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プロローグ
(改)4/26
表示形式の変更に伴った改稿です。
今にも雨が降り始めようとしていた。
灰色の空を背景に右から左へと残像を残して去るビル群。
電車の窓の外は絶え間なく変わり続けているが、代わり映えはしない。
ようするにつまらないのだ。
厳密には違うけれど同じ景色が延々と流れていく。
――。
「ん?」
ふと、俺の上着のポケットが震えた。
携帯だ。
開いてみると、姉の美咲からのメールだった。
『翔はもうこっちに向かってる?
多分、雨降ると思うけど傘は持ってきたの?』
翔とは俺の名前だ。
時田 翔――。
姉は面と向かったら悪口を言うくせに、顔が見えなくなると優しくなる面倒な性格の持ち主なので面倒事が嫌いな俺はメールで傘は駅に着いたら買うと返信した。
雨音町。
俺が向かう町で、これから住む町。
特に何かがあった訳ではないが、都会から逃げたくなった。
だから、姉の住む田舎町へと移住を決めたのだ。
まだ何も決めてないが、この電車を降りた先には素晴らしい未来が待っている
――とはとても思えなかった。
灰色の空からついに雨は降り始めた……。