第43話: 溜 め 息 摩訶不思議…
今回は前書きに書く事がありません(^o^)
「お兄ちゃん、待ってたよ〜♪」
俺はまたこの世界に来ていた。
「あぁ、こんにちわ。 それより、なんで俺がお兄ちゃん? 後、君の名前って?」
俺は、この頃夢の中に馴染み始めたらしく、だいぶ感覚が楽になってきた。 余裕のできた俺は今まで訊けなかった事を女の子に訊いてみた。
「? お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ? 後、私の名前は−−だよ♪」
女の子が名前を言おうとした時、強い風が俺達に吹いた。
「え? 聞こえなかったよ。 名前は?」
俺はもう一度彼女に訊いてみるが、女の子は一瞬寂しそうな顔をすると、満面の笑みを作った。
「まぁいいじゃん、そんなの♪ いつか分かる時がくるからさ♪」
「え、ちょ、ちょっと!?」
彼女はそう言うと、俺の腕を掴み、引きずるようにして歩き始めた。
「ねぇ、お兄ちゃん。 お兄ちゃんはあの子が好きなの?」
彼女はこちらを振り向きもせずにそう告げた。
あの子? あの子って誰だ?
「あの子って?」
俺がそう言うと、彼女は立ち止まって振り返った。
「分からないならいい…。 でも、お兄ちゃんも悪いんだから…」
俺が悪い? いったい何の事なんだ? 分からない事が多すぎるぞ…。
彼女は掴んでいた腕を放し、スタスタと歩き始めた。
「え、ちょっと!? おーい!?」
「もう時間! じゃあね!」
俺が必死で呼んだのに、彼女は振り向きもせずにそう言った。
……どうやら、怒らせちゃったみたいだな…。
また、夢が終わりを告げた。
何時もと違うのは、強制に夢が終わったのと、体がとても重く、まるで久しぶりに動かすような感覚が残った事だ…。
「今は……5時…? アイツめ〜、やっぱり強制的に夢の中から追い出しやがったな〜…」
ふあぁ〜、と大きな欠伸をしつつ、一階に降りた。
「え!? 今日はまた珍しく早いね、凛兄ぃ! 今日は洗濯物は中にほした方がいいかな〜」
朝から皮肉を言ってくれる愛しのマイシスター。
だがな、未来よ…。 俺は眠いんだ、だからな……
「………バタッ」
「ふえ!? 凛兄ぃ!? どうしたの? ねぇ!?」
気付いた時、俺はソファーに寝かされていた。
「あれ? 俺は?」
「あぁ、凛兄ぃ、起きた? もぅ、昨日も夜更かししてたんじゃないの? はい、朝ご飯♪」
未来はそう言うと俺の前に朝ご飯を置いた。
今は6時半か…。 何時もの時間だな。
「急に倒れるから、すっごく心配したよ…」
未来が咎めるように言う様が、可愛くてつい頬が緩んでしまった。
「ごめんごめん…。 それじゃ、とっとと食っちゃうか♪」
今日もまた、二人の団欒で幕を開けた日常。
家の外に出ると、麻美が玄関の前で待っていた。
「おはよ、早いお出迎え、ご苦労様です……ふぁ…」
まだ眠気が抜けてないせいで、また欠伸が出てきてしまった。
学校に行ったら、もう一眠りするかな…。
「……おはよ…」
麻美はそう言うと、先に歩き出してしまった。
「凛兄ぃ、麻美さんに何かしたの?」
未来が少し怒った口調で言ってきたが、俺は何時もと違う麻美の態度に気を取られてしまって、返事すらできなかった。
「喧嘩したなら、早く仲直りしなよね…」
未来はそう言うと、麻美の所に走って行ってしまい、俺が一人だけになった。
はぁ、いったいなんだって言うんだ、一昨日から…。 叶には避けられるわ、夢の中の女の子には怒鳴られて、強制的に夢から追い出されるわ、麻美はなんだか何時もと違うし…。
「学校に着いたら、和磨にでも相談してみるかなぁ」
どうしようかと考えながら、一人の登校を行う羽目になった。
−Asami Homura−
朝、思ったより早く起きてしまった私は、そのまま用意を済ませ、何時もよりも早い時間に家を出ることにした。
「あれ? 珍しいわね、何時もなら時間ぴったりに出るのに」
お母さんが私に話しかけてきたけど、私は生返事を返して家を出た。
「いってきます…」
「気をつけてね♪」
私は家から出ると、お向かいにある凛矢の玄関に立った。
あの時、なんで一緒に帰らなかったんだろ…。
一昨日のあの日から、2日間ずっと考えている思考にまた捕らわれてしまう。
ダメだな〜、私って……自分でも思うけど、可愛げは無いし意地っぱりだからな〜…。
目の前にあるドアがとても大きく、重そうな雰囲気を漂わしている。
凛矢と何喋ればいいんだろ…。 と言うより、顔合わせづらいよ〜。
インターホンに指を向かわせるけど、押す勇気がわかない。
「はぁ〜…」
これで何度目の溜め息だろ……もう幸せも飛びっぱなしだよ…。
「全部凛矢のせいなんだから…」
そんな事を呟いても何も変わらないな〜と、再確認させられてしまった。
「凛兄ぃ〜、そろそろ出よ〜」
中から未来ちゃんの声が聞こえたと思うと、足音が玄関に近づいてきた。
私は急いでドアの前から離れた。
「おはよ、早いお出迎え、ご苦労様です……ふぁ…」
まだ眠気が抜けてないらしい凛矢が、欠伸を出しながら、家から出てくる。
まったく呑気そうに……誰のせいで私がこんなに悩んでると思ってるのよ、もう。
「……おはよ…」
私はたった一言そう言って、先に歩き始める事にした。
やっぱり、なんて声を出していいかわかんないよ…。 今も声が掠れそうになったし…。
まったく私は可愛げがないよ…。
ホント、意地っ張りだ…。
「はぁ…」