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ホラー

園内にいるナニカ(実話)

作者: 瑞月風花
掲載日:2026/07/11


 みなさまは園児が集まる場所にお化けって信じますか?

 実は意外といるそうです。

 視える方から言ってみれば、楽しそうなところに惹かれてしまう幽霊さんは一定数いるそうで、別に悪さをするわけでもなく、ただそこにいるみたいなことを口をそろえておっしゃいます。

 もちろん、その方たち、その幽霊さんがいる場所へはあまり近づきたがりません。寒気がするや頭痛がするなどの体調不良を起こすから、だそうですけど……。

 だけど、確かにいるのはいるんだと思います。

 時々、子どもたち(特に乳児)が明後日の方向へ手を振っていたり、指をさしながら「おじいちゃん」という子がいたりしますから。中には突然泣き出す子も。

 あと、フィルム時代には、もしかしたら心霊写真?みたいなのも撮ったこともあって。


 ただ、私は残念ながらなのか幸運ながらなのか、視えることはありません。

 だけど、稀に向こうから近づいてくることはあるんですよね。そして、どうやら、私は来るものを拒む力はないようで。

 今日はそんなお話をしようと思っています。


 その園は乳児園で子育て支援に力を入れている園でした。

 そして、それはその園がまだ建って間もない頃。開園の半年前くらいのことでしょうか。

 オープニングスタッフの人たちが四月から開く園のための準備を、各お部屋でしている時のこと。


 ててててて


 まるで小さな子どもが走って行ったかのような音が廊下に響いたそうです。


 感じやすいお二人の証言です。


 悪い感じはしない。きっと、座敷わらしみたいなもの。だから、守り神みたいなものだと思うよ。


 ふーん。ここにもやっぱりいるんだな。


 私はオープニングスタッフではなかったため、転勤してきた頃にそんなことを聞きました。


 やっぱり……というのは、実は転勤前に働いていた園にも、その前に働いていた園にも同じように霊がいると言われる場所があったからです。

 それも、視える方が全員同じ場所を言うのです。

 そこも視えない私にとっては、ちょっと不思議なことが時々起きる場所程度。


 だから私もそんなに気にすることもなく、普通に仕事をしていました。

 日中は普通に子どもたちの声に溢れています。誰かが「てててて」と走ったからといって、それが座敷わらしのものなのか、普通に子どもたちのものなのか分からないくらい、にぎやかです。

 でも、そんな声が密やかになる時間ってあるんです。

 午睡の時間と思われた方はとても惜しい。


 午睡の時間でも子育て支援の方から子供の声が聞こえてくる園ですから、それもなく。


 ほんとうのひっそりは、土曜日の夜なのです。

 園が開いている時間は午前7:00~午後7:00まで。

 その間は、子どもがすべて帰った後も誰かが園で、緊急にかかってくる電話や訪問の対応をしておかなければなりません。もちろん、そんな緊急はほぼありませんが、そんな緊急はほぼ苦情です。

 そちらも、できればないことを望んでいるのですが、その土曜日の夕方は、子どもが18:00にはすべて降園してしまったのです。

 子どもがいれば、パートの先生も一緒に残ってもらうのですが、基本的にパートの先生に残業をつけてはいけないので(残業分は別の日に早退となるシステム)、子どもがいない場合はひとりで残ります。

 なので、普段できない書類仕事や手作りおもちゃ作りなどの時間に充てていたのです。

 省エネのため園全体の灯りを消して、事務所だけが煌々と電気が付いている中、ミシンを取り出します。

 その日、私が作り進めようと思ったのは、防災のための防災頭巾です。

 キルトをミシンでカタカタ縫います。


 時々糸が切れたり、もつれたり、最悪針が折れて……という事故もありながら、一枚一枚ミシンを走らせていたその時でした。


 ――バンっ


 まるでドッヂボールを窓ガラスに当てたような音が響きました。


 一瞬手が止まります。

 ミシンも止めました。蛍光灯だけが暗闇を照らしている状態になります。


 音の方角は、園庭側のガラス扉です。しかも、最悪なことに私の背面。


 最初は誰かが侵入してきてガラス扉を叩いたのかと思いました。それに、今の私はとりあえず、園を守る役目がある人物です。振り返らないわけにはいきません。侵入者だったら、通報案件です。だけど、もちろん、誰もいません。

 

 音の後は静かでした。

 まるで、蛍光灯の光の粒子が立てる音すら聞こえてきそうなほど。


 鉄筋の園での家鳴り……?

 って大きいのかな……。


 と意識を逸らせ、もう一度ミシンを動かし始めます。

 不安になってくると自分の分かる音を立てたくなってくるのです。

 しばらくして、また大きな音が同じガラス扉から聞こえました。


 ――バンっ


 家鳴り……だよね……。

 私あと10分はここにいないといけないんだけど……。


 音がする度に振り返りますが、やっぱり人影はありません。だけど、恐々見ていると、ガラス扉にはボールの跡のようなものが付いています。そして、転がっているボールが扉向こうに広がる園庭にあるかどうか、それを確かめに行くだけの勇気もありません。

 さらに、そのボールの跡が今付いたのか、日中についていたものかその判別すらつきません。ただ室内の灯りに白く浮かび上がっているだけです。


 だけどとりあえずミシンは片づけることにしました。

 園にいればいいだけの話なので、とりあえず先に私服に着替えて19:00丁度には鍵をかけて出られるように準備はしておこうと思ったのです。

 ずいぶん昔の話なので、その後その音が何度鳴ったのか、鳴らなかったのか、ただ怖かったというだけでもう覚えていませんが、忘れた頃に音がなりました。そして、出勤時間中なので、逃げようにも逃げられず、タイムカードを差しこむ時計の針が19:00を指したと同時に、タイムカードを押したのは確かです。


 今から思えば、誰もいないんなら遊んでよ~って言われていたのかもしれない、そんなふうにも思える出来事でもありました。


 もちろん、遊んであげたい……と思えるほど、私もできた人間ではありませんが、遊んであげていたら幸福が訪れていたのかなぁ……。

 それとも、……。


 今もあの音は私の耳にはっきりと残っています。



ちなみにその園で蛇(たぶん、アオダイショウ)と戦ったこともあります。園の室内側の玄関にいたので、一生懸命掃き出しました。これも土曜日の夜の出来事です(涙)

朝は朝で、野良猫にやられただろう○〇○のくったりした死骸があって、びくびくしながら塵取りでとったことがあります。

人間関係は良かったのですが、なかなかホラーな園でした。

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― 新着の感想 ―
拝読させていただきました。 私も視えない方なんですが、こういうお話は怖いです。 アオダイショウも嫌だったですね。 庭に入ってきたのを追い出しましたが、あの時は子猫がいたから狙ってきたのかな。
 ガラス扉にボールの跡………  これはさすがに怖いですね。でも、座敷童だったら、本当にただ遊びたかっただけだったのかも知れませんね。アオダイショウ大変でしたね。でも、アオダイショウは図体でかいだけでヘ…
ホラーの中ではソフトかつライトですが、実話だと思うとゾッとします。誰もいなくなった夜の園に突如響き渡る「バンっ」、そしてボールの跡。振り返るのが怖い。確かめたいけど確かめられない……自分がそこにいるの…
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