第二話
その夜、私は妙な匂いと、大きな音で目が覚めた。
何…?
―――――ゴォォォオオオ
この音…それとこの匂い…。
火事!!
私は慌てて布団から出て、部屋のドアを勢いよく開けて外に飛び出す。
―――――ゴオオオオオ
ドアを開けると、よりいっそう大きな音が聞こえる。
オリヴァンダーさん!
どうか…どうか無事でいて!
私は、祈るような気持ちでオリヴァンダーさんの寝室まで走っていく。
やっとのことで寝室までたどり着くと、すでにそこまで火と煙が迫っていた。
私は迷わずドアの追手に手を掛ける。
すると、その時。
「おい、じじい!命が惜しかったら答えな。ミリア=アーヴェンタはどこだ!!」
私は取っ手に手を掛けたまま硬直した。
この声…一体誰の…。
「だから知らないと言ってるだろうが!!いい加減にしてくれ!」
オリヴァンダーさん…。
「あの娘は“鍵”なんだ!早く答えろ!」
鍵…?
私が…?
何の鍵だか知らないけど…。
何かの間違いだ。
私はただのミリア=アーヴェンタ。
でも、このままだとオリヴァンダーさんが殺されてしまう!
私はありったけの勇気を振り絞って、取っ手を回そうとした。
その瞬間。
「静かにしろ」
後ろからいきなり誰かに口を塞がれ、抱き寄せられた。
声から察するに、男の人だ。
「むっ!!?」
必死に抵抗するけれども、女の私が男の人の力に敵う筈がなく…ビクともしない。
「静かにしろと言っているだろう。…大丈夫だ、俺はお前の敵ではない。中にいる者も俺の仲間が助ける。だから、安心しろ。…ついて来い」
彼はそう言うと、私を離し、今度は私の手を掴んで引く。
信用しても良いのだろうか?
私は一瞬悩んだけれど、ついて行くことにした。
良く考えてみれば、私が部屋に入っていったところでどうにもならない。
寧ろ足手まといだ。
私は、後ろ髪引かれる思いでその場を後にした。