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第三話:これからのこと

次に意識が戻った時、今度はベッドの上で横になっているようだった。

フカフカとした布団が全身を包み込み、優しい匂いが心を落ち着かせてくれる。

横を見やると筋骨隆々のツノが生えた男性が椅子に座って腕組みをして眠っている。

そうか、僕は死んだのか。

そこで地獄の医務室で寝ていたんだな。

思えばしょうもない人生だった。

血の池地獄とかかな。

針山は嫌だな。



そんなことを考えて涙を流していると、ツノの人が気が付いたのかこちらを見て笑みを浮かべた。

「今度は泣くのかよ。お前本当忙しいな」

「僕は、死んだんじゃ…」

「死んでねえよ。つうか俺の方が先に死ぬから」

「…それは、僕のせいですか」

涙を拭い、正座してツノの人と向き合う。

「まあそうだな」

「僕はどうすれば…」

「ああ、そのことなんだけどな」

説明するから読みながら聞け、と男性が紙の束を渡してきた。


「まず、さっきお前が割った宝玉な。あれは俺の命を体外に纏めて宝玉内に固定させていた。そうすることで死へのリスクが上がるが、それに見合った力を得ることのできるという禁呪の一つだ」

「すいません…」

「もういいって。次謝ったらデコピンな。そんで、あれが失われた今、俺の命はもってあと数時間てとこだろう。だから、お前に忠告だけして置こうと思う」

「忠告、ですか」

「ああ、そうだ。申し遅れたが、俺はこの世界では終末の魔王グロールと呼ばれている。七大種族の一つ、魔族の王の一柱だ。魔族の王は俺を含めて六人いる」

「魔王、グロール、さん。僕は宮藤了、です」

「了か。グロールって名前もな、勝手につけられたもんで、本当の名前は吾郎ってんだよ。ちゃんとそう言ったつもりだったんだけどな、いつの間にか終末の魔王グロールなんて大層な名前になってた。笑えるだろ?」

「はあ…」

こんな怖い人目の前にして笑えるわけがない…


「まあ、俺もな、日本にいた時にこっちに飛ばされて無我夢中にやってたら魔王になってたんだわ」

「無我夢中で魔王って…」

「生きるためにはなんだってやった。盗みもやったし、人も殺した。仲間が死ぬのが怖くなって、誰も頼らずに生きていこうと思って、この廃墟を根城にして近づく奴らを片っ端から消し炭にした」


これまでの道のりを思い出しているのだろう。

魔王の顔に悲しみの色が浮かぶ。


「俺の過去は、まあそういう感じだな。でも大事なのはお前のこれからだ。お前には、これから三つ、死ぬほど辛い目にあってもらわなきゃならん」

「三つ、ですか」

「ああ。一つ目は、継承だ」

紙をパラパラとめくって資料を出してくれる。

「俺も魔王になる前、なってからもだが、勇者と呼ばれるやつらや、魔王と呼ばれるやつらを屠ってきた。この世界では程度の差はあるが、倒したやつの経験が自分に継承される」

例えば、オーク系統の魔物を倒し続けるとオーク系統のスキルを得たり、気性が荒くなったりする傾向がある。と紙には書いてある。

「つまり、倒した相手を取り込むってことですか?」

「全てではないがな。個人的な記憶までは受け継げねえし、そいつの一番濃い部分を継承するんだ。ゲームとかでなかったか?そういうの」

「ああ…あったような…」

思い浮かんだのは赤い帽子と黄色いネズミだった。

「で、だ。普通に俺を殺しても、恐らく俺が得意とする近接格闘と広範囲殲滅魔法のスキルの熟練度がほんの少し上がるだけだと思うが…」


よくわからない単語が混じってきた。

話の腰を折るのはまずいと思うし、わけわかんなくてもとりあえず聞き逃さないように注意して聞こう。


「問題なのはお前が俺を殺す方法が、命の宝玉を割るって方法だってことだ。ありゃ俺の全てを込めて作った人生そのものだ。恐らく、俺が生きてきた数百年が丸々継承される可能性が高い」

「それだと何がまずいんですか?」

「レベルがな、上がりすぎるんだよ」


なるほど、わからない。

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