【46】竜の番
――――山脈の麓の辺境を朝陽が照らす頃、俺たちは辺境へと帰還した。俺とアーサーは本体に戻ったリュヤーの背に、ショタ姿を解かないジジイは黒竜に咥えられながら。
辺境伯領では母さんやシェリル、辺境伯たちが出迎えてくれた。その中でもコンラートさんやアーサーの部下たちが真っ先にアーサーに駆け寄る。
「よくぞご無事で」
「ああ、今戻ったぞ。全てはリュヤー殿とロシェのお陰だ」
「感謝いたします、ロシェ、それからリュヤー殿」
「……コンラートさん」
いざコンラートさんにまで深い礼をされれば、少し戸惑ってしまう。
「みんな無事で……」
そして涙ぐむシェリル。そんなシェリルに竜人の姿に戻ったリュヤーが優しくなでる姿を見れば気が付かないわけもない。
「しかしその……その子どもは」
「と言うか……その、黒い竜まで連れてきたのか?」
辺境伯や姉さんたちが不思議そうに黒竜と黒竜に地上に下ろされた銀竜を見る。
「この黒竜は子孫繁栄の守り神だ」
「ああ、それなら可。お前らもいいな!?」
『はいいいぃっ!』
姉さんの鶴の一声に戸惑っていたものたちも勢いで納得した。姉さんが黒竜に順応が早いのもさすがだが、そのカリスマ性は群を抜いている。
「そしてこの竜は銀竜。アーサーを拐い辺境の民を人質に武神さまを無効化した神竜さまだ」
『は……?』
辺境伯初め辺境メンツ、それからアーサーを拐われたコンラートさんたちも睨み付ける。
「な……何故そのようなっ、私は……いやぼくは銀竜山脈を治める神竜なのにっ」
「今さら取り繕ったって無駄!あと俺のリュカさまの方が100億倍かわいい!」
「そうですね。リュカの方がかわいいです出直してきてください」
ふんっ、アーサーも言えるようになったじゃないか。褒めてやろう。
「それに銀竜山脈の神竜は有名だけど、こっちじゃ一緒に戦ってくれる武神さまの方が人気だ」
と姉さん。
「そ……そんなっ、私の威光はっ」
「ロシェにフルボッコにされた時点でないでしょう」
とアーサー。
「みんなの前で尻剥き出しで叩かれたもんね」
追い討ちをかける息子。無理矢理俺と結婚させようと迫ったのは初めてじゃないが、リュヤーはリュヤーで番う相手を見付けた後だったから余計に怒ったのだろう。この武神、怒らせると容赦なく弱味を抉ってくるぞ。
「しかしこのようなお姿ではその……何と言うか」
辺境伯が戸惑っているようだ。
「ふふんっ」
そしてしてやったりとにやける銀竜。往生際が悪いっ!
「あのさあ、銀竜」
「ふん、何だセイレンの孫よ。この位置ではもう尻は叩けまい!」
俺の正面を取り尻を剥かせないようにとしているらしい。
「俺は母さん直伝って言ったよな」
「……え?」
一度目で懲りて反省しておけば良かったものを。
「悪い子には……お仕置きしないとね」
背後から銀竜の肩を掴んだ母さんに銀竜は肩を身震いさせる。
「い……嫌だ!もう勘弁してくれえええぇっ」
その様子に周囲から苦笑が漏れる。
「ひいぃっ、笑うな……うう……大人の姿になる練習……しとけばよかった」
泣きじゃくる銀竜は黒竜の影にそっと隠れる。
『これに懲りたら迷惑をかけたお詫びとしてタダ働きすることだ。ちゃんとこなせないのなら山脈に帰ってきても叩き出す』
「あそこは私の住み処……」
『ごちゃごちゃ文句を言わない!』
「ひぃうっ!?」
やっぱり妻は最強と言うことか。こうして、王子が竜に拐われると言う前代未聞の事件は幕を閉じたわけである。




