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【11】近衛騎士の推測



――――発情期のオメガはまだアルファを際限なく誘惑してしまう。番えばほかのアルファを誘惑しなくなるがそれでもアルファには分かるらしい。ただしオメガ同士では明らかな身体の不調が出ない限りフェロモンでは分からない。


「ささ、ホーリーベル公爵令息さま。これはオメガの体質に良いとされると注目されているジュースですので。どうぞ最後まで」

子爵の言葉にシェリルが恐る恐るジュースに口を付けている。オメガの体質にいい……?俺ならともかく、ほかのオメガにはあれは……。


オメガのフェロモンが分かるのはアルファだけ。ならばオメガにしか分からないものもある。


「エレナさん、リュカさまは慣れないパーティーの場でお疲れのようだ。少し休ませて上げた方がいい」

エレナさんに周りの参加者に分からないようにサインを送る。


「了解」

するとエレナさんがささっとリュカさまの退出に付き添ってくれる。


リュカさまも何かを感じ取ったのかエレナさんに続いて行く。予定にはないリュカさまの退出にコンラートさんたちもハッとしたようだ。コンラートさんたちにもサインを送れば、周囲に気付かれないように配置を変える。警備について事前に聞いていたアーサーは気付いているようだ。しかしコンラートさんに視線で制され平静を装う。


そして俺は続きを飲もうとするシェリルの口を遮るように掌でグラスの上を塞いだ。


「な、何を……」

子爵が俺を見、そして首もとのチョーカーを見て目の色を変える。


「お前はオメガの近衛騎士……つまりは第2王子の愛人だな!?」

いや愛人って……違ぇし。いくら子爵でうちよりも上だからと言ってうちのバックには辺境伯家があるのに。


「せっかく我が子爵家が公爵令息さまのためにこしらえたオメガの秘薬を阻止しようとするとは……やはり公爵令息さまの婚約を阻害するつもりか!」

「へぇ……秘薬?さっきはジュースと言っていたが……言っていることがあからさまに変わったな」

また秘薬。こんな危険なものがどうしてこうも公爵家に集まる。何故シェリルに飲ませる。

「そ……それは」

目が泳ぐ。ひとは嘘を付くとき、利き手によって視線の行く先が変わると言う。訓練を受けていれば操作できるがそう言う経験があるわけでもあるまい。


「秘薬のジュースであって……その……っ」

子爵はジュースを注ぐ仕草から右利き、視線は右上。――――分かりやすい嘘付きだ。


「宮医の許可なく王族の婚約者に薬を盛ったと?」

「薬のような作用があると言うだけで……っ」

薬のような作用があるなら許可はいるだろ。彼は王族の婚約者として守られる立場である。


「それにオメガの身体にも良いものだ!」

「……そんなに言うのなら俺が毒味をしよう」

シェリルの手からグラスをもらい取る。シェリルは驚いた表情を俺に向け続けながらも何となく顔色が悪い。


「バカな!そこのベータの近衛騎士が毒味をしたぞ!」

シェリルはオメガだからシェリルの護衛の近衛騎士はベータであり、毒味も彼が行ったのだろう。


「まるでベータの毒味でなくてはダメな言い方だな」

「……っ」

分かりやすすぎだろ。

毒味をしたベータの騎士も俺を止めやしない。俺がシェリルのグラスを塞いだ時点でこの異常事態を察知している。


そして俺はジュースを一気に煽る。そして身体の奥底から、オメガの本能を刺激する猛烈な何かが沸騰してきた。




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