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第402話 あたしたちの宣戦布告 at 1995/12/23

 あのね、ケンタ君。

 あたしがちゃんと、ロコちゃんの気持ちを知ったのは、一学期の終わり頃。




 そう――あたしがケンタ君の告白を――断った日のすぐ後だった。




 ロコちゃんってね、怒るとすぐわかるの。表情に出やすいっていうか、表情が豊かっていうか、とにかくいい意味で。かわいいよね。


 でも、その時のあたしは、かわいい、だなんて思っていられる余裕なんて少しもなかったな。



 だってそうでしょう?

 怒った時のロコちゃんって、不機嫌で容赦のカケラもない獰猛なライオンみたいなんだもの。


 朝の予鈴から、夕方家へと帰るまで、ずっとどこからかロコちゃんの視線が飛んできているのが肌でわかるんだよ。ぴりぴりってするの。これ、冗談じゃなくって、ホントなんだよ?



 でも、あたしにはさっぱり理由がわからなかったの。せっかく仲良しになれたのに、ずっと、ずーっと怒ってるの。言葉で伝えてくれたらラクなのに、どうしてもはぐらかされちゃう。






 そこで、一学期の終わりの『宣戦布告』。






 あ、違うの、違うの!






 室生君とか小山田君とか、ケンタ君たちのとは違うんだ。これは、あたしとロコちゃんの間の、ってハナシなの。と言っても、あたしからじゃなくって、ロコちゃんから、なんだけど。



『この夏休み中に、アイツから告白された方が勝ち。負けた方は全力で応援するのよ、いい?』



 それがあたしとロコちゃんの『秘密の約束』の原形。

 生まれたてのタマゴの状態だね。



 そのあと……そうだなぁ……佐倉君のお姉さんが遊びに来た頃だったかな。ケンタ君はきっと知らないだろうけど、あたしとロコちゃん、大ゲンカしちゃったんだよね。




 ……え?

 理由は、って?




 そ、それは、ち、ちょっと……言えないんだ……けど。




 その時に、もっとちゃんとしたルールを決めたんだ――『秘密の約束』の。



 ルールその1  正々堂々と勝負すること

 ルールその2  色仕掛けとかえっちなのはダメ

 ルールその3  ケンタ君から告白してもらうこと

 ルールその4  自分の『スキ』って気持ちも必ず伝えること

 ルールその5  勝った子はケンタ君と絶対に幸せにならないといけない

 ルールその6  負けた子はケンタ君と勝った子の物語を()()()()()()()()()()()()



 六つもあるの。

 ねぇ、すごいでしょ?






 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆






「ハッピー……エンドって……。くそっ……アイツ……!」



 僕の脳裏に、小さい頃のロコのセリフが蘇る。



『このロコ様が一緒にいる限り、ケンタの物語はいつもハッピーエンドなんだからねっ!』



 シャッフル。



 そして続けざまに蘇る、夏祭りの夜に純美子の口から語られたあのひとこと。



『……絶対に勝てっこない、そう思っちゃってた。だから、本当にびっくりしちゃって……!』






 まさか、アイツ。

 アイツ――ロコの、この『リトライ』の目的って――まさか!




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