【48】帰還と出発
――――王都の王城へと帰還した俺たちを王太子さまやユラさまたちが出迎えてくれた。
「アーサー!心配したんだぞ!」
「本当に……アーサーさまもロシェも無事で良かったっ」
周りの近衛騎士たちも同じ心境のようだ。そして早速とばかりに陛下の執務室へ赴けば陛下や近衛騎士団長、王妃さまが待っていた。
陛下も王妃さまもアーサーの無事な帰還に胸をなでおろしたようだ。
ことの顛末を話せば、やはりみな銀竜の今の姿に驚いているようだ。
「わた……っ、ぼくは悪い竜じゃないよっ」
まぁーたコイツはぶりっ子しやがって。コンラートさんも冷たい目で見てるぞ。ドSが目覚めるぞ。
「あのなあ銀竜。母さんが尻ペンペンを知っていてばあちゃんは知らなかった理由を何だと思う?」
知っていたらばあちゃんが先に銀竜の尻を叩いているはずである。
「え?」
呆ける銀竜の前に躍り出たのは王妃さまである。
「この方が元祖だ」
公爵家出身の王妃、平民出身の男爵夫人。2人の間には身分差はあるものの、何故か仲がいい。時には王妃さまにとっておきを指南してもらったと喜んでいた母さん。そのとっておきの中に含まれていたとしたら不思議でもない。
「あら……お尻、ペンペンして欲しいの?」
「ひいいいぃっ」
笑顔で告げる王妃さまも母である。やはり母は強い。銀竜が一瞬にして反省ポーズを取るほどである。
銀竜が王妃さまからお説教を食らっていれば、とたとたとかわいらしい陰が駆けてくる。
「兄さま!ロシェ!」
「リュカさま!」
「リュカ!」
真っ先にアーサーに抱き付くリュカさまを俺もなでなで。
「熱は下がったようだな」
「ああ、この通りな」
後ろから来たエレナさんもにこりと頷く。
「無事で良かった」
「ああ、ロシェが助けに来てくれた」
「……!ロシェ、アーサー兄さまを助けてくれてありがとう!」
「リュカさま~~っ!」
次は俺に感謝のぎゅ~~をしてくれたリュカさまを目一杯かわいがる。
「あれは……」
銀竜が意味深にこちらを見てくる。
「何だ?リュカさまはやらないぞ」
「もうお前を敵に回すのはこりごりだ!だが……」
「うん?」
「負けは認める」
ふふん、リュカさまは世界一かわいいのだ!
リュカさまを王宮に見送れば、方々へ挨拶を済ませたアーサーはコンラートさんや銀竜と再び辺境へ戻る。
「ロシェ。次は恐らく年始の挨拶のために一時的に戻ってくる。その後の帰還は春になる」
「……そうだったな」
「まだ気持ちは変わらないか」
「……俺は」
その先をなかなか言い出せない。
「焦る必要はない。俺はいつまでも待つ。あなたに相応しい男であるために」
「アーサー……」
「それにロシェには俺を選ぶことで夢ややりたいことを諦めてほしくない」
「それは……」
「俺は将来臣下に下る。その際には陛下から爵位を賜る予定だ。だがそれでもロシェに夫人としての役割に徹しろとは言わない」
「……」
貴族と結婚すれば貴族夫人として尽くす……そんな道もあるしそれを求めるものもいる。
「辺境伯領でも男爵領でもそうだ。辺境伯令嬢のマーガレット殿は騎士として辺境を守っているしロシェのお母上も治癒魔法士として活躍している。ロシェが近衛騎士を続けたければそれでいい。それも俺の好きなロシェだから。だから……待っている」
「……アーサー」
「それまであなたに見限られないように、どうか見ていてくれ」
「……分かったよ」
お前は成長した。シェリルに優しくしてやれるようになったし、民のために身体を張って、将来国を次ぐ兄のために良い国であるよう努力を惜しまない。
「行ってきます、ロシェ」
「うん……行ってらっしゃい、アーサー」
銀竜の背に乗りコンラートさんと共に辺境へ戻っていくアーサー。俺は……アイツが遠征を終えて帰ってきた時……ちゃんと答えを出せているだろうか。




