表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/539

第128話 月曜日は嫌い at 1995/7/17

(おはよう、ケンタ君!)


(おはよう、スミちゃん)



 そんな今までの日々だったらごく普通の、ごく当たり前に交わしていたやりとりもなく、僕はいつもよりかなり遅めの、一時間目ぎりぎりの時刻に登校すると無言のまま席に着いた。



「……」



 極力純美子の方を見ないように、意識しないように、と思いながらカバンに手を差し入れ一時間目の準備をはじめるが――教壇へと視線を向ければ、否が応にも視界の隅に映ってしまう。



(この状態のまま、金曜日の終業式までなんて……あと五日もあるのか……)



 ……はぁ。

 これじゃあ、地獄に堕ちた方が数倍マシだ。


 今すぐ水泡のように儚く消えてなくなってしまいたい。






 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆






 もうすぐ二時間目の『英語』の授業が終わろうかというタイミングだった。


 ――かさり。


 突如右手の先に触れたモノの感覚に、思わず僕は、はっ、とカラダをこわばらせた。単純で反射的な驚きからではない。今、自分の手の中に渡されたものが一体何か、気づいてしまったからこその驚きだった。こわごわ視線を徐々に移動させて、わずかに握った拳をゆっくり開く。




 ていねいに折り畳まれたメモがそこにはあった。




 懐かしく、見るだけで暖かな記憶を呼び起こす、手紙の形を模した純美子からのメモだった。刹那、潤みそうになる瞳に、ぎゅっ、とチカラを込めてなんとか堪えると、なぜかを問おうとして僕は純美子の横顔を盗み見た。



「――!」



 しかし、素早くそれを察知した純美子は、急いで僕とは反対の方向に顔をそらせてしまう。



(一体なんで……? い、いや、まずは中を見てみないと……)



 僕は授業そっちのけで手元に視線を落とす。開けようとするが、手が震えていてうまくいかない。ようやっと元の一枚の紙の状態にまで戻すことに成功すると、そこには――。






『このあとの休み時間に、二人きりでお話がしたいです。一階の視聴覚室の前で。 純美子』






(………………!)



 再び、ばっ、と顔を上げて純美子の方に視線を向けたが、一向に僕の方を見ようともしない。



(どういうつもりなんだ、スミちゃんは……? いまさらなんで……?)



 考えを巡らせる余裕もなく、無情にも終業のベルは鳴り響いた。






 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆






 二時間目と三時間目の間の休み時間は『長休み』と呼ばれていて、他の休み時間より五分長い。


 変わらず僕の方には視線を向けずに席を立とうする純美子に続いて僕が腰を浮かせかけると、僕らの前にロコが行く手を塞ぐように立っていた。その表情はひどくこわばっていて堅い。



「……話しがあるんだけど、スミ」


「えっと……。ごめん。あとにしてくれない?」


「後回しになんて……できない。今すぐに――」



 それ以上、ロコは言葉を続けることはできなかった。なぜなら――。



「………………悪い。()()()()()




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ