22話
「おや?」
「はっ、馬鹿が! 逆走してる奴に付き合えるかよ!」
わたしと激突する寸前、ワイヤーを根元から切り離してトサカ頭は離脱しました。そしてわたしはそのまま真っ直ぐに火山を背にして猛進。
これでは勝負には勝ちましたが試合には負けてしまいそうですね。これはいけません。
すぐさま方向転換し、またしても入れ替わってしまった順位を元に戻すためにトサカ頭の後頭部を追いかけます。
そのときでした。
「──うお、なんだ?!」
「……これはまさか」
わたしとトサカ頭は同時に驚きの声を上げました。いえ、上がったのはそれだけではありませんでした。
火山が大噴火し、火口から溶岩が噴き上がったのです。流れてくるマグマ、降り注ぐ溶岩。空は真っ黒な煙に覆われて稲妻が縦横無尽に走り回っています。ここまでの噴火は見たことがありません。地形が変化し、歴史に残るほどの噴火です。
確か火山には有毒ガスが発生していて、噴火することにより悪化すると聞いたことがあります。ここは早く火山地帯を抜けてゴールするのが賢明ですね。
マグマにより赤々と熱された大地を駆け抜け、わたしとトサカ頭のデッドヒートが繰り広げられました。
二人とも、火山を迂回するように走るようなことはしません。ゴールに向かって最短距離を突き進みます。それはすなわち火山の斜面を駆け上り、噴火したばかりの火口の上を突っ切るようなルート。
お互いに迷いはありませんでした。
「させねぇ!」
もちろんトサカ頭からの妨害は抜け目なく継続です。伸縮機能がある棒をどこからともなく取り出してグルグルと振り回し、上から横から斜めから、わたしをはたき落とそうと襲いかかってくるのです。
そんな素人じみた攻撃、わたしには掠りもしませんが。魔力板にも当たらないように、器用に躱してみせます。潜り抜けてきた修羅場の数が違います。
「うっ──?!」
ああほら、そんな雑に振り回すから落とすんです。貴重な武器を。
「これでもう邪魔はできませんね。走ることに集中してみては?」
「うるせぇ! 負けられねぇ……負けられねぇんだよ俺はぁ!!」
彼には彼なりにレースにかける想いがあるようです。まさに必死の覚悟が伝わってきます。強がるように笑っていました。
「お前はレース初参加だろ? だったら地の利は俺にある!」
まあ、それは確かに。
「だったらなんだと言うのですか?」
二人同時に火山のてっぺんから大ジャンプ。火山が大きく口を開け、その中ではグツグツと煮えたぎるマグマが泡を吹いて落ちてくるものを飲み込まんと待ち構えています。
「お前は知らないだろ! この先の道が──」
言ってから、トサカ頭は絶句。先の大噴火の影響でしょう。
──この先に道などありませんでした。
噴火舐めプ描写してて草も燃えますわ。
投稿いつしようかなーって二の足踏んでたら阿蘇山噴火して驚き(2021/10/20)。近くの人はお気をつけくださいね。
噴火舐めプ描写してて草も燃えますわ。
投稿いつしようかなーって二の足踏んでたら阿蘇山噴火して驚き(2021/10/20)。近くの人はお気をつけくださいね。