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第406話 遅れてきたサンタクロース at 1995/12/23

「まったく……ケンタって……。ホントにもう……馬鹿なんだから……」



 そう言いながらベランダ用の濡れたサンダルに、もこもこソックスに包まれた足をためらいもなくつっこんで、ロコは必死にベランダの鉄柵にしがみついている僕のそばへ駆け寄った。



「ほら――」



 そして、冷え切った手を両手で包み込んで、はぁ、はぁ、と暖かな息を吹きかける。



「こんなになるまで……風邪ひくわよ?」


「別に風邪くらい、どうってことないさ」


「どうして……来たの? やっぱり――」


「僕は……()()()()()()






 ロコの動きが止まった。






 どのくらい時間が止まっていたのだろう――そう思えるほどの間が空き、ロコはこたえる。



「それ………………なんの冗談?」


「冗談なんかでこんなこと言わない。ずっと好きだった……でも、言えなかった。どうしても」


「あのさ……? あたし、ムロと付き合ってんだけど?」


「あの日、球技大会の最終日、なぜ僕はこんなにイラついてるんだろうって不思議だったんだ」


「ち、ちょっと、聞いてんの!? あたしはムロと――!」


「嫌、だったんだ! すっごく! ロコがいなくなっちまうのが!」


「あたし………………どこにも行かないよ?」


「ロコが、誰かのカノジョになるのがすっごく嫌だったんだ、僕は! だから……だから……」



 だが、それに続く言葉は、ロコの人さし指でふさがれてしまった。



「ストップ。そこまでだよ、ケンタ」


「ロコ……」


「あのね、ケンタ? 聞いてくれる――?」



 ロコはお決まりの困ったような笑みを浮かべながら、わがままな子どもをあやすように言う。



「突然のことでよくわからないけど、一体どうしたのよ? ははぁん、スミから聞いたのね?」


「『()()()()()』って……どういうことなんだよ? あの頃からロコとスミちゃんって……?」


「まったくもう! あの子、ホント真面目なんだから……!!」



 ロコは呆れたと言わんばかりに、大袈裟に目玉を回してみせた。



「ね? あたしとスミは、なにも今回はじめて友だちになったわけじゃないんだよ、ケンタ?」


「え………………!」


「あの頃も友だち――ううん、ライバルだったの」



 ――初耳だった。


 学年トップクラスの美少女であるロコと、おとなしくて目立たない純美子が――どうして?



「確か夏休みの最初の頃かな? ケンタの家のポストに、昔みたいに手紙を入れようとして、そこで偶然スミにあったんだ。……で、問い詰めたら、ラブレターを入れようとしたんだって」




 おいおいおい!

 そこで邪魔しなければ、僕は中学時代に純美子と付き合えてたんじゃないか!






 ………………ん? 待てよ?






「スミちゃんがそうだったとして……。ロコは一体どんな手紙を入れようとしてたんだよ?」


「――っ!? う、うるさい! ア、アンタにカンケイないでしょ!?」



 い、いやいやいや……。

 めちゃめちゃカンケイあるだろ……。


 凍てつくような空気にさらされたロコの頬はわずかにピンクに染まって白桃のようになっていた。



「二人で喧嘩みたいに言い合いして、お互いの気持ちぶつけあって、それで……仲良くなれた。でも、そんなカンケイは放課後だけ。学校では今までどおり。だって……理由、誰にも言えないもん。そのあとも、しょちゅう会うようになった。そうして……『()()()()()』をしたの」




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