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(改)4/26
表示形式の変更に伴った改稿です。
商店街は背の高い建物に埋まるようにあった。
雨音町商店街――。
入り口にでかでかと看板が打ち付けられている。
幸いなことに商店街の通りは屋根があった。
商店街自体の長さは百メートルもないだろう。
それでも、この区間だけでもこの悪夢のような雨から開放されるなら素直に喜べる。
(よかった……)
俺は商店街に入って傘を閉じた。
着ている服はほぼ全滅で、肌に冷たいそれが張り付いて不快な気分になる。
トラベルバッグは防水仕様なので心配はいらないが一応、中身の確認をする。
商店街のシャッターが下りた店の前で、ガチャリと二つの留め具を外して開けた。
まず充電器や筆箱などの小物が乗っていて、その下に衣服類。
そしてスケッチブックと懐中時計。
それだけだった。
「他に持ってくるもの無かったっけ……」
自分のことなのに何故か疑心暗鬼に陥る。
他にもあったはずだけどな、なんだっけ……。
――――――。
――――。
――やっぱなかったか。
都会の生活を捨てる決意をしてこれだけしか必要なものがないというのは身軽だが、それはそれで残念な感じもする。
「まぁ必要なものがあればこっちで揃えればいい話だけどな」
自分を慰めるように言い聞かせてトラベルバッグを閉じた。
商店街はこの雨も相まってか、駅よりも人の行き交いが多い。
制服を来たままの学生が多く見受けられる。
遊ぶような娯楽施設はカラオケくらいしか見当たらないがみんな友人と楽しそうに過ごしているようだ。
シャッターのおりた店があまり無いところを見ると、困らない程度には繁盛しているのだろう。
そんなことを考えながら歩いていたらいつの間にか商店街の出口へと差し掛かっていた。
雨の勢いを未だ衰えず、冷たく無慈悲に降り注ぐ。
もう濡れているから今後どれだけ濡れても一緒だが、それでも嫌なものは嫌に決まっている。
だが愚痴をこぼしたところで歩を進めない限り、場所は変わらない。
(行くか……)
俺は役に立たない傘を開けて雨の中を駆け出した。