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【14】次から次へと



――――パーティーのその後。パーティー会場では子爵が捕らえられると言う事態になったものの、アーサーが王太子殿下とともに仕切り直したと言う。


「だが我々が事情を聞こうとしたホーリーベル公爵夫妻は既に会場を後にしていた」

業務連絡に来たと言うアーサーが告げる。


「だが公爵家筋の子爵だからとはいえホーリーベル公爵家を疑ってかかるわけにはいかない」

「そうなるな。子爵の方はだんまりだ」

だんまりと言うよりも何かに脅えるように言動がおかしくなっている。


「それから……医務室でも物資のごたごたがあったと聞きました」

「それな。念のため警備にやった近衛騎士たちが賊と思われる連中を捕らえた。誰が依頼したかは彼らも知らない。だが王城や王宮の医務室に出入りできるなんて手は限られている」

王城は国政を行う間。外からひとも来るが王宮はその中でも王族の住まいがある。簡単には入ることができないはずだし客人のチェックも人一倍厳しい。シェリルの一件があったから近衛騎士団も持ち物検査を薬一粒まで徹底するよう申し送りがされたのだ。


「そこら辺は影が調査を進めてる」

「近衛騎士団の中の隠密部隊か」

「ああ」

後は首謀者を割り出すだけだ。


「それならそちらは任せて大丈夫そうだ。それから……そうだ、陛下がシェリルの今後のことを話したいと言うていで王城に呼ぶそうだ」

「それが一番だろうな」

現状はそれが最適解。あの公爵夫人が何を考えていたとしてもな。


「その……それでロシェ、シェリルは……」

「今は離宮で休ませている。発情期も近いようだから王城の宮医がここ最近の不調も合わせて診るそうだ」

オメガの体質に詳しい名医もついているからな。


「……そうですか。その、ロシェ」

「どうした?」

「俺はずっと番にはなれないシェリルに興味を持つことはないと思っていた」

「……」

竜は番の前ではほかのメスに興味を失くすと言うが……その血はアーサーにも受け継がれている。

むしろ濃く出すぎた。


「けど……ロシェがシェリルを助けてくれて、シェリルが無事で俺は本当に良かったと感じたんです」

「そうだな。お前もひとの子だ」

竜人もひとの子。完全な竜ではなくひとの心を受け継いできた。


「成長できたな」

「ロシェ……」

アーサーの髪を撫でてやれば、何だか嬉しそうに笑む。

上機嫌なアーサーを見送れば俺はいつものように天使の元へ顔を出す。


「リュカさま」

「ロシェ!」

あーんもう、こうやって俺のことを大歓迎してくれる天使力よ!パーティーを早く退出したリュカさまはエレナさんたちといいこで待っていてくれた。

そして今もだ。


「兄さまとのお話終わったんだね」

「ええ。今は少し立て込んでますが」

ただでさえホーリーベル公爵家がきな臭いのだ。


「落ち着いたらお茶にお誘いしますか?」

「うん!でも……来てくれるかな」

「もちろんですよ」

リュカさまのためだもの!ケツひっぱたいてでも連れてくるから。


「やったぁ!それとね、あのね、ロシェ」

「はい」

「シェリルさまもお誘いしていいかな」

「シェリルも……?」


「お母さまがきっと喜ぶって!」

まぁリュカさまは天使だもんな。リュカさまの笑顔を見たらシェリルもきっと元気になるだろうなぁ。


「シェリルさまもね、ロシェのこと、大好きなんだって!ぼくと同志なの!」

え……?俺のこと?まぁ年下から慕われるのは嫌いじゃない。何よりリュカさまが喜んでいる。ここが一番のポイントである。


――――その晩


すやすやと眠るかわいらしい天使鑑賞会を同志たちと交替しつつ、仮眠をとりに行こうとした時だった。王宮が騒がしい……?


「ロシェ、大変よ!ホーリーベル公爵夫人が来て無理矢理シェリルちゃんを連れ帰ってしまったみたいなの!」

王妃さまが近衛騎士たちとやって来た。

「ロシェさま!シェリルさまが!」

ハリカも共に来たのか。本当に泣きそうな顔をしながら。


「私じゃ、奥さまを止められなくてっ」

ベータの彼女からすれば上位種のアルファの本気は恐ろしい。その力だって相当努力するか素質がなければベータが抵抗するのは難しい。


「もし発情期と被ったら……」

崩れ落ちるハリカを王妃さまや女性騎士が優しく支える。

男のオメガが誘惑するのはアルファの『男』だけで女性の公爵夫人は対象外。しかし公爵家にもアルファの男はいる。


「シェリルちゃんの帰邸を止めようとした騎士たちも私の実家の妨害だと言われて……どうしようもなくて……」

王妃さまは何も悪くない。

王妃として必要な務めを果たしシェリルも精一杯守ろうとした。そんな王妃さまの弱い点を突くとは。むざむざと引き渡してしまった騎士たちも王妃さまを想うがゆえ。そこら辺の鍛え直しは近衛騎士団長に任せるとして……。


「ロシェ、俺も行く。シェリルを……助けたいと思うんだ」

アーサーが現れる。その感情がどういう立場のものであれ、アーサーの気持ちをむげにはできない。


「場合によっちゃ、最悪な事態も考えられる」

「俺はロシェのフェロモンしか効きません。パーティーでも……少しだけ。すぐに消えてしまいましたが我慢できました」

それは中和剤の影響もあるが……しかしながら成長し始めている今のアーサーなら。


「よし、行くぞ。アーサー。王妃さま、第3王子宮には……」

「私が説明に行く。だから、ロシェ。シェリルちゃんをお願い」


「お任せください、王妃さま」

近衛騎士の剣に誓って、必ず無事に連れ戻す。俺たちはホーリーベル公爵家へと急いだ。


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