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おじいさんとの別れと旅立ち

①本編は、2003年にヒットメーカーが開発しセガより発売された、トレーディングカードを使用するアーケードゲームが原作となります。なお、物語として自分なりにまとめたく、設定と違いがあります。

②他データ等はアヴァロンの鍵: 魔導アカデミー入門書&カードコンプリートガイド (エンターブレインムック ARCADIA EXTRA VOL. 13)や、カードごとのテキスト内容を参照しております。

③各エピソードで発現したカードに関する情報は、あとがきで説明します。

「おーい。わしは少し出かけてくるぞい、日が暮れる前には家の中にいるんじゃぞ?」

「わかったーおじいさん。じゃあコッペは珍獣たちと遊んでくるね」

「やれやれ、誰に似てこんなに元気なんだか」


 ここはどこかの深い森の中。生い茂った草木の中でポツンと一軒家の中で、ひとりのおじいさんと女の子が話を交わす。家から飛び出した女の子の名はコッペリア。二の腕がしっかりでるチョッキ、フリルのついたスカートを履いておりこんな森の中で暮らすには不似合いな様相である。なお、おじいさんはそんなコッペリアを特に気にすることなく、日課の食料集めなどで森の奥に入っていく。


「さーて、今日は何しようかな。昨日はみんなで追いかけっこだったから…」

「プー」

「あ、ジャンプーちゃん!おはよー」

「ジャンプー!」


 木の陰から顔だけひょこりと出してきた小動物がいた。その小動物はジャンプー。羽のような耳をもち、胸には大きな宝珠がきらめき、とても愛らしい。近づいてきたジャンプーが跳躍し、コッペリアの胸に飛び込む。コッペリアはしっかりと受け止め、頭をなでる。


「えへへ、今日もかわいいね、ジャンプー」

「ププー」

「今日は何する?普段かけっこだったから、今日はかくれんぼしようか?」

「プープー」

「ようし、じゃあ他の子たちも呼ばないとね!みんなーおいで―!」


 コッペリアは大きな声で森の奥に向かって叫ぶ。すると何体もの小動物たちや、背中に羽の生えた小人、いわゆる()()()()なども現れる。みんなはコッペリアを慕っており、とても仲が良い。ここに、コッペリア主催のかくれんぼが開催されるのだった。



―少し時が経って―



日が傾いてきたあたり、森のみんなとの遊びもそろそろ終わりの時間が近づく。少し曇っていた空はその厚みを増してきており、今にも一雨来そうなところだった。


「さて、今日はこれでおしまいかな?」


 おじいさんとの約束は、日が暮れる前に帰ること。天気も相まって森の中は暗くなりつつあり、すこし残念そうにつぶやいたコッペリア。そんな気持ちのコッペリアの眉間に、森の妖精が飛び込んできた。


「わわ、どうしたのパックル。突然目の前にでてきたから、びっくりしたあ」


 パックルと呼ばれた妖精は、コッペリアに何かを伝えようとしている。パックルは人の言葉を話すわけではないので、表情やしぐさなどから察するしかない。パックルは明らかに急いでいるようであり、またコッペリアに対してついてくるよう促している。


「なになに?なにか見つけたの?わかったよー。ついてくから」


 パックルは手に持っている鈴を鳴らし、コッペリアを誘導していた。しかし、パックルの鈴の音は"ある知らせを告げる"ものであった。



―森の奥まで移動をしたところで―



 パックルが止まる。それを追いかけていたコッペリアは、少し手前で気づくことがあった。目の前ではおじいさんが横になっていた。いや寝てるのかもしれない。でも普段なら仰向けに寝ているはずなのに、今日はうつぶせで寝ている。しかしながら、ここまで連れてきたパックルが何を伝えたいのかいまだによくわからない。


「おじいさん?お昼寝?よくおじいさんに言われているけど、そのまま寝てたらお服が汚くなるよって」

「…コ…コッペリアか…す、すまんが…ワシを家まで連れてってくれないか…一人では動けなくてな…」

「うん?どこか動かないの?」

「ハハ、そうじゃな…動かなくなりそうなんだよ…すまんな」

「んーとりあえず、運べばいいのね。わかった。じゃあちょっと珍獣たちにも手伝ってもらうね。アライクパ のみんなー。おじいさんを運ぶよー」


 コッペリアに呼ばれたアライクパはどこからともなく6体ほど現れる。アライクパは手際よく頭、両腕、胴体、両足を持ち神輿を抱えるように持ち上げる。なるべく爪を隠しながら持ち上げる様は、ちょっとかわいい。コッペリアが先頭になり、家までの行進で少し楽しさを感じていた。その様子を見えなくなるまでパックルは見守り、そして鈴を鳴らしていた。



―家につき、おじいさんをベッドへ移す―



 アライクパたちの輸送はとても適切であり、受け止めてくれている肉球が衝撃を和らげてくれていた。おじいさんはあまり負担がかからず、ここまで移動ができたことであろう。この様子を不思議に思った森の小動物や妖精たちは列をなし、家の中までさながら行列を作っていた。


「よーし、おじいさんついたよ!」

「フフ、ありがとな。今日ほどお前がいてよかったと…思うことはないじゃろ」

「えへへ、なんか褒められたのかな?」

「そうじゃな、よい子だ…そのまま、話を聞いてくれるかな」

「うん、いいよ。今日はなんのお話?」

「今日はな…このわしの話じゃ。わしは、魔導アカデミーという、それはとても大きなお家がいくつも連なったところで、コッペのような子たちに、いろんなお話をしていたことがあったんじゃ。本当にいろんな子がおったよ。優しく聡明な子、とにかく派手なのが好きな子、自分の信念に真っすぐな子…」

「へえーそうなんだー(いまいちわかってない顔)」

「ただ、そんな時にとても強い闇に取り込まれた子がいてのう、その子の力が抑えられず、またわしの力もだいぶ吸われてしまった。そのせいで、アカデミーにはいられなくなってのう。ここでひっそり暮らし始めた。わしは…わしは、怖くて、怖くて、逃げてしまったんじゃ…」

「怖かったの?おじいちゃん。大丈夫?なでなでだよ」

「フフ、大丈夫じゃよ…。しかし、ひとりで籠るにはちと寂しくてのう、人形を作ることにしたんじゃ…。コッペリア、お前をな…お前は、わしの魔力と、この周辺にそびえている樹齢を500年は超えた神木から作り出した傑作じゃ…ただ、わしの魔力ではコッペリアに十分な魔力を与えることができず、お前を完璧にすることができなんだ…ゆえに、わしが果てた後は、1年ほどで動かなくなってしまうじゃろうて…」


「おじいさん?」


 おじいさんの声は少しずつかすれていき、また声も小さくなっていた。コッペリアはしっかり聴こうとするが、だんだんと聞き取りにくいものとなっていた。


「コッペリアよ、この机にあるその白いカードを何枚か手に取ってほしい。」

「うん、わかった」


 おじいさんは、手を伸ばし、枕元の机を指さす。

 コッペリアは指さされた場所から、ごそっと真っ白なカードを取った。ちょうどコッペリアの手で収まるくらいの大きさのカードだった。


「これから呪文をとなえてみよう」

「呪文?なにそれ」

「そうだな…例えば、遊びたいとか、動きたいとかあるじゃろ?それを強く願うことじゃな」

「へえ、でも何をお願いするの?」

「このカードを手に持って、自分と一緒にお出かけしたい子を、強く願うんじゃ」

「お出かけかあ、楽しそうだね。うん、やってみる!えーと、えーと…私と一緒に遊びに行こうよ!」


 コッペリアが強く願った瞬間、持っていたカードが強烈な光を放つ。また、カードに溶け込むように周囲にいた珍獣たちが吸い込まれていく。真っ白だったカードにはその吸い込まれた小動物や精霊の絵が書き込まれ、またコッペリアがいつも遊んでいるものたちの顔が映っていた。


「よくできたのじゃ。これで、旅立ちの準備ができた…あとは、コッペリア、明日の朝このカードを使ってみなさい。このカードはかざすだけで、今行くべき場所へ飛ばしてくれる…。」

「えっと、明日の朝ね。他は何すればいいの?おじいさん?」

「いいか、コッペリア、この森でみんなと仲良く、いつまでも暮らしたければ、アカデミーに行き、"アヴァロンの鍵"を、もとめるのじゃ…いいな…」


コッペリアの頬にそっと手を添えたおじいさん。しかしその手が滑り落ちるようにベッドに打ち付ける。その後おじいさんは、一言もしゃべらず、動かなくなってしまった。


「ねえ、アヴァロンの鍵を持ってくればいいの?そうすれば、みんなと、おじいさんと、いつまでも暮らせるんだよね?」


 コッペリアはいつもの調子でおじいさんに問いかける。しかしその回答は帰ってはこない。


「ねえ、なんで答えてくれないの。おじいさん。いつも、いつでも、なんでも答えてくれたのに、なんで今日は答えてくれないの。ねえ、おじいさん」


 コッペリアは泣いた。駄々をコネて泣いた。答えてくれないおじいさんを責め立てるように泣いた。いつもならこれで、頭をなでてくれたり、声をかけてくれたりしていた。でも、それでも答えてくれない。なんで、おじいさん。なんでなにも言ってくれないの。何度も考え、何度も泣いた。でもおじいさんは何も言わない、起きてくれない。

 そんな時、おじいさんから受け取り損ねていたカードが光を放つ。そのカードは、暖かく、おじいさんに頭をなでられたときに感じるものと同じに感じた。そして、泣いてばかりいたコッペリアは、おじいさんの方を見る。そこには何枚も翼をもつ、一人の女性がいた。自分とは違って胸元に膨らみがあり、そして背丈も高かった。


「コッペリアよ。私の力にてあなたを導きましょう。また、この者の意思を継ぎ、アヴァロンの鍵を求めに行くのです」


 翼をはためかせ、舞う羽があたりを包む。また強烈なまぶしさを放ち、コッペリアは目を閉じてしまう。少しずつ瞼開けると、先ほどまで光輝いていたものが、カードとなり手に収まっていた。


「うう、眩しかった…アレ?私何しようとしてたんだっけ?あ、そうだ、明日の朝になったらこのカードを使って、ビューンと飛ぶんだった。そして、そのあとあかでみー?に行くんだよね!そしてそして、アヴァロンの鍵を探して、私は人間になるんだ!…んーでも、何か忘れている気がする。ま、いっか。あしたから楽しみだな!」


 コッペリアの目の前には、おじいさんの姿はなかった。そして、コッペリアの記憶からも、おじいさんはいなかったのだった。



―場所は変わり、ここはアカデミーと呼ばれる場所―



 色鮮やかなステンドグラス、大きな十字架と、とても広い礼拝堂の中に、ぽつんと一人深く祈る女性がいた。名前はローザ。静寂な空間に一人いる中、稲光が不気味に光る。


「この波動は…まさか、インフィニティー。失われていたはずの力が、なぜ今。いえ…おそらくその時が迫っているということなのですね。そうなると…今からくると思われる方の、お出迎えをしないといけませんね。面倒がないうちに、生徒会長と副会長さんには相談させていただきましょうかね…」


 腕を組み、右手は顎を抑えながら、考え事をするローザ。そんな時に礼拝堂の重い扉が開く。大きな帽子とドレスがとても特徴的な姿が入室する。このアカデミーの校長、ディアドラであった。彼女は魔法の力で常に空に浮いており、足音はしない。豊満な胸も揺れを許さない。


「おや、ローザさん。ご熱心ですが、すでにここは利用時間を過ぎておりますよ」

「ディアドラ先生。申し訳ございません。雑念が入り乱れており、それを収めるためにこちらを使わせていただいておりました」

「そうでしたか。しかしあなたが規律を守らず、それでも祈りをささげているとなると、少し雲行きが悪そうですね」

「すみません、不安にさせてしまって。しかし、古き大きな力がこのアカデミーに迫っているのは確かでした。…インフィニティーの力を感じたのです」

「なんと、上位天使の…そうでしたか。ローザさんの感じ取った力は、間違いはないでしょうから、一度ダグダ理事長にも報告させてもらいますね」

「はい。おそらくその力に導かれた者が来るかと思います。ただ、よければなのですが、その者の対処を私にお任せいただけませんでしょうか」

「うーん…そうですね…その辺も理事長と相談しておきましょう。」

「ありがとうございます」


ローザは笑顔を見せる。

ディアドラはその「何か」に対して少し不安な表情をするも、一つため息を吐いた後はきりっとした顔を見せる。


「ローザさん、ひとまずは今日はお休みなさいな。突然今日にも来るわけではないでしょうから」

「そうですね…わかりました。ありがとうございます、ディアドラ校長」


礼拝堂からコツコツと音を立てて出ていくローザ。その後ろ姿を見ながら、ぽつりとつぶやく。


「さて、何が始まりますかね。でも、お暇はなさそうなのは確かですね」


ディアドラはフフフと少し笑い、この後におきる出来事を楽しみにしているようであった。

今回登場したモンスター(アーケードゲーム時のカード効果)の説明:

①ジャンプー 珍獣族。カードとしての効果としては4マス動けたり、戦闘すれば勝ち負けに関わらず次の行動開始時に2マスのテレポートが出来たりと、使いやすい。ただ、攻撃力は決定打が無いので戦闘で勝つのは厳しい。


②パックル 珍獣族。カード効果としては、移動が緑3マスと少し使いにくい。移動できた場合、対立相手の手札カードから1枚ランダムで破壊できるのはそこそこ強い。なおパックルで戦闘は基本的にはしない


③アライクパ 珍獣族 カード効果は、マップを歩いた分だけ耐久値が上がる。「アヴァロンの鍵」というゲームの性質上、追われる側は確実にHPを削られることになるが、このカードを設置できれば非常に心強い。ただ、戦闘を仕掛けたときにはこの効果は発動しない。よく間違えるヤツ


④インフィニティー 精霊族 カード効果は、戦闘で勝つことで、敵対する誰かのところまで直接ワープしてしまうカード。利用タイミングは非常に難しい。また、それを見越して配置待ちをする輩がいるととても困る。戦闘のための能力値は高めに設定されている。

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