第298話 恋する遊び島(3) at 1995/10/28
「ランチ、おいしかったね」
「うん。こういうところのって、割と期待はずれが多いんだけど……ちゃんとおいしかった」
「もう! すぐそういうこと言うんだから!」
「お、おいしかったのは……だ、大好きな子と一緒に食べたから……だな、きっと」
「も、もう! す、すぐそういうこと言うんだから!(照)」
なんだかほわほわした気分のまま『アクアミュージアム』を抜け出した僕らは、公園内に併設されていたレストランで軽めの昼食をとった。ちなみに『公園』といったのにはそれなりのワケがある。
実はこの八景島、横浜市の管理する『公園』なのだ。なので、入島に関してはタダで入り放題なのである。さっきの『アクアミュージアム』などの園内にある施設へ入館する際や、アトラクションを利用しようとするとお金がかかる、という、ちょっと変わった仕組みなのだった。
「じゃあさ――おほん――!」
いけね。
つい、設定忘れてた。
「――午後からのお時間は、アトラクションを楽しむ、ってことでよろしいですか、姫様?」
「うふふふ! もちろん、よろしくてよ!」
オープン当初から話題になっていたアトラクションが『ウォーターシュート』だ。
十二人乗りの木製のボートがカウントダウンを合図に斜面を一気に滑走して、ざぶん、とダイナミックに着水する『一発物』である。着水の際には、船首に立っている船頭役のキャストがシーソーの原理で天高くジャンプする、というパフォーマンスも見ものの一つになっていた。
「な、なんだか怖そうだよぅ、ケンタ君……」
「大丈夫だって。すべる距離だって七〇メートルくらいのモンだし。楽勝さ!」
とか言ってたクセに。
「うおっ!!!」
「きゃあぁ!!」
おっかしーなー。列に並んでる最中に見た限りでは、斜面だってたかだか一〇度くらいのものだったのに。いざ乗り込むと結構な迫力で、思わず声が出てしまった。純美子が睨んでいる。
「ううう……」
「ご、ごめんごめん! 今度はソフトな奴にしよう!、そうしよう!」
で、八景島に来たからには、やっぱこれには乗らないとな、ってことで。
「ううう……ひどいよ、ひどいよぅ! やっぱり怖い奴じゃないの! ケンタ君の嘘つきっ!」
「あ、あははは……でもさ? 海の上を走るジェットコースターは、ここにしかないんだよ?」
ゴトンゴトン……。
「そ、それに、さ……? スミちゃんに合法的に抱きつかれるの、とっても嬉しいんだよねー」
「も、もう! えっちなことしか考えてないんでしょ! ケンタ君の変態! 馬鹿馬鹿馬鹿!」
……ゴトン。
プシュー!
そして――一気に駆け下りる!
「いいいやぁあああああ!! もうやだぁあああああ!!」
「あははは! 大丈夫だって! 怖かったら僕にしがみついてていいからさぁあああああ!」
あばばばばば!
結構なスピードだぜ『サーフコースター』!
眼前に広がる景色に、腕にしがみつく純美子をつついて一緒に眺めると――笑顔がこぼれた。
「でも………………やっぱり、いいいやぁあああああ!! ケンタ君の馬鹿ぁあああああ!!」
その結果、
「つーん、だ」
「すみません。調子に乗りすぎました……今は反省しています。だから、こっち向いてよぉ!」