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【12】オメガの騎士だからこそ


――――この感覚を知っている。オメガならば確実に知ることになり、逃れられない本能。


「アタリだ」

「……へ?」

子爵は呆然としているが、その瞬間近衛騎士たちが素早く子爵を取り押さえ、ジュースの入った瓶を取り上げる。


「な、何をする!」


「何をとは?」

アーサーが立ち上がり威嚇する。さすがに竜に睨まれれば子爵も畏縮する。


「知っているか。俺はこれでも辺境育ちだ。辺境では魔物の討伐でよく治療士や医療物資が不足する。けど戦わなきゃ辺境が陥落するから……俺は辺境に自生するとある実を食って発情期を起こすと……滾るんだ。闘争本能がな」

つまりこれを飲んだと言うことは分かるだろ?


「そ……そんなオメガがいるはずが」

「なら試してみようか」

くわっと子爵の目を射貫き、ニイと口角を吊り上げれば本能的な何かを感じたかのように子爵が怯む。


「その実の名、当然知ってるよな?」


「わ……私はそんなものはっ」


「子爵を連れていけ!」

アーサーの言葉に近衛騎士たちが子爵をパーティー会場から引きずり出す。


「ロシェ、シェリルは……」

「俺が医務室に連れていく」

青い顔をしたシェリルを抱き上げる。


「ロシェ、済まない……俺はまた」

「オメガ同士じゃないと分からないことだ。お前はやるべきことをやれ」

そう言うとアーサーを振り返らずに俺は駆けた。


※※※


南医務室に向かえば、そちらにも近衛騎士たちがいる。

ともかく今は……。


「シャロン!いるか!」

「え?ロシェじゃんって……シェリルさまぁっ!?」

シャロンを中のベッドに手早く寝かせれば、医務室内の治療士たちが慌てて準備を整えてくれる。


「少しタンタシオンの実のジュースを飲んだ。中和剤の材料は」

「もちろん!近衛騎士たちが守ってくれたからね」

てことはまた妨害が入ったか。シャロンたち治療士が薬箱からす早く素材を取り出していく。


「それにしても別名誘惑の実なんて……辺境伯がめぼしい群生地は焼いたはず」

「それでも生える。植物の自生と言うのはどこにでもある」

それでも見付け次第焼いた。その存在は国家機密である。辺境にも関わりないただの子爵が手に入れられるなんて……。


シャロンから素材を受け取り手早く混ぜれば、適量をシェリルに飲ませる。


「……ん、うぅ……」

少し落ち着いたか。


「これでいい。残りは……」

「ロシェ?」

「俺が飲む」

ごくっ。ん、別に中和剤を飲むような量でもなかったが。アーサーも反応してなかったようだしな。


「え、アンタも飲んだのか?」

「オメガしか反応しないもんなんだから、飲むしかねぇよ。オメガの騎士ならではだったな」

「オメガの騎士がいてもそんなことするのはロシェくらいだよ。だけどシェリルさまもロシェの中和剤が効いたみたい。ご両親を呼んだ方がいいよね。王妃さまを通して……」


「いや……」

息子の元で騒ぎが起きているのに、来もしなかった。たとえアーサーや俺がいようと、普通は来るだろう。


邪魔されては困るから、もしくは疑われるのを避けたのか。そのどちらかでもどちらでも、何を企んでいるのやら。

俺は表の近衛騎士を呼ぶ。


「侍女のハリカを探してくれ。第2王子の婚約者用に控え室があるはずだろう。控え室にいるはずだ」

「分かった」

すぐに近衛騎士がハリカを呼んできてくれた。


「シェリルさま!」

「……ハリカ」

シェリルも目を覚ましたようだ。


「あの、シェリルさまは……」

「微量の誘発剤の素材を摂取した。例の薬の素材とは違うが作用は同じものだ」

「それって……オメガの発情期を強制的に起こす誘発剤ですよね!?シェリルさまの状態は……」

ハリカの表情がサアァッと青くなる。

普通はこうなるんだよ。シェリルを本当に心配し、その身を案じているのなら。


「中和剤は打った。今は安定しているはずだ。公爵令息さま、お加減はいかがですか」

「……さっきの不調は……消えたかも。今は平気」

顔色も良くなってるからな。


念のためほかの部分にも異常がないかをシャロンが確認してくれる。そしてその時、表の近衛騎士がこちらへの訪問者を通してくれる。


「もう入っても構わないかしら」

「ええ。幸い誘発剤の素材の影響はありません。どうぞ、王妃さま」

それは俺たちと同じオメガの男性である王妃ティアさまだった。


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