表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

2話

 魔力板(マギボード)レースは始まる前から始まっている、と彼女さんは言いました。

 シンプルに速さを競い合う競技だとばかり思っていましたが、わたしの勘違いだったようですね。

 彼氏さんはその毒牙にかかってしまった、と彼女さんは睨んでいるようです。


「私が調整ミスする訳がないし、グロウがこんなミスをする訳がない。私がミスをしていたとしても、絶対に気づくはずなんです」


 魔力板(マギボード)レースによって繋がれたカップルの自信と信頼、そして絆は相当のようです。優勝候補と言われていたのにも納得できるほどの熱意を感じます。

 それだけに、亡くなってしまったのは非常に残念でした。わたしも魔力板(マギボード)には日頃からお世話になっていますから、一度くらいは最高峰のレースとやらを観戦してみたかったですね。


「そこで、あなたをあのホワイトさんと見込んでお願いがあります」

「……お願いですか。なんでしょう?」


 流れ的に悪い予感しかしませんが、傷心している彼女さんの話を聞かないわけにはいきませんでした。葬儀屋として。


「単刀直入に。グロウの代わりに出場してほしいんです」

「……どういうことでしょう?」


 観戦どころか出場の流れになってきてしまいました。


「失礼ながらあなたの魔力板(マギボード)を拝見しました。惚れ惚れするほど綺麗で大切にしてますよね。腕もそこらの選手じゃ足元にも及ばないはずです!」


 段々と熱量が上がっていく彼女さん。それほどでもありますけど。どや。


「見ただけでわかるものなのですか?」

「メカニックですから、それくらいわかって当然です」


 当然なんですか。根っからのメカニックなのでしょうね。

 思っていたよりも凄い世界のようです魔力板(マギボード)レース界は。


「それで、お互いに約束し合ったんです。『優勝したらメダルをプレゼントする』って」


 それ俗に言う『死亡フラグ』というやつじゃないですか。戦いが終わったら結婚しようみたいな。

 彼女さんは体の向きを変え、額を地面に擦り付けました。汚れることも(いと)わずに。


「どうかお願いです! 私だけじゃグロウにメダルを贈れないんです!」

「……代わりに参加して優勝してほしい、ということですか」

「はい! 無茶なお願いなのは承知の上です! この通り!」


 それ以上、下がらない頭をさらに下げようとする彼女さん。見ていて痛々しいです。

 それでもわたしには、葬儀屋として世界を旅するという目的がありますから、ここで足止めを食らうわけにはいきません。

 心苦しいですが、お断りしましょう。


「お言葉ですが──」

「もちろん賞金は全て差し上げます。メダルだけお供えさせてくだされば、他には何もいりません!」

「引き受けましょう」


 そこまで言われてしまっては、引き受けるしかありません。

 それに魔力板(マギボード)レースの賞金はとてつもないほどの金額だと聞きました。つまりそれだけ危険なレースだということ。

 だとしても、わたしの手にかかれば優勝など造作もありませんけどね。どや。


「それで、そのレースはいつ開催されるのですか?」

「今日です」

「今日ですか?! いえ、聞き間違えました。なんと?」

「今日です」

「今日ですか?!」


 今日なんですか?!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ