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第38話 インタールード at 1995/4/22・23

 結局それ以上のことは何も起こらず、平穏な休みが訪れた。


 僕はもはや恒例となりつつある、ここまでで得た情報の整理と分析、そして今後の課題について考えることに時間を費やすことにする。



 まずは第一に、僕の『リトライ』の成否を分ける重要アイテム、スマホとインストールされたアプリ『DRR』についてだ。


 時巫女・セツナにアドバイス(?)をもらったことで『DRR』のプッシュ通知がONになり、『現実』を改変するような出来事が発生した場合には、もれなく数分前に通知が届くようになった。これはある意味大きな進歩であり、有効に活用することができればこの『リトライ』の成功確率は格段に跳ね上がるだろう。


 けれど、この『DRR』にはまだまだ謎が多い。


 例のあんまり参考にならない自動翻訳されたマニュアルによれば、重要なイベント発生時には『過去の選択肢を表示する』と書かれていた。だが、いまだにそれらしきものはアプリ内をくまなく探しても見つけられていない。また何か特別な設定が必要なんだろうか?



 あと、その他にわかったこととしては、『過去に起こった出来事』であったとしても、その発生時期をズラしてしまうと結果として現実との乖離率が大きくなる、ということだ。


 もちろん、『過去には起こらなかったはずの出来事』単体で見るならば、そっちの方が数値としてはデカい。しかし、『過去に起こった出来事』のタイミングを意図的にズラしてしまうと、細かく小さな『乖離』が徐々に積み重なっていき、最終的には『過去には起こらなかったはずの出来事』の数値を上回ってしまう。渋田と咲都子の一件で得たこの情報はかなり重要だ。



 これをきっかけに、僕はスマホの中に残されていたごく普通のアプリ、『メモ』を活用して日記をつけておくことにした。こうしておけば、日常の出来事と『現実乖離率』の相関関係やらを分析するのに役立つかもしれない。それになにより、僕の備忘録としての役割もある。



 ちなみに現在の『現実乖離率』は23パーセント。

 まだ四月なんだけど……なんとかなるか。



 さて次に、この世界――二周目の中学時代から得た情報を整理しておくとしよう。



 我らがクラス、二年十一組に二つの派閥があることは以前のとおりだ。正確に言えば、小山田徹率いる『小山田組(仮)』と、室生秀一をリーダーとした『イケメングループ』の二つに加え、上ノ原広子を中心とした『女子Aグループ』が存在する。あとは有象無象、というわけ。


 しかしながら男子側の二つの派閥間には、これまでのところ競い合ったり攻撃的に接したりというそぶりはなかった。様子見、なのかもしれないし、あっちはあっちでこっちはこっち、なのかもしれない。いずれにせよまだ四月だし、何も起きない方がこっちとしてはありがたい。



 一方『女子Aグループ』に関しては、ほとんどこれという情報が得られていなかった。広子――ロコがまとめ役、というか、勝手にロコのまわりに集まってきた女子たち、という雰囲気もあってなんとも掴みどころがない。メンバーは誰なのか、とか、仲が良いのか、すら不明だ。まあこのあたりのことは、正直モブキャラの僕には縁のない話だから心の片隅に置いておこう。



 そして、最後にまとめておくこととは、短期的に対応しなければならないミッションだ。


 その中でも最も重要そうなものは、渋田と咲都子のカンケイを良好にさせて、公認カップルとして成立させることだろう。



 実はこの二人、この二学年度から付き合い始めて、クラスの連中にも早々にカミングアウトした経歴を持つ。それ以来、二人の多少言動に過激さが含まれるやりとりを目のあたりにしたクラスメイトたちは、それを評して『恒例の夫婦漫才』と呼ぶほどだった。最終的にはその縁は一度も途切れることなく、社会人になってから数年後に結婚式を挙げるまでに至るのである。


 咲都子のお見舞いに行った次の日からは、また以前のとおりの二人に戻ってくれたように思えるものの、いつまた問題が起こらないとも限らない。慎重に動向を見守る必要があるだろう。



 そして――これはまだ未確定だが。


 女子健康診断の一件で湧いてきた不穏な噂が気になる。桃月がどこまで知っているのか、どうにかして確かめておく必要があるかもしれない。もしバレたら……その時点で僕は終わりだ。




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