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夏のキミ

作者: ササキタツオ

 激しい大雨のあとのカラッとした快晴が、僕の憂鬱を一気に吹き飛ばした。

 新しい1日が始まるのが楽しみだと感じるのはいつぶりだろうか。また君に会える。そんな期待が胸の中で踊っていた。

 思えば、今年の梅雨は本当に長かった。途中で気持ちが圧し潰されるかと思った。いや、実際、何度も心折れた。もう君に会えないのではないかという焦燥から学校に行くのをやめた日もあった。

そうやって6月をやり過ごしたにもかかわらず、7月に突入しても梅雨は続いて。僕はこの世界の天気の縮図を呪った。

 だけど、先日の激しい大雨のあと、空気が一気に変わるのが分かった。暗黒時代にもようやく終止符が打たれたのだ。梅雨明け。夏が来た。

 雲一つない青空が僕に微笑みかける。「もうすぐあの子に会えるよ」と。僕も青空に返事をする。「ようやくだよ」と。

 違う高校に通う彼女とは、晴れの日にしか会えない関係だった。

 毎日決まった交差点で僕たちはそれとなくお互いを待ち合わせるようにして、一言挨拶を交わしてから、それぞれの学校へと向かっていた。これは特段、約束したわけではない偶然の積み重ねによるものであった。でも、僕にとっては、1日を始めるのに何よりも大事な儀式となっていた。

 彼女とは、中学3年の時に同じクラスになって顔を合わせるようになった。はじめは特段話す間柄ではなかったのだが、クラス委員を一緒にやったことから、なんとなくお互いの進路のことなどを話すようになっていった。

 そして、受験も終わり、高校生になった4月。この交差点で僕たちは再会した。この出来事は僕には偶然を超えた運命に感じられた。

 今朝は調子に乗って早く家を出過ぎた。自転車に乗って坂道を下っていく。交差点はもうすぐそこだ。青空がまぶしい。こんな日がずっと続けばいいのに、と僕は思った。

 いつもの交差点で彼女を待つ。そろそろ時間だ。期待をすればするほど待っている時間というのは長く感じるものなのかもしれない。

 ああ、これが、二人の《ルール》になればいいのに。僕のささやかな妄想に応えるように、背後で自転車のベルが鳴った。振り返ると、笑顔の彼女がそこにいた。

 僕たちの夏はここから始まる。

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