13話
マスクやらゴーグルやらで顔が見えない暗色の選手たちは同時に飛びかかってきました。タイミングはバッチリですしチームワークも良いのでしょう。ですが、わたしの目は誤魔化せません。
「がら空きですよ。そこ」
抜け道を突っ切り、包囲網を強行突破。
「なっ──?!」
まさか抜けられるとは思っていなかったのか、一人が驚愕の声を上げました。
しかし──
「逃がすかよ!」
魔力板レースの経験における差と言いますか、準備不足が如実に現れました。
そう、あちらは武装をしており、こちらは丸腰だということです。
構える腕にはキラリと煌めくボウガンが。矢先はしっかりとわたしの背中を狙っています。他にも黒塗りされた刃物を手にしている人もいます。
容赦なく矢を放ってきて、身体のギリギリを通り過ぎていきました。
「そうやって選手たちを何人も屠ってきたのですか? その手で」
「手にかけるまでもなかった。だがお前は違うようだ」
「それは光栄ですね。嬉しくありませんが」
前と後ろを同時に確認することはできないためこちらが圧倒的に不利。向こうは飛び道具を持っていますし。
レッドの千里眼やグリーンの鳥操がこのときばかりは羨ましく感じられます。
ここはレースではなく魔法使いとしての長所を生かすとしましょう。わたしだって伊達に四六時中魔力板に乗っているわけではありません。
「スリップストリームをあまり過信しないほうが良いですよ」
「……なんだと?」
合図を出していたリーダー格の人は、わたしの後ろをピッタリとついてきています。
スリップストリームという、簡単に言えばわたしを風よけにしているわけですが、魔力板に限って言えばそれは悪手とも言えるのです。
「魔力を荒らされたらどうなるか。見ものですね」
わたしは魔力板を小刻みに左右へ動かしました。素人がこんな動きをしたら間違いなく転倒するでしょうが、長年に渡って培われてきたテクニックには自信あるんですよ。どや。
彼女さんのお墨付きです。
「くっ──?!」
狙い通り、わたしの後ろに続く人たちはバランスを崩し、失速。中には緊急停止したり身を投げ出されたりしている人もいました。
魔力板は魔力の波に乗るもの。そういう意味では船とあまり変わりません。後方に荒れた魔力を発生させて足元を不安定にさせたのです。
「24時間走り続ける修行でもして出直すんですね。魔力の荒れた地で」
これくらいできなければ、世界を旅なんてできませんから。どや。




