【プロットタイプ】方便
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
嘘も少しは混じってるけど、大抵は本当だと思うよ。
人にはそれぞれ生き甲斐が存在する。これが生きている意味だとか、これがないと生きていけないだとか。俺にとっては執筆で、生きた証を残すことであるし、鏡花もきっとそうだろう。
だが決してそれだけでは無いことだけは、確かなのだ。
連休最終日、思い残す事があったのか、鏡花は電車を乗り継いで大都会に来ていた。お目当てはこの間諦めた純喫茶の様で、地図アプリを片手にずんずん進んで行く。
扉を叩いたのは、1900年代を思わせるアメリカのポップスが華やかに流れる場所だった。晴れかな挨拶と共に案内された席で、無言でメニューを捲る。視線が彷徨う。
此処に訪れる前に話していたケーキは物の見事に売り切れ。それ故に、何を注文するか、考えている様だった。しかし鏡花が口を開いたのは、全く関係のない言葉だった。
「一筆したためる気でいたんだ」
「へぇ」
「際どいの」
「ふぅん」
「消えちった」
「其れは結構」
こんな明るい、アメリカンな空気で書けるはずがない。場所の雰囲気に激しく依存するのが、普段の鏡花である。だから生々しい物を書く為には、周りの空気が怪しくなければいけない。または無音でなければいけない。書き物に置いては余りにも繊細な、諭羅の様な奴だった。
「でもまぁ良いか。この空気に水を差すような話を書くのは好きじゃないし。其れはとても失礼な事の様に思えるし」
「なんだ。気を使えるのか」
自由奔放。空気を掻き乱すのが大好き。そうして其れを観察するのが好む一面がそれなりにあるからこそ、今の発言は意外だった。
此奴と過ごして長くはなるが、見知らぬ一面も非常に多い。
「私は『生き甲斐』に対してはそれなりの敬意を払っているつもりだよ。其れがないと生きていけない、大切にしたいって事だからね」
「ただの方便に思えるな」
「そうかもね。でも浮かんだ情景が掻き消える様に、掻き消えるものだよ」
そうだな。お前は打数の人格を容赦なく保持して、其れを取っかえ引っ変えして生きている生き物だもんな。
「良い店だね。今度は諭羅も連れて来ようか」
隣から漂うのは、ふわりと揺らめく煙草の香り。吸わない癖に、愛して止まない匂い。
「やっぱ方便だろ」
此処での方便とはなんなのか。
其れはこの話の核となる、『生き甲斐』にあると思ってます。
『其れがないと生きていけない。だから大切にする』
これは極めて道理の通った理論ではあります。
鏡花にとって大切にしているものは、結構沢山あります。
此処に出て来たのだと、執筆もそう、純喫茶もそう、あと『瑠衣や諭羅』といった友人もそう。
其れがなくなったら生きていけない。
までは行かないけれど、その次くらいに大切にしたいもの。
でもそんな大切なものにちょっかいとか、軽い嫌がらせをするつもりだから『方便』。
この場合は諭羅の事ですね。
あの子は極めて繊細だから、煙草の匂いとか駄目なんです。だから分煙か完全禁煙のところの方が望ましい。
でも鏡花は其れを踏み倒して、『自分が好きだから』という理由だけで連れてこようとしてます。
結構雑。扱いが雑。大切にしてるとは言い難い。
だから『方便』だろ? って事。
煙草の匂いは嗅ぎたい時に好きなだけ嗅ぎます。
時間切れだからね。飲み直すか。