【52】side:アルファたちの夜
――――side:アルファたち
ここは第2王子宮。久々に帰ってきた宮の主に侍従たちは酒や軽食を用意してくれた。
まあ当の主役はまだサイダーであったが。
「誕生日がくれば飲めるようになるんだっけ?人は大変だねぇ」
新年の酒をもらったリュヤーがしげしげとアーサーを見やる。
「まあ成人は18ですから。ロシェは何故かお酒は20歳にこだわってましたが」
「あれはあれで昔から不思議な子だった。辺境に来た当初は『破滅』だの『回避』だの……」
「何の話なのでしょうか」
「さあてねえ。セイレンさまもご存知なかったようだが」
リュヤーは困ったように苦笑する。
2人が和やかに歓談していれば、そこにもうひとりやって来る。
「近衛騎士団長!?何故ここに……」
「いや……そのな。第3王子宮の連中が少し心配になったものでな」
近衛騎士団長の懸念は致し方がない。
「リュカさまの婚約者が息子だからとか言う前に、アイツらはリュカさまのことになると……血の気が」
「……確かに」
「ロシェなら泣かせたら誅殺とか言いかねない」
冷静に頷くアーサーに、核心を突くリュヤー。
「……上司として賛同するしかないもどかしさがえぐいな」
「まあまあ、それだけ愛されてるってことだろう?アンタも飲む?」
リュヤーが差し出した杯に近衛騎士団長デュークは渋々席に付き杯を受け取る。
「まあもう退出しようとは思っていたし」
「でもやっぱり第3王子宮は心配だったと」
「まあな。妙に静かだったのが不思議だが」
「それは……その、ロシェがオメガ会だとか言ってリュカとシェリルと3人でベッドで熟睡してしまって……」
「シェリルさまはともかく、ロシェは王族の方と寝所を共にするなど……」
しかも婚約者の息子よりも先にである。
「……今回が初めてではないが」
「えっと……近衛騎士団長、それは?」
初めて聞く事実にアーサーが思わず聞き返す。
「リュカさまがどうしてもひとりで寝られない時などに添い寝をな……一度ロシェだけ起こしてやめさせようとしたが、危うく項を狩られかけた」
当時の恐怖をデュークが語る。
「あれはリュカさまと寝かせといた方が護衛になる」
「……賢明な判断です」
「うむ。そうだな。そしてそれこそがリュカさまの嫁ぎ先がうちになった理由でもある」
「それはどういう……?」
「リュカさまが降嫁されるのであれば必ず最強のオメガ騎士ロシェがついてくる……多くの貴族はそれを危惧した」
「つまり上司である近衛騎士団長の元ならばロシェも……」
「いや、違うな。ティアの実家だからだ」
つまりは王妃である。
「……結局ロシェを扱いこなせる母上が最強なのでは?」
ロシェをリュカの専属近衛騎士に推薦したのも王妃である。
「そうだな。息子にもよく教えておかねば」
次なる被害が生まれかねない。それにはアーサーもリュヤーも頷いたのだった。




