第41話:羨 望 ? 足踏み…
来週で夏休みが終わります…。
さらばひと夏のアバンチュール…
リムレットに着いた俺と麻美は、窓際の一番奥の席に向かった。
「やぁ凛矢くん、麻美ちゃん。 久しぶりだね〜」
マスターが微笑みながら話しかけてくれた。
「こんにちわ、マスター」
「そういえば、明日から復活みたいだね、凛矢くん。 よろしく頼むよ?」
マスターは俺の肩に手を置きながら、ハハハッと笑っていた。
「えぇ、休んでた分頑張らせて貰います!」
マスターはたぶん人を安心させる力があるんだろう。 優しいお父さんって感じがする。
俺達は席に座り、しばらくすると…
「あの、お客様、ご注文は?」
ウェイターとして俺達に注文を尋ねに来たのは、叶だった。
「え、あれ、先輩? それに麻美さん?」
叶は俺達の顔を交互に見つつ、驚いているようだった。
「あれ? 叶ちゃん今日シフトだったんだ?」
そういや、叶は俺とシフトがズレてたっけ…。 しかも、ウェイターはそんなにやった事ないって言ってたし……うん、俺は運がいいんだな(ポジティブシンキング)。
「珍しいね、ウェイターはそんなにやらないって言ってたのに」
とか、考えつつ聞いてしまう俺。
「え? それは………///」
なんで其処で顔を紅くしたのか、詳しく説明して欲しいんだが…。
「凛矢、あんた叶ちゃんに何かしたの?」
そして、何故か麻美咎められている。
俺、何も悪い事してないのに…。
「先輩や未来ちゃんのお陰なんです!!」
急に叶が叫んで驚いた俺は椅子から崩れ落ちそうになった。
「ど、どういう…意味なんだ?」
驚きのためにバクバクと鳴り続ける心臓は一応無視しつつ、叶の詰め寄るような雰囲気を感じながら訊いてみた。
今の叶の眼には、決心に似たようなものが宿っていた。
「私、暗いから……今までほとんど、親しい人がいなくて…だから、未来ちゃんに話しかけて貰って凄く嬉しかったんです。 そして、先輩に会って…先輩の周りには明るくて優しい人達ばかりだったから…」
明るい……叶が俺の周りの奴みたいになったら……困るな…そして殺される…奏さんに…。
まぁ、そんな茶々は入れずに、黙って先を促す。
テーブルの下では、俺の考えている事を見た麻美によって、足を踏まれているが、黙って促す。
「だから…私も明るくなろうと思って…人と接したりするウェイターもやろうかなって…」
叶が言い終わり、ちょっと照れたように笑うと、正直かなり可愛いと思った。
「そういえば凛矢くん。 二人はデートかい?」
「え?」
その瞬間、何故かその場の空気が凍りついた気がした。
「ぇ…そうなんですか…先輩…?」
叶は目を潤せながら、うつ向いて訊いてきた。
「い、いや、違うよ! ちょうど麻美と帰ってたからだって!」
「そんなに必死に否定しないでよ…もう…」
あれ? なんで俺、必死こいて誤解を解こうとしてんだ?
「そう…なんですか…?」
いつの間にか立っていたのか、叶の上目遣いにドギマギしてしまった。
「あ、あぁ、ホントだよ…。 マスター、変な事を言わないでくださいよ…」
はぁ、なんだか何も頼んでないのに疲れてしまった。
「ははは♪ すまないね、凛矢くん。 お詫びに二人にはパフェをご馳走するよ♪」
気さくな笑顔を見せながら、マスターは叶を呼んだ。
「さっ、頼んだよ叶ちゃん♪ 喫茶リムレットの看板商品の一つになってるからね、 叶ちゃん特製のパフェは♪」
リムレットでは、パフェが食べれる時と食べれない時がある。 それは、叶が作るパフェは何故か美味しく、他の人が作っても同じ味に出来ないのだ。 結果、叶のシフトの時間&少しの作り置きしか食べられないのだ。
まぁでも、この店自体がなかなかマイナーな店のため、それを食べに来る人も少ないのだが……。
あぁ、勿体無い…。
「先輩、麻美さん♪ とびっきり美味しく作りますね♪」
笑顔でキッチンに向かった叶の背中を微笑ましく見つめていると…。
「…これは、ヤバいわね…」
と、言う麻美の呟きが聞こえた。
「ん? 何がヤバいんだ?」
「え? う、ううん? なんでもない、なんでもない…」
麻美は顔の前で手を振りながら、否定していた。
いや、なんでもないって言い方じゃなかったけどな…。
それから、テストやら友達の話しやらで、楽しんでいると、叶がパフェを三つ持って来た。
あれ? 三つ?
「私も今日は、もう終わりでいいよってマスターが言ってくれたので……駄目ですか…?」
またもや上目遣い気味に訊かれて、断る事なんてできません。
「うん、一緒に食べよっか、叶ちゃん♪」
「はい、ありがとうございます♪」
そう言って椅子に座った叶。
「え〜っと、なんで俺の隣なんでしょうか?」
そう、何故か俺の隣に座った叶。
可愛い娘が隣に座ったら、まぁ、かなり嬉しいんだが…。
テーブルの下で何故か足を踏まれてる俺は、どうしたらいいんだろ?
「…麻美さんと、話し易いからでしょうか?」
いや、疑問形で言われても困ります…。
それに、また上目遣いでそんな事を言われたら、もう何も言えないです。
「…もう、なんでも良いです…」
なんだかもう、先が思いやられる。
俺は足を踏まれながら、現実逃避してみようかなと、真面目に考えていた。
叶が、かなり積極的です。
次回はどうなるやら…。
作者もわかりません。