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(改)4/26
表示形式の変更に伴った改稿です。
改札を出て、広がる景色はますます強くなる雨で視界が悪くなっていた。
横の小さなコンビニで購入したビニール傘ではとても凌ぎきれそうにない。
「どうすんだよ、こんなに降ったら傘意味ないだろ……」
ため息と共に右手に握られた傘を見る。
……。
簡易な傘は余計に不安を煽る。
(止むまで待つか……?)
色々考えてみた。
この強い雨の中、姉の住む家まで突っ切るのも気が引けるが、止むかも分からないこの雨に祈祷するのも俺らしくない。
見上げた先に時計。
時刻もちょうど四時を過ぎたところだ。
悠長に待ってられない。そんな気がした。
「行くか……」
息を飲んで傘を開き、右手に傘を持ち、左手にトラベルバッグを引きながら足を前に進めた。
大きな駅に大きなロータリー。
この組み合わせは定番と言えば定番だが、バスも少なければ乗客も少ない。
ふと振り返ると駅と線路は高架になっていて、その下は縦に国道が走っていた。
車の行き交いは多いほうだと思う。
俺は雨の嫌な意識を別のものにすり替えながら走った。
駅は遠ざかり、一つ目の大きな交差点で足を止める。
信号待ち。
――――――。
車がタイヤで水を巻きあげてサーという音と共に右から左へと消えてゆく。
いつも聞くこの環境音さえも、今は鬱陶しいばかりだ。
さっさと青になってくれないか。
俺はそれだけを考えて横目に青の歩行者信号が点滅するのを窺う。
◆◇◆
信号が変わった頃には両肩が冷たいのを感じた。
まだ駅を出て間もないというのに服は水を吸い、肌まで到達しているのだ。
やるせなさと誰にという訳でない怒りがこみ上げる。
ただひたすら姉のメールの案内通りに道を進む。
『家までの道順は駅を南口から出て、まっすぐ進むと一つめの交差点を渡って左にある商店街を抜ける。
あとは橋を渡ってまっすぐ進むと家らへんだからね』
”家らへん”という表現に違和感を感じたが、指摘をすればうるさいので、ありがとうとだけ返した。
家までの道順って書いてあるのに家らへんで終わる。
俺と同じく面倒なことが嫌いな姉らしいと言えばそうなのかもしれない。
ただ、俺は思った。
それを指摘しない俺もよっぽど面倒くさがりなんだな、と。