけないよね?
姫勝手に来てたけど、ドラピッピ激おこだったじゃんね?
「うむ、そこは魔王様の頑張りに期待と言うところじゃな!勿論この国に残っても良いのじゃよ」
「いやマジ勘弁なんですけど」
「なれば、まずは交易を再開させねばならぬなぁ」
あっ、やっぱこのおばあちゃん只の可愛いおばあちゃんじゃないわ。
狸とか狐とかそんな感じだわ。
「大丈夫じゃ、魔王様なら、成せよう」
「根拠は?」
「ないのう」
「だめじゃん」
でもまあ、目標ができたのは、良かったかもしれない。
後で、貿易が停止した理由、調べとかないと。
ウチちょー真面目じゃん。
ウチもおばあちゃんに笑って見せた。
大丈夫、ウチはちゃんと戦闘服だ。
「ありがとーおばあちゃん、スッキリしたー!」
「それはよかった」
「じゃあウチもう行くね、ドラピッピおこだろうし逃げるー」
「急いだ方がよいなぁ、今こちらに向かっておるよ」
「やばばば」
それはヤバたん。
怒ってるドラピッピちょーめんどくさいんだよね。
とりま時間あけとかないと、めっちゃ絡まれるし。
「…おばあちゃんてさあ、名前なんて言うの?」
「ん?…ああ、イチ、じゃよ。呼ばれなくなって久しいが…」
「ふぅん」
じゃあ、おばあちゃんはあれだわ。
「おばあちゃんは今日からいちめろおばあちゃんね。ドラピッピはドラピッピだからイチピッピはあれだし」
「ほう!」
「ウチのこと、魔王様でも良いけどアミとか、プリンみたいにおにもりとか呼んでくれてもいいかんね」
名前って、大事だ。
ウチはやっぱり、鬼盛りのアミだから。
「それじゃあ、アミと呼ぼうかのう」
「わーいうれしー」
きゅ、と目を細めたおばあちゃんに手を降る。
何となくざわざわした気配が近付いてきてるから、マジで時間はもう無さそう。
最後にもう一回いちめろおばあちゃんの方をみてから、ウチは部屋を飛び出したのだった。
うわ足しびれてる、やばばば!
スッキリしたのは本当だ。
一番の疑問は、解決してないけれど。




