第28話:お兄ちゃん トラウマ…
執筆完了!
これから少し、美香と和磨の恋愛を描いていくつもりです。
それでは第28話どうぞ
見馴れた街並みを二人で歩く…。
夕焼けに染まる紅い街…
周りから聴こえる喧騒…
全ては馴染みある者達…。
俺の隣を歩く女の子。
俺はこの子を此処以外で見た事がない…。
でも、馴染みある者の一部として、此処にちゃんと存在している…。
俺はこの子を知ってる…。
夢でしか会わない女の子…
昔から、一緒に成長し続ける子…。
初めて見た時は中学3年の時だった…
初めは俺も女の子も小さかった。でも、次第に俺も女の子も大きくなり、今の状態まできた…。
この頃、女の子の声が聴こえるようになってきた…。それに、まるで実際に接してるような感覚を感じる…。
でも、やっぱり女の子の顔を思い出せない…。
思い出せない…?
一度も見た事無いのに…?
何処かで見掛けたのか…?
駄目だ、わからない…。
女の子は嬉しそうに微笑みながら、俺の腕に乗っかるようにして歩いている。
表情は見えるのに顔は見れない、不思議な感覚…。
「お兄ちゃん…♪」
女の子が可愛い笑顔で喋る。
俺をお兄ちゃんて呼ぶ人なんて今まで知らない…。でも、なんだか心地いい、優しい感じがする…。
「ん?」
俺も自然と笑顔になる。
「お兄ちゃん……きて……。」
「え?」
なんだ? 視界が歪んでいく。
世界が終わり始める…。
いや、夢が終わり始める…。
「お兄ちゃん…起きて……。」
「お兄ちゃん…大好きだよ♪ また今度ね♪」
最後に聞いた声は二つだった。
起きてって事は外界か…未来かな? という事はまた今度があの子か…。 お兄ちゃんねぇ……。
俺はなにか引っかかるものを感じながら、現実に戻ってきたのだった…。
「お兄ちゃん…起きて…♪」
俺が夢から覚め、初めて見たもの、それは……
「お・に・い・ちゃ・ん♪」
俺の上に乗り、俺をお兄ちゃんと呼ぶ、直樹だった…。
「しねしねぇーーーい!!」
「おはよー、凛兄ぃ♪」
「おはようございます、凛矢さん♪」
俺の傷付いた精神を癒してくれる天使が二人…
「おはよ、未来、魅奈ちゃん♪」
俺は可愛い天使達に挨拶をした。
「あれ? 兄さんどうしたの? 顔が痣だらけだけど…。」
「…ぅぅ……ごめんなざぃ……。」
直樹は魅奈ちゃんの問いかけには答えずにさっきまで何度も言ってきた言葉を繰り返した。
「あ〜、兄さんがまたバカな事をやったんですね?」
どうやら、魅奈ちゃんもわかってくれたらしい…。
「そういう事♪ …二度とやるなよ……?」
「ひっ!…は、ふぁいっ!」
青ざめた顔をしながら、直樹は返事をした。
わかったならそれでいいんだが…
「なんで、直樹と魅奈ちゃんが居るんだ?」
俺は起きた時(半分トラウマ)からの疑問を訊いてみた。
「え? 忘れちゃったの? 直樹さんとみなちゃんが家で勉強したいって言ったからでしょ?」
未来が驚いたように言ってきた。
「あ〜、そういやそうだったな。 確か、魅奈ちゃんが勉強を教えて欲しいって言って、直樹が『魅奈が心配だッ!!』って叫び出したんだったな。 そんで、仕方なく直樹をと…。」
「兄さんがご迷惑をかけて、ホントにすみません。」
俺が言い終わると魅奈ちゃんがバッと頭を下げながら謝ってきた。
「気にしなくていいよ♪ シスコンの気持ちはよくわかってるつもりだから。」
「シ、シスコンですか…////」
なんだか、魅奈ちゃんが恥ずかしがってしまった。
「ま、なんで朝からなのかは聞かない事にして、ゆっくりとやりますか…。」
俺はそう言ってから、頂きますと未来が作った朝食を四人で食べた…。
―Mika Imai―
朝、私は起きてから、和磨のお母さんと自分のお母さん、そして私で、朝ご飯を作った。
「じゃあ美香ちゃん、和磨を起こしてきてくれる?」
朝食を一通り作り終わると、おばさんが私に頼んできた。
「あ、うん、了解です♪」
私は内心凄く喜びつつ和磨の部屋に向かった。
和磨の部屋へ行くと深呼吸を一つした。
よしッ!
部屋の中に入ると、和磨の匂いが凄くした。
私はこの匂いが凄く好きだ。香水なのか、甘いようでいて、スッとした透き通る匂い…。
「ふふ♪ 可愛い顔で寝てる♪」
和磨はスースーと寝息をたてながら、眠っていた。
寝返りとかって打たないのかな? 寝癖の一つも無いよ…。
私は少し、自分に絶望しつつ、和磨を起こす事にした…。
「か〜ずま♪ あっさだよ〜♪」
私は和磨の耳元に口を近づけて、そっと囁いた。
「ん、んん〜ん?」
和磨は起き上がったけど、まだ寝惚けいるらしく、可愛い声を出している。
「ふふふ♪ 朝だよ、和磨♪」
もう一度、優しく和磨に言う。
「美…香? おはよう。 ふみゅ…。」
和磨は朝に弱い、寝起きはいいんだけど、起きてから、思考が働くまでに時間が掛かる。
そのせいだろうか、言葉に感情があまり篭らない声ではなく、まるで小さい子みたいな声をだす。
他の女の子が知らない事、私しか知らない事…。
私は嬉しくなり、自分でもわかるほどに微笑みながら喋るのだった…。
昨日の意気込みと共に……
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