表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
532/539

第530話 それぞれの結末 at 1996/3/30

「く……そ……っ! ちょこまかと……! 速さで僕にかなうワケがぁあああああ……!」




 ――ざん!




 迷いもなく間合いを詰めてくる『プレイヤー』めがけて、大月大輔はまっすぐにダイブする。




 そして――ぐきり。




「ぐ……っ……!!」



 触れた一瞬で、わずかもためらうことなく、手の中におさめた左足首を完璧に破壊した。あっけなさすぎて、むしろつまらなさを感じたくらいだ。一体このちびすけはなんのために――。



「お………………おい……! よせ……!」




 が――佐倉はその白い手を放さない。




「や……やめろ……! 放せ……! 放したまえ! 君の足は、もう壊したんだぞ……!?」




 が――どう足掻こうが、どう蹴りつけようが、どう振り払おうが佐倉はその手を放さない。




「やめろぉおおおおおおおおおおっ!!」




 そこに――きゅきゅっ! どん!!!!!




 大月大輔に、その全身全霊を込めた一撃をかわす(すべ)はなかった。ぐたり、と伸びたカラダを押し退け、気を失ってしまった佐倉のカラダをそっと抱き起し、背負って、室生はひとりつぶやく。



「僕は……僕は、()()()()()()()()な……。真の勝利者は君だ、佐倉君――」






『――現在の現実乖離率:98パーセント』






 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆






「どこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもどこまでもぉおおお!!」


「こんのっ! くそがぁああああああああああ!!」




 覚悟を決めて、小山田が振りかぶった刹那だった。




「ダ……ダメだよっ! ダメだって、小山田っ! もう、あんたはそっちじゃないでしょ!?」


「お……おいおいおいおいおい! 邪魔すんなって、野方(のがた)っ!!」


「ダーメ! 美織(みおり)に頼まれてんのよ」



 まるで緊張感のない口調とそぶりで、咲都子(さとこ)は一触即発の状況にあるふたりの間にやすやすと割り込んでしまう。



「小山田が――ダッチがまた間違えそうになったら止めてって。やっぱり美織の心配したとおりじゃない。あんたってば……もう! あんないい子、もう二度と捕まえらんないからね!?」


「い、いやいやいや! とは言われてもよぅ……」



 ちら、ちら、と小山田の視線が泳ぐ。

 そのたび、うひ? うひ? とタツヒコが(うめ)いた。


 あまりに滑稽でシュールで、ともすれば吹き出しそうになる。

 しかし、咲都子はいたって真面目で頑固だった。



「ほらっ! せっかくのプレゼント、お揃いなんでしょ? もう! こんなにしちゃって……」


「お、おう……。いや、お、おい! 馬鹿っ! あぶねぇ――!」



 再びタツヒコが動き出し、とっさに咲都子をかばおうと小山田が動きかけたその瞬間だった。






 ――みちり。


「うぎっ!?」






「………………ねぇ? この手……今、僕のサトチンに、何しようとした!? ねぇねぇ!?」



 タツヒコの振り上げた手をしっかりと握り締めていたのは――シブチンこと渋田(しぶた)幸徳(ゆきのり)だった。その温和すぎるキレ顔に苦笑しながら、咲都子はあっけらかんとした顔つきでこう言い放つ。



「あたしの()()()()()はね? 伊達に普段からあたしのツッコミ受けてないのよ? すっごいタフなんだからね♡」






『――現在の現実乖離率:99パーセント』




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ