第401話 君の笑顔が僕を傷つけた at 1995/12/23
あのね、ケンタ君。
ロコちゃんとね、最初にお話ししたのは、校外活動で鎌倉にみんなで行った時だったんだ。
あたし、実は少し、ロコちゃん――ううん、上ノ原さんのこと、ニガテだったの。
だってね?
あたしたちよりステキでキレイでかわいくって、いつもキラキラピカピカしてたじゃない?
でもね。
一緒に鎌倉に行って、いろんなお話しして、そういうの全部、あたしの勘違いで思い込みだったんだって気づいたの。誰にでも優しくって、思いやりがあって、いつもみんなを笑顔にしてくれる、太陽みたいな女の子だって気づいたんだ。そうしたら、すぐに仲良くなれたんだ。
覚えてるかな、ケンタ君?
あの日、ロコちゃん、かわいい髪飾りをつけてたでしょ?
そう、『魔法少女プリティ☆ぷりん』の。
あたしも大好きだったなぁー!
でも、子どもの頃の、結構昔の女の子向けアニメじゃない?
だからあたし、ロコちゃんに『どうしてそれを着けてきたの?』って聞いてみたの。
ロコちゃんはこう言った。
『あたしにとって、とっても大事なことを確かめるために必要なんだよね』って。
ロコちゃん、とっても――とっても真剣でまっすぐな目をしてた。
そこであたし、ロコちゃん――ううん、上ノ原さんのこと、ニガテだなぁと思ってた本当の理由に気がついたの。くるくる変わる上ノ原さんの表情で。困ったような上ノ原さんの笑顔で。
その、本当の理由、知りたい?
じゃあ、教えてあげる。
それはね?
『あたしが好きな人と同じ人を、ロコちゃんも好きなんだ』って気づいちゃったからなんだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ちょ――ちょっと待ってよ……! そ、そんなはずないって……そんな……ロコが……?」
たまらず声をあげたのは僕だった。
そんな表情をしたいわけじゃないのに、自分でもうまくコントロールできない。純美子には今、どんな風に見えているんだろう。泣いている? 笑っている? 怒っている? それとも。
「だ――だって。だってロコは今、室生と付き合ってるじゃないか。それも、自分から望んで」
「それはスミにだってわからないよ。でもね――?」
わからない、と口にしたはずの純美子の表情が、ロコの想いを理解しているように映る。
「決めた、んじゃないかな。うまく言えないけれど」
「決めた……?」
「『秘密の約束』を守り抜く覚悟。その覚悟を決めたから、別の道を歩こうって決めたのかも」
「べ、別の道?」
「そばにいたら、きっとつらくなるから。あたしだったらきっとそう。ケンタ君とは別の――」
「やめてくれ!!」
僕にはもう耐え切れなかったのだ。
「やめてくれ……! 僕とは別の道を選ばなきゃいけないなんて言わないで……お願いだ……」
「大丈夫だよ! スミはそんなこと、絶対に、ぜーったいに言わないもん!!」
その笑顔がどれだけココロを傷つけるのか。
たぶんカノジョは気づいていない――はずだ。





