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15話

「……なぜ俺がここに潜んでいるとわかった?」


 わたしに上から魔力板(マギボード)で踏みつけられたリーダー格の人は木の幹に上半身を預け、ぐったりとしたまま聞きました。

 魔力板(マギボード)から落下しているのでこの人は失格でしょう。今頃スタート地点にある特設会場ではそのようにアナウンスされているはずです。


「なにか仕掛けを施したわけではありませんよ。わたしならこうする、あなたならこうするだろう、と予想したに過ぎません」


 巨大な倒木の陰は隠れるのに絶好のポイントですし、下を潜った相手に強襲するにはうってつけ。だから自分の魔力板(マギボード)を餌に釣り出し、自分はそのさらに上から強襲したわけです。拝借したボードが陰になってわたしの白い体を隠してくれたのも上手く作用しました。


「誇っていいですよ。あなたが優秀だから上手くいった作戦ですから」

「はっ……さっさと行け」

「そうさせてもらいます。その前に一つだけ」


 わたしは背番号〝4〟を見せつけながら聞きました。


「この人は事故ではなく殺されました。心当たりはありませんか?」

「……殺されたとするならば、アイツだろうな」

「アイツとは? 誰です」

「恐らく一位を独走している、トサカ頭のやつだ」


 スタートと同時に爆発するように走り出して邪魔してきたあの男ですか。

 見るからに邪魔やら妨害やらをしてきそうなチンピラ感満載でしたけど、そのまんまだったわけですね。


「グロウとよく優勝争いをしていた。潰し合いになって誰もゴールできないのが通年だった。が、いよいよ危うく感じたのだろうさ」

「情報提供ありがとうございます。感謝です」

「俺以上に厄介で面倒な相手だ。事を構えるなら覚悟しておくことだ」

「覚えておきましょう。では」


 軽く頭を下げてから、わたしは自分の白い魔力板(マギボード)に乗り換えて、巨大な木々が乱立する森を抜けます。

 そのまましばらく直進していると、だんだんと草木が減っていき、今度は雪がちらつくようになりました。

 すぐに視界は真っ白になり、一面が銀世界に変貌。キラキラと宙を舞う粉雪が光を乱反射して幻想的な光景を映し出していました。ノースリーブだし風もあるので、体感温度はかなり低いです。


「彼女さんからは火山や雪原などもあると伺っていましたけど、本当に色々な地形が密集しているのですね。摩訶不思議」


 こんな不思議な場所もあるから、世界を旅することは楽しくて、面白くて、やめられないんですよね。

 そしてそれに比例するように変な人も多いものです。やれやれ困ったものですね。

 例えばそう、なぜかわたしのそばで並走してこちらをガン見してくる謎の青年とか。敵意は感じないので無視していたのですが──


「……なにか? 美少女をジロジロ見るのは失礼ですよ」


 ──流石に我慢ならなくなってこちらから声をかけてしまいました。

 いまにして思えば、これは失敗だったかもしれません。

 その青年は開口一番、こんなことを口走ったからです。


「一目惚れした! 俺の彼女になってくれ!」

「……HA?」


 こんなに素っ頓狂な声を出したのは、生まれて初めてかもしれませんでした。

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