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「愛してる」と言わないあなた

作者: オウル

言葉の足らない夫婦のお話

水曜日、朝5時30時

隣で眠る夫はまだ夢の中

カーディガンを羽織り、洗面所で簡単に顔を洗い髪を整え、口を濯ぐ

キッチンに向かいコーヒーメーカーをセット

お味噌汁は豆腐とネギ

だし巻き卵と目玉焼きを作り、トースターには6枚切りの食パンを入れる

副菜は作り置きのブロッコリーとササミの胡麻マヨネーズ和え

コーヒーメーカーのスイッチを入れ、電気ケトルでお湯を沸かす

コーヒーカップと湯呑みを沸かした湯で温めてから夫を起こす

「今日はお茶?コーヒー?」

「…コーヒー…」

まだ目が覚めきらない夫は、あくびをしながら洗面所へ向かう

その間にトーストを焼き、目玉焼きと副菜を皿に盛りつける

ダイニングチェアに座った夫にコーヒーを渡し、トーストとおかずの皿を出す

私も自分の分のコーヒーを入れ、キッチンに立ったままひと口啜る

お味噌汁の鍋に蓋をし、だし巻き卵の皿にはラップをかける

ふと気がつけばすでに食べ終わったようで、夫の姿はない

洗面所からシェーバーの音

下げられたカップと皿を軽く流し食洗機に入れ、少し冷めたコーヒーカップを手にリビングへ

TVをつければ、タレントの離婚のニュース

…幸せそうに見えていたけど、違ったのね

夫は身支度を整えると

「じゃあ行ってくる」

と私に声をかけ、玄関へと向かう

私はソファに座ったまま

「いってらっしゃい」

と声だけで見送る


今日は結婚記念日

夫は多分帰ってこないか、遅くになるだろう

私も同じ職場だったから、仕事の大変さは知っている

知っている、わかっている…その日常を理解している私と結婚をした事も

『好きだ』とも『愛してる』とも言われた事がないと知ったら、『アレはやめておきなさい』と夫の事を評した先輩は『だから言ったでしょう!』とでも言うだろうか


さぁ、家事はとっとと済ませてしまおう

冷蔵庫の中の物を処分し、洗い物は食洗機へ

パジャマとシーツ、枕カバーを外して洗濯機にかける

ベッドメイクは夫の分だけ

私のベッドにはシーツをかけるだけにして、夫の泊まり用の着替えセットを数回分おく

結局あまり出番の無かったトランクに、当座の衣類を詰める

簡単な掃除とゴミ集め

マンションのゴミ集積所にゴミを出し、郵便物をチェック

洗濯が終わったら、近くのコインランドリーの乾燥機にかけに行く

お気に入りだったベーカリーのイートインでホットミルクと甘いペストリーで朝食を済ませ、洗濯物を回収して部屋に戻る

午後1時、思っていたより時間かかっちゃったな…

ナイトテーブルに結婚指輪とエコーの写真を置いて部屋を出る


私に触れる手は優しい

でも私と過ごす時間はくれない

私を気遣う言葉はくれる

でも『愛してる』とは言ってくれない

私だけが好きで追いかけ続けた恋は終わらせよう

たったひと言でいいのに、それさえくれない夫と居ても私は幸せじゃないのだから…


駅へ向かう足取りで軽い

しばらくは実家でのんびりしよう

夫はいつ来るかしら?

来なかったら…その時はその時

ふたりでがんばろうね、私の赤ちゃん





















































『アレはやめておきなさい』と言われたのは私ですが、お話はフィクションです

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