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異世界で目覚めたら戦車に変身できた  作者: photon
異世界デビュー
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Ep05 全員頭悪い

 翌朝、人外3人組は人間の姿に成っていた。とは言ってもウーナは半獣人の姿と狼の姿、及びその中間段階にしか成れない。その為特徴的な耳や尻尾を消す事はできない。加えて、完全に狼の力を引き出せるのは満月の日限定らしい。


 しかしまあ、ゆいとの気持ちは複雑だった。なにせゆいとはウーナにこれでもかと言う位顔を舐められているのだ。(おも)に口を集中狙いされている。雀いわくこれは犬の愛情表現なのだそうだ。

 昨夜のあの後、ボルゲーノがウーナにお前を助けたのはゆいとだと説明したのだが、そうわかるなり命の恩人と言われこのザマである。もしかしたらこの女、人を疑うと言う事を知らないのかもしれない。


「そろそろやめないか」

「わかったのだ!エイブラムス!」


 聞いた話、ウーナもまた冒険者をしていて、ランクはCランクなのだそうだ。

 昨夜は満月の力で気が高ぶり、走り回っていたらいつの間にかああなっていたらしい。雀いわく、つまり思いのままに喧嘩売って殺し合いに発展したって事だな、とのことだ。

 ゆいとの気持ちは複雑だった。この感情のままに突き進みそうなバカの子、自分に付いてくると言うのだ。絶対問題起こすって。


「エイブラムスはウーナの恩人なのだ!ウーナ付いていくのだ!」


 と、尻尾をパタパタ振りながら笑顔で宣言する。こいつ先程も同じ事を言っていた。多分断っても突き放さなければ勝手に付いてくるだろう。


「ウーナはいつも1人で行動してるの?」

「そうなのだ。兄様は意地悪でウーナイヤになって群れを出てきたのだ」

「ええ……」

「ところでその小鳥は何なのだ?非常食なのか?」


 ウーナはゆいとの肩に留まっている灰色の小鳥を食べたそうに見つめる。


「いや、非常食ではないよ」


 そう、この雀説明に困る。しかしウーナは思い込みが激しい為、まともな説明は不要である。


「まあ、友達なのかな?記憶が無いからわからないんだ」


 ゆいとは自分の肩に留まっている雀の頭を撫でた。すると雀は目を閉じてプィ!と鳴いた。口を開けて自ら頭を動かし気持ち良さそうにしている。ゆいとは正直驚いた。この雀にこんな可愛い一面があったとは。


「ウーナも小鳥さんと友達に成るのだ!小鳥さん、ウーナと友達に成るのだ!」


 ウーナはそう言いながら自分の人差し指を伸ばして雀の前に置いた。すると雀はウーナの指にぴょんと跳び乗った。


「ウーナ小鳥さんとお友達に成ったのだ!」


 友達の条件メッチャ低いな。

 喜ぶウーナは雀の体を左手で掴み、顔を舐める。雀は暴れずにただ無言でなされるがままに成っていた。

 ゆいとはそんな光景を不思議そうに見つめていた。もしかしてこの雀は人懐っこい?そう思っていた。直後にそれは違うと言う事がわかる。

 気が済むまで雀を舐め上げたウーナは今度は頭をちょんちょん撫でる。すると雀は先程のようにプィ、と泣いて気持ち良さそうにしていた。


「可愛いのだ!ウーナ小鳥さん好きなのだ!名前はなんていうのだ?」


 しかしゆいとには聞こえていた、雀の言葉が。


「ざっけんじゃねーぞ○ソ犬が!スー○!スー○ス○カ○ーカスー○スーカブ○ャーチ!○ァッキンビッ○!何馴れ馴れしく舐めてんだよこの脳筋が、鳥には体の軽さが大切なんだよ何濡らしてんだよク○ッタレが!ぶっ殺すぞ!」


 見た目の態度とは裏腹に内心は暴言の連発であった。もうゆいとは驚きで言葉が出ない。


「どうしたのだエイブラムス?名前はないのか?」

「ぁっ、ああ、思い出せないんだ」


 質問されたことを一瞬忘れていた。雀の暴言はまだ止まらない。


「テメー名付けんなよ!」

「じゃあウーナが名前を付けてあげるのだ!」

「○ソッ!バカが!SCSはSCSだからな!」


 とは言うが雀はご機嫌そうに目を閉じてチュンチュン鳴いている。これは逆効果だった。


「ウーナ決めたのだ!チュンチュン鳴いてるからチュンなのだ!」

「おいゆいと却下しろ!名前なんざ付けんじゃねー!付けさせるな!」


 しかし却下するにも理由が無い。


「よろしくなのだチュン!」


 しかし雀はピィ!と鳴いた。これもしかして雀とこの声の主別の存在なのでは?と疑う程ほどである。


「くそ、ボルゲーノを使え、俺はこの名前鳴き声と被って使いにくいと思うんだけどとか言って賛同させろ」


 ゆいとは知らない話だが、この間この雀ボルゲーノに殺されかけてたけど、雀そこ恨んでないんだ。


「ねえボルさん、どう思う?この名前」

「どうされましたか?主」

「あんまり良い名前には感じないんだけど、ボルさんはチュンって名前どう思う?」


 それを聞いてウーナは驚いた。


「のだっ!?ウーナチュンって名前良いと思うのだ!」


 自分の自信作を否定されたウーナにはゆいとの反応は信じられなかった。

 雀はゆいとに名前の不要性主張する。


「SCSに名前は要らない。何故ならSCSはSCSだからだ」


 根拠が無限ループしている。これを循環論法と言う。つまり説明になっていない。何故なら説明になっていないから。だからこそ説明になっていない。

 そんな論法はともあれ、ゆいとにはわからなかった。何故この雀はここまで名前を嫌がるのだろうか?何か理由があるのだろうか?


「主は良い名前を思い付いたのですか?」

「え?えーと、エスシーエス」


 雀はチュンと鳴いた。


「よく言った。そうだ。SCSはSCSだ」

「エスシーエス?」


 ボルゲーノもウーナも、そしてゆいとも良い名前だとは思わなかった。しかし雀はずる賢い。


「ゆいと、ボルゲーノはお前が良いといえば良いんだ。ヤツにとってはお前が正義だ」

「……ボルさん、俺はSCSって名前良いと思うんだけど、どうかな?」


 ボルゲーノもやはりバカだった。


「とてもいい名前だと思います。何せ主が良いと言うのですから」


 雀の言うとおりだった。そしてゆいとはトドメに雀自身に聞く。


「お前もそう思うよな?SCS」

「チュン!」

「SCS」

「ピィ!」


 ウーナは少し悔しそうだった。もう何でもいいよ。

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