【53】ロシェとリュカ
――――朝陽が昇る匂いがする。
「ふあ~~ぁ……」
むくっと身体を起こせばベッドの上では愛しのリュカさまとシェリルが2人して天使の寝息を奏でている。
「昨日は疲れたろうしなあ」
シェリルに関しては辺境からの移動に社交の場。リュカさまも昨日は貴族たちからの挨拶に頑張って応じていた。
「もう少し寝てても……」
「……ろしぇ」
その時、リュカさまが眠たげに瞼をこすっていた。
「リュカさま、まだ眠いでしょう?」
「だいじょぉぶ……ううん……」
眠たげに身体を起こせば、こてんと俺に身体を預けてくる。13歳にはなったがまだまだかわいいのなんの。
「……ろしぇ、あのね」
「はい」
「ぼくが嫁いだら、その、ロシェもついてきてくれる?」
「リュカさまが望んでくださるのであれば」
望んでくれなくてもついていきたい……どうにかしてローズナイト公爵家に忍びこ……っ。いやよそう、王妃さまに叱られる。
「でもね……ぼくはロシェにも幸せになって欲しいの」
「リュカさま……」
「だってロシェはずっとアーサー兄さまのこと好きでしょ?」
「それはっ」
「アーサー兄さまは最初ロシェに会いに来てたって気付いてた。けどアーサー兄さまはぼくのことも見てくれるようになって……兄さまになってくれたんだよ」
気付かれないようにしようと思っていたのに。リュカさまもまたしっかりと見ていてくれたのだ。
「シェリルさまも、幸せになれたんだよ」
「……そうです!ロシェさま!」
シェリルまでいつの間に起きたのやら。情けない俺の惑いを聞かれてしまったか。
「ロシェさまだって」
「うん。だからもしもロシェがアーサー兄さまと結婚するためなら……ぼくはロシェにはぼくじゃなくてアーサー兄さまを選んで欲しい」
「……リュカさま」
そんな泣きそうな顔で……。
「大丈夫です」
リュカさまの身体をふわりと抱き締める。
「俺はリュカさまについていきます。どこまでも、あなたの騎士として」
「でもそれじゃぁロシェはアーサー兄さまと……」
「大丈夫です。俺に騎士を諦めさせるような男なら俺は選びません」
「……っ」
リュカさまへの抱擁を緩めゆっくりとその顔に微笑みかける。
「だからどうかご安心を」
「ロシェも幸せになれるんだね」
「ええ、そしてリュカさまも」
「うん」
にこりとはにかむ天使の髪をなでる。
「もちろんシェリルもだぞ。もしリュヤーが泣かせてみろ。俺がとっちめる」
「ロシェさまが言うと本当にやりそうなんだから……。けど、ぼくも絶対に幸せになるから。ううん、ロシェさまのお陰で幸せだから。みんな同じ気持ちです」
「……そうか……ありがとうな」
今まで築いてきたものの答えがここにあるのだ。だからこそ……一心不乱に戦ってきて良かったと思うのだ。
トーマスがそろそろ起きるよう知らせてきたので朝の準備である。
朝食の食堂では俺はお側に控える騎士としてだが、リュカさまやシェリルと食事を取りに来たアーサーやリュヤーたちも訪れる。
「……その、ロシェ?」
「どうした?アーサー」
「何だか今日は少しすっきりしたような、嬉しそうに見える」
「……どうだろうな?」
そう微笑めば、リュカさまとシェリルがくすくすと微笑む。
「……?」
首を傾げるアーサーではあるが、そんな表情を見られるのも新鮮である。
「気になるのだが」
「だーめ。フラグになるから」
「ふらぐ……?」
そうアーサーが反芻すればリュヤーが吹き出す。
「頑張ってこいよ。まだ遠征期間は残ってんだろ?辺境の民のために頑張ると決めたんだろ?」
「ええ、もちろん」
「なら久々の実家で鋭気を養え。時には休息も必要だ」
「そうすることにしよう」
その言葉の通り、アーサーたちはリュカさまのお茶を楽しんだり、ユラさまや王太子さまとの歓談を楽しんだりと久々の王城での時間を過ごせたようだ。途中で辺境伯さまや近衛騎士団長も顔を見せてくれた。銀竜は10歳児から15歳くらいになれるようになったようで。念願のお酒が飲めるまでもう少しかな……?
――――そしてその翌朝、アーサーたちは辺境伯さまや銀竜も共に辺境へと戻っていく。それをリュカさまや王妃さま、ユラさまたちと共に見送ったのだった。
「春が……待ち遠しいな」
何となくそんな呟きが漏れ出たのに、リュカさまが嬉しそうに微笑んだ。




