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第243話 リトライ者同盟(1) at 1995/9/22

『――とうとう出会ってしまったか。ついでに私も混ぜてもらえないかね? 仲間として、だ』



 あまりにタイミングの良すぎる着信に、僕とロコは思わず顔を見合わせた。

 深呼吸をして気を落ちつけてから、僕はこうこたえる。



「なら、そろそろ僕らの前に姿を現せよ。声しかしらない、一度騙した奴なんて信用できない」


『それは誤解だ、と伝えて、お前はそれを承服したはずだろうが』


「じゃあ、なんでロコのことを黙っていた!?」


『お前たちが知り合いなのかどうかなど、この私が知ることじゃない。その逆もまた然り、だ』


「……じゃあ、これにはどう答える気だ?」



 ついにその時が来た、と息を吸って整えてから、一息で言い放つ。



「お前の正体についてだ。僕らと出会って、僕らの仲間としてふるまっているお前の正体だよ」




 ――長い沈黙。




 そしてしばらく時が過ぎ、重く、昏い溜息が低くうなる空電音の向こう側から聴こえてきた。



『……お前はなにか誤解をしている、古ノ森健太』


「誤解? 誤解って言ったのか? だったら真実を教えてくれ!」



 僕は少しいらだっていたように思う。自然と口調が荒くなった。



「答えられないのか? それとも答えないのか? いずれにせよ、僕の腹立ちは収まらない。ホントは助けて欲しいくせに、妙に偉ぶって曖昧なことばかり言って、今までさんざん煙に巻いてきただろう? しかも、肝心な時にはてんで役に立たないときてる。そりゃ腹も立つさ!」


『……私とてな? そんなことが可能であれば、すぐにもそうしただろうが――』


「まずはその古臭い口調をやめてくれ! もう、うんざりだ! うんざりなんだよ!」


『……っ』



 電話口の向こうで言葉を呑みこむ音が聴こえた。スピーカーモードにしたスマホを持つ手をロコが握り、ふるふる、と小さく首を振る。その哀しそうな表情で僕の頭はやや冷めたようだ。


 僕は何をか言いかけ――それをぐびりと飲み下してから、閉めたばかりの部室のドアを開け、ロコに入るよううながすと、気まずい表情を見られないようにあさっての方向を見ながら言う。



「あ、あの……わ、悪かったよ。ちょっと僕も頭に血が昇ってたみたいで言いすぎた。ロコまで巻き込まれてる、だなんて思ってもみなかったから、ちょっと興奮しすぎちゃってさ……」


『……すまない』


「よせって。君の仕業じゃない、そうなんだろ、『時巫女・セツナ』? なら謝らないでくれ」



 ふと、部室の真ん中に置いてあるちゃぶ台のそばに座っているロコと目が合った。僕は、スマホを指さし、おどけて肩をすくめてみせる。よかった、ようやくロコが笑い返してくれた。



「お互い、そろそろ信頼するってことを学ばないとな。君も『リトライ者』なんだろ? なら、三人でチカラと知恵を持ち寄ろうぜ。共有できる有益な情報があるのなら、オープンにしよう」


『私を………………信頼、してくれるのか?』


「君が僕の想像しているとおりの人物なのであれば、充分に信頼に値すると思う。違うかい?」


『ありがたい。……ありがたいのだが、君の想像どおりであると言い切るのは少し難しくてな』


「……どういう意味なんだ、それ?」


『同じであって、同じでない――今、言えるのはそこまでだ』


「――?」



 時巫女・セツナの言葉の指す意味がわからず眉をしかめた。ついでにロコの方に視線を投げるが、こちらはこちらで、そもそもなんのハナシをしているの? としかめ顔を返してくる。



「うーん。なんだかよくわからないけれど、時が来たらちゃんと説明してくれるんだろうね?」


『もちろんだとも。信頼には信頼でこたえるべきだからな』


「やれやれ……。ようやく仲直り、ってことでいいの? 二人とも?」



 ちゃぶ台の上に置かれた僕のスマートフォンめがけてロコが口を挟んだ。

 僕はおっかなびっくりうなずく。恐らく、電話の向こう側も同じだろう。



「じゃあ、あらためてハナシを聞かせて? なんでケンタのスマホの、今の現実乖離率が――」



 僕は再び確認のためにアプリ画面に切り替える。

 ――現在の『現実乖離率』、五〇パーセント。




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