【51】シェリルとリュヤー
アーサーとサイダーを呑んだくれていれば暫くしてシェリルとリュヤーがやって来た。
「ロシェさま、アーサーさま、お待たせしました」
「待った~~?って……サイダー?酔ってないよね」
リュヤーが驚きつつもくすくすと笑う。
「どうかなぁ……?そういやこう言う酒もあったなあ」
大人の辺境騎士たちが嗜んでいたのを見たことがある。
「ん?今度土産に差し入れようか」
「そりゃあいい」
「ロシェったら、今度は自棄酒とかダメだぞ?」
「でもぉ~~」
口を尖らせれば。
「リュカさまが婚約されたんですものね」
「そうなんだよシェリル……う……っう~~、リュカさまをお嫁に出すなんてやっぱ嫌っ」
めそめそ泣いていれば宮の扉が開く。
「こら、いつまでめそめそしてる。休憩終わり!」
あ、エレナさんが呼びに来た。
そのタイミングでアーサーたちも宮の中に案内を……っと。
「あれ、でもリュヤーはアルファだから外で……」
「番ってるから平気だけど」
いつの間にぃ、コイツぅっ!
「それに俺これでも本物の竜だよ?番以外のオメガに反応しないのはアーサーで証明済みでは?」
確かにリュヤーはアーサーの特異体質の元祖であった。
「どう?」
エレナさんがトーマスと相談してきてくれた。
「大丈夫、竜を殴れる男がいるからだって」
それは確かに。そんなわけで通されたアーサーたちをリュカさまがかわいらしく迎えてくれる。
「ただいま、リュカ。元気にしていたか?」
「うん、アーサー兄さま!」
「それは良かった。それに……婚約おめでとう」
「……!ありがとう!ぼく、素敵なお嫁さんになれるように頑張る!」
かわいいリュカさまはアーサーに頭をなでてもらって幸せそうだ。
素敵なお嫁さんになる……お嫁に行く……俺は胸が張り裂けて吐血しそうだけどな……。
続いてシェリルとリュヤーもリュカさまと挨拶を交わす。2人もリュカさまの婚約の祝福を述べ、それから……。
「ぼくもリュヤーと……その、婚約の報告を陛下にしたから。来春には婚姻を結ぶんだ」
「わぁ……シェリルさまも!おめでとう!」
「ありがとう、リュカさま」
共に婚姻を喜び合うリュカさまとシェリル。
「平穏っていいな」
ふとそんなことを考える。
「ま、それが一番だからね」
それを望んでくれる武神だからこそシェリルを託せるんだがな。
「そう言えばお前たちは今後はどうする?シェリルは爵位を継ぐんだろ?」
「まあね、王ともその話をしていたよ。領地はデゼルトが安定するまでは国に預けるらしいけど」
そっか……ホーリーベル公爵領は南部。デゼルトの国境地帯か。
統治時代はそこがデゼルトからの人身売買の温床となっていた。それを防ぐためにも今は王家の直轄地だ。そしてそれが一番の牽制となる。デゼルトがオメガにも暮らしやすい国になれば遠い時代領地が戻るかもしれんがな。
「今はシェリルが管理しているのは王都の公爵邸跡だね。夏には全て取り壊し終わって慰霊碑も建つってさ」
「そっか……シェリルが今守りたいのは彼らだもんな」
リュカさまと婚約を喜び終わったシェリルはイルにもお土産を手渡し辺境にて修行する仲間の話に花を咲かせている。
「今後は辺境で暮らしながらも聖者である以上、必要としている場へと行くことも考えている」
「ふうん?リュヤーがついてるんなら移動もひとっ飛びだな」
「まあねぇ」
リュヤーが嬉しそうに笑う。
「それで、お前たちはどうする気?」
「……」
「アーサーならロシェがリュカちゃんについていっても反対はしないんじゃないか?」
「そう……なんだよな」
今ではすっかりリュカさまやシェリルと楽しそうにしゃべるアーサーを見やる。
「ロシェもそろそろ最愛のひとりを選んでもいいと思うよ」
そう言って頭をなでてくる。
俺も最愛のひとりを……。つまりは番である。番に選としたらずっとひとりだけ。ひとりしかいなかったのにな。




