第29話:喋 り 方 美香…
作者、けっこう和磨のキャラ気に入ってます。
和磨が完全に起きたのは、それから2分ぐらい後の事だった。
「…分からない所とかは有るのか……?」
そして、今はテスト勉強中だ。
「分からない所か〜……此処とかかな…?」
私は苦手な数学の分からない部分を指しながら言った。
「…ん……?…其処はけっこう難しいからな……。」
そう言いながら、和磨は私の隣まで膝立ちで近づいて来た。
ドキッ
和磨が隣に来て教えてくれる。
「…此処はだな……。…sinを使って……。」
和磨が丁寧に教えてくれるけど、私は聞いている余裕が無い。
直ぐ隣…
肩が触れ合う程に近い距離…。
私はドキドキと騒いでいる胸をギュッと抑えた…。
聞こえて…ないよ……ね…。
「…どうした……?…やっぱり分かりにくいか……?」
和磨が心配そうに私を覗き込みながら訊いてきた。
「…顔が紅いぞ……?…大丈夫か……?」
「…う、うん…。大丈夫…だよ…。」
なんとか、声を絞り出した。
どうしたんだろ、和磨…。今までなら向かい側から教えてくるのに…。そのせいで上手く話せないじゃん…。
「…少し休憩するか……。…お茶もってくるな……。」
そう言って和磨は部屋を出て行った。
「はぁ〜〜〜。 緊張した〜〜。 ……でもけっこう嬉しかったな♪ うん。」
部屋には私のそんな声が響いた。
―Kazuma Hashimoto―
ドクンドクン…
まだ言ってる…。
自分から近づいたのは言いけど、まさかこんなに緊張するなんて…。
「耐えられる筈が無い。−−!?」
俺は自分の声に驚いた。
今まで出した事ないような感情の籠った声。
俺にも出せるのか…こんな声が……。
「…ふふ……。…どうやら凛矢の言ってた通りみたいだな……。…でも、美香の事じゃないと無理みたいだ……。」
俺は昨日、凛矢にテスト勉強を教えていたら、凛矢が訊いてきた。
「なあ、お前ってなんでそんなにクールな声してんの? 昔から多少気になってたんだよ、なんて言うかその…無感情?な声っていうか…。」
「…俺にもわからないな…。…どうしたら直せると思う……?…実際、無感情で話しているのは本当なんだが……。」
俺がそう言うと凛矢は少し悩んでから、おもむろに顔を近づけて訊いてきた。
「なぁ和磨、お前って好きな人いるか?」
なんでなのか、その時俺は咄嗟に美香の方を見ていた。
「へぇ〜、やっぱ幼馴染みは恋愛対象になるんだな。 俺自身はまだわかんないけど…。 明日から二人で勉強するんだろ?」
凛矢は何かを思い付いたらしく、手をポンと叩いてから訊いてきた。
「…あぁ、そうだが……。」
「お前はホントに美香が好きか?」
俺が答えると凛矢は改めて訊いてきた。
「…たぶんな……。…いつも気にしてはいるからあまり実感が湧かないけどな……。」
これはホントだ…。いつも美香の事は気にしてた…。
中学の時、女子生徒に告白された時も俺はただ、美香と一緒に居たいから断った。
友情よりも互いを想っているのに、恋人じゃない。
友達以上恋人未満…。
今の関係がそれだと思う。
「おーい、和磨聞いてるかー?」
「ーー!? …あ、あぁ……。」
どうやら、いろいろと考えこんでいたらしい。
「だからな、勉強を教えたりする時とかゴールデンウィークで、出来る限り近づくんだよ…。」
「…は……?」
俺は凛矢の言っている事がよくわからず聞き返してしまった。
「だからな、お前が美香の事好きかどうか曖昧なら試してみな? 俺はした事がないんだが沢口が言ってたから。」
沢口とは同じクラスの金髪のたらし男だ。
「…そうか、それでどうだったら好きって事なんだ……?」
俺がそう訊くと凛矢の十八番とも言える見てるだけで安堵するような優しい微笑みをしながら言ってきた。
「直ぐにわかるさ、きっと…。 その時、ちゃんと感情の籠った声が出るはずさ…。 それに、俺は今の和磨の喋り方も嫌いじゃないしな♪」
凛矢はそう言うとテスト勉強に戻った。
俺はあまり感情を表さないけど、この時俺は、美香以外に初めて心から微笑んだ。でも、気付かれたくないから、俺は顔を逸らして微笑んでいた。
凛矢が俺を盗み見ながら優しい笑みを浮かべてる事を知らずに…。
今回は和磨中心に書いてみました。
次も頑張ります♪