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9話

 地底湖に現れた魔物は全身を水色の鱗に包み、大きな瞳と無数の鋭い牙を持つ、蛇のような見た目をしていました。正直キモイです。

 この空間には複数の道から繋がっているようで、地下空洞の合流地点になっているようです。その証拠に他の選手も続々とこの空間に集まりだしています。

 そして現れた魔物を前に阿鼻叫喚と化して──


「例の魔物だぁ! 行くぞテメェら!」

「「「おう!!!」」」


 わたしの想像とは違った阿鼻叫喚の図が繰り広げられていました。てっきり慌てふためいて我先に逃げ出すものだと思っていたのですが、なんと勇猛果敢に立ち向かっているではありませんか。

 もしかして魔物が現れるのも織り込み済みのレースなのですか? どれだけ『危険』を詰め込めば気が済むんですかこのレースは。

 しかし織り込み済みならば、当然選手たちも対策をしていました。

 選手たちが武装しているのは妨害するためだけではなく、このためでもあったというわけですか。


「ではわたしは先へ急ぐとしますか。この隙に」


 これはあくまでレースですから、無理に相手をする必要はありません。他の人が相手をしてくれている間に駆け抜けてしまいましょう。

 悪魔が関わっているのならわたしも加わりたいところですが冷静になって、今は彼女さんからの依頼を優先します。優先順位を間違えてはいけません。


「──!」


 方位磁石を見て北の道を進もうと魔力板(マギボード)を滑らせると、それを妨害するように魔物が長い尾を振り下ろしてきました。

 緩慢な動きに見えるのは巨体過ぎるからで、実際はかなり早いです。危うくペシャンコ。


「巣に入ってきた獲物は逃さない、というわけですか」


 尻尾が直撃することはありませんでしたが、破壊された岩石が弾丸のように襲いかかってきました。なんとかプレートアーマーの魔力板(マギボード)を盾にして凌ぎますが、とうとうひしゃげるようにして壊れてしまいました。


「お勤めご苦労様でした。助かりましたよ」


 大いに役立ってくれたプレートアーマーの魔力板(マギボード)を感謝と共に投げ捨てました。

 深呼吸とため息が混じった息で呼吸を整えて。


「正直迷っていたので相手をして差し上げましょう。この際」


 彼女さんからのミッションを優先した判断を間違っているとは思っていませんが、他の選手に任せて魔物を放置していくという判断は間違っているのではないかと、わたしの中にある良心が理性を(つつ)いてきていたのです。

 邪魔をするというのならば、魔物相手に容赦などしませんよ。

 それに魔物を片付け、なおかつ一位を取ったら凄いと思いませんか?


「隙を見つけてわたしも参加しましょう。攻撃に」


 他の選手は団体で参加している人が多いのか、仲間内で連携を取っているように見受けられます。即席でどこかのチームに加わって輪を乱すくらいなら、大人しく一人でいたほうが賢明でしょう。

 気を引き付けてくれている間に最大限の魔力(マギ)を集め、領域の狙いを魔物に定めます。


「離れてください!」


 野蛮な連中の集まりに声をかけても耳を貸してくれるか不安はありましたが、大人しく攻撃を中断してくれました。

 その隙にわたしは圧縮魔法を発動。展開した領域の境界により魔物は三等分に切断されました。大きすぎて収まらなかっただけですけどね。


「くたばれ。魔物め」


 さらにダメ押しで握り拳を作り、真ん中の胴体を超圧縮。路傍(ろぼう)の石ころ同然の姿にしてやりました。

 巨大な頭と尻尾が奇麗な湖を赤く染め上げ、せっかくの奇麗な地底湖を汚してしまいました。申し訳ない。

 ですが今はレース中。気持ちを切り替えて。


「さ、行きましょう」


 選手たちの唖然とする視線を受け止めながら、自慢の白い髪を払い、涼しげに言いました。

 人が驚いている表情は心地良いものですね。どや。

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