-7-
河川敷を上がって商店街の方向に走りだす。
俺の右腕の関節と雨宮の左腕の関節を絡ませ、グイグイと引っ張る。
「おい、ちょっと待てよ」
「…………」
「おーい!」
……。反応無し。
こいつは集中すると周りの声や音が聞こえなくなるのか?
どうしたものか……。
(仕方ないか)
雨宮に引っ張られるままに進む。
そこまで速くはない。だが、周りの人間に見られているのが気になる。
どんな目で見ているのか、どんな風に思っているのか――。
特別変なことではないのだが、何故が恥ずかしい気持ちになる。
そんなことを考えているうちに商店街はすぐそこに迫っていた。
一体こいつは俺に何をさせようというのだろうか。
そう思ったが考えたところで答えは出ないし、いずれ出るものに思考を巡らせるのは俺は好きではないのでただ流れに身を任せることにした。
昨日通った道。
土曜日で晴れているからだろうか、昨日よりも格段に賑わっている。
その間を俺たちは縫うように走った。
――っ!
一瞬だった。ほんの一瞬。
周りの風景にノイズが走り、モノクロに映し出される商店街。
そこを走る俺と雨宮。
それは映像ではなく、静画だったような気がした。
一瞬の出来事だけにそのこと自体が嘘のような気もする。
だが、感触はあった。
俺は確かに何かを見た。
既視感のような不思議な感覚と共に俺は見た。
気がつけば商店街は過ぎ去った後だった――。