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(改)4/26
セリフの調整を行いました。
(内容に差支えはありません)
橋を渡りきって階段もない坂道を下って河川敷におりた。
途中滑りそうになったが体勢をたてなおす。
「おい……」
背後から話しかけてみる。
なんて声をかけていいのか分からず、無骨な声のかけ方になった。
一度ぶつかっただけの関係で馴れ馴れしいのも変だし、だからと言ってよそよそしい態度も自分としては違和感を感じる。
あいも変わらず、女子学生はしゃがんで草をかきわけて地面を見ている。
草の片が制服のあちこちについている。
朝から探しているのだろうか。
「おい」
「……ないなぁ」
気づいてない。
二回目は大きい声で言ってみたがまったく反応しない。
「なぁ……」
「………………」
ガサガサ――。
草のすれる音と川のせせらぎだけでこの空間は満たされている。
聞けよ……。
「おい、無視はないだろ」
女子学生の肩をポンポンと叩く。
「ん……んわっ!」
振り返るや否や、人の存在を確認しておののくように後ずさった。
「そんなにびっくりすることでもないと思うが……」
「いきなり肩つかまれたら誰でもびっくりすると思うけど……」
「つかんでないからそれは誤解な」
落ち着きを取り戻すと立ち上がって、身体中をはたいて引っ付いた草や土を落とす。
そしてこちらを不思議な面持ちで見つめていた。
「あの……」
女子学生が先に沈黙を破った。
「なんだ?」
「えっと、用事……用事?」
自問自答をしているのか、最後が疑問形で終わっている。
だが、向こうから話しかけてきたということは俺への問いかけだろうか。
というか、俺がこの子に話しかけた理由だ。
元はと言えば俺が用事があったから話しかけたのだ。
理解するのに時間を要する奴だ。
すぐに切り出さなかった俺も悪いが……。
「そうだったな。あんたが探してんの、これだろ?」
カバンからクマのストラップを取り出した。
服を洗濯した時に一緒に洗って乾かしてやったから毛並みも綺麗だった。
「あっ、それ!」
大きく目を見開いて俺の手を見る。
睨みつけるような勢いで手の上のストラップを見ている。
そして一言。
「新しいの買ったの?」
俺は悲しくなった。
とんでもない奴に出くわしてしまったような気がしてならなかった。