Ep01 目が覚めたら溺れてた
初めまして。photon_doです。
別の物語書いてたんですけど、なんか作成進まなくて、気分転換にアホな物語書いてみようと思いまして、異世界転生に戦車だそーって思って書き始めました。
戦車そんなに詳しくないので間違いとかあるかもですけど、そこは優しくして頂けると幸いです。
彼は別に戦車なんて好きじゃなかった。そもそも興味も無かった。大きい!大砲!強い!そんな小並感しか抱かない、戦車とかそういう兵器に関しては極普通の青年だ。
「おぼぼぼぼぼ!?ボハッ!オボッ!ッ!!うわあああああ!!」
青年は溺れていた。何故?何故自分はどこに居る?それを知りたいのは今正に死にそうな彼自身も同じだった。可哀想に。
しかし彼には誰かの声が聞こえた。
「息を吸え!肺を膨らませろ!黙って口を閉じて上を向いて手を水の中に入れろ!」
幸い青年はカナヅチではなかった。ただ覚醒した瞬間体が水に浸かっていた為パニックになりかけていただけで、声の主の意図を察した青年は言われた通り上を向く。まだ息は乱れているが、問題は無いだろう。手を水中に沈めていれば自然と顔は浮く。
しかし次に疑問に思うのは、ここはどこ?なぜここに?といった自分の身に起きた出来事についてだ。
彼はとりあえず声の主のを探してみるが、誰も見つけられない。周りに見えるのは星空、月、木、花、草、水。意味がわからない。
困惑する青年に謎の声は指示を出す……
「訳わからん状況だがとりあえず聞け。お前は今森の中の池に浮いている。夜は水温が低いから早く陸に上がれ」
いや本当マジその通りで正に正しく仰る通り訳わからんですと思いながらも、青年はとりあえず陸に上がる。濡れた体に風が吹くと寒い。
「お前、自分の名前は思い出せるか?」
青年は即答した。
「おざきです。おざきゆいとです」
「よし、ではここはどこだと思う?」
「いや、こっちが聞きたいです」
「だろうな。まあいい。実は私も全然知らなくてな。ただ確実なのは、ここは日本じゃない」
「は?」
ゆいとには理解できなかった。例え寝ている間に運ばれたとして、極東の島国から気付かれずに海外って……とゆいとは思った。そりゃ当然だ。しかし状況が状況故に簡単には否定できそうにない。
しかしだとすると、なぜ声の主も全然知らないのにここが日本でない事は確信できているのだろうか……?しかし声の主は話を続ける。
「お前日本人だろ?」
「はい」
「異世界だよ異世界。この世界に日本なんて国は存在しない」
「は??」
そんな事突然言われても、とゆいとの頭の中は混乱してしまう。異世界とか急に言われても実感が沸かない。知らんよそんなもん。
「お前ラノベとかなろうとか読まねーのか?んなバカな。なろう系アニメも見ない感じなのか?」
「いや異世界系は多少は知ってますけど、そもそも貴方誰なんですか?俺の声聞こえてるんですよね?」
「じゃなきゃ会話は成立し得ないよな。それこそ完全に予測できる力でも無きゃな」
「……」
「私はSCSだ。お前の目の前に居るんだぞ。暗くて見えづらいだろうが正面たった3[m]程度だ」
「……」
満月は近くの人間くらいはそう苦労せずに認識できる程度の照度は提供してくれる。しかし3[m]先にはなんか小鳥が居る程度だ。
てかそもそもSCSって何だし。
「考えても見ろ。普通小鳥が大型動物の目の前で夜に地面に座ってると思うか?」
「……いや、まさか」
「おいおいここは異世界だぜ?おかしい事を実現させるのが魔法ってもんだろ?」
勿論ゆいとの頭の中は、いや突然魔法とか言われても……である。
「鳥なんですか?」
「グレースケールである事を除けば、外見は一般的なイエスズメだ。因みに鳥は夜目が効かないってのは間違いな」
「マジですか?」
「マジだよ。じゃあ何か指示出してみろよ」
「じゃあ、元の世界にm」
戻してくださいとゆいとが言いかけた途端、目の前の雀は彼に目掛けて飛んできた。そしてビビって咄嗟に顔を守ったゆいとの手を飛びならが嘴で突く。痛くはなかった。
「バッキャロテメー!できねーしできたとしてするかバカ!これから冒険が始まるに決まってるだろ!」
普通に考えれば手乗り雀でも見知らぬ人間に飛んできて手を突いたりはしない。声の主の発言の信憑性は高まる。
「でも、あの、俺、どうすれば……良いんですか?」
「ガキじゃねーんだから自分で考えろ」
「でも」
「いいか?人間の脳は雀の約1000倍の質量を有している。言いたい事はわかるな」
「……」
「自分で考えろ!」
さっきは魔法がどうのとか言っていたのに、突然脳の話とか、ヒドイ。
「私がお前の元に現れたって事は当然、お前自称神に会ってないだろ?」
「え?あ、はい」
確かにゆいとは気付いたら溺れかけていた。ここに来るまでの間真っ白だったり真っ暗だったり雲の上だったりする空間に滞在した記憶は存在しないし、他の誰かとコミュニケーションを取った覚えもない。
「異世界転移•転生系を主に3つに分ければ、神に力を与えられるパターンと、気付いたら何か力得てたパターン。まあこれは能力が数値化されてるパターンが多くVRMMO系にも多いな。そして後はお孫さんパターンだ」
「え?孫?」
「オイお孫さんも知らんのか。またオレ何かやっちゃいました?だろ」
「いや、そんな事言われても……」
「まあ知らん事責めても唯のハラスメントになるからな、教えてやろう。周囲の環境が原因で後になって特別な力を取得するパターンだ。お孫さんは家庭環境に恵まれていた点が大きい。力を取得するまでに年単為の期間が求められる点が異なる」
「じゃあ、俺にも何か有るんですか?」
「勿論だとも。自分の魂に聞いてみろ」
何言ってんだこいつ、自分の魂と会話する術を知っている者など普通いない。
どうすればそんな事できるのだろうか?イマジナリーフレンドでも作れば良いのだろうか?それとも人格を解離させるべきだろうか?ここは1つ芝居でも打つか?
「あの、日本語で喋ってもらって宜しいでしょうか?」
「おい私まだ日本語しか使ってないぞ」
「魂と会話する術なんて知りませんよ」
「別に言葉を交わせなんざ言ってねーよ。聞けって言っただけだろ」
「でそれはどうすればいいんですか?」
「探るんだよ。鍵を見つけろ。魂の鍵だ」
「ですから日本語で」
「……ニニホンゴ ニニホンゴ ニニホンゴニニ ニホンゴニホンゴニニニホンゴニホンゴ ニホンゴニニホンゴ ニホンゴニニニホンゴ ニホンゴニホンゴニニホンゴニ ニニホンゴ」
そういう意味じゃない。
「ごめんなさい」
狂気的な返しにゆいとはつい謝ってしまった。確かに言われた通り日本語のみで喋ってはいるが、悪意を感じる。理不尽なり。
「私が居なかったら大変だったな」
「居ても大変です」
「答えを教えてやろう。お前は戦車だ」
「は?」
「変身できるんだよ、戦車に」
「戦車に変身って、トランスフォームですか?」
「ガシャガシャはしねーよ。魔法で一瞬でドン、だ」
「ドン……」
なんとも抽象的な表現だ。黙れ!と黙れドン太郎みたいに大声を出しながら左手の拳を机に振り下ろせばいいのだろうか?そうだとしたら変身する度に場違い感が……
「さあ、答えを先に知ったんだから探してみろ。戦車を想像してみろ」
…………
ゆいとは想像した。戦車を。しかしなんかよくわからなかった。大砲が生えてて、なんかタイヤじゃない何か……あれなんて言うんだろう?全然わからん。
ゆいとの悩みは見抜かれていた。
「イメージできないのか?」
「はい……」
「たっく、じゃあそうだな……」
言葉が途切れる。雀は考え込んでしまった様だ。
「めんどくせー、今回は特別大サービスだ。幻術で答え見せてやる。しっかり見とけよ?」
「幻術?」
それは一体いかなるものか?そんな疑問はすぐに解消される。
ゆいとの目にはごっつい戦車の3Dモデルが映る。まるでスマートグラスでもかけているかの様だ。
「いいか?今見せているのは米陸軍現役戦車、M1A2 SEP V3ベースの改造モデルだ。追加装甲として対地雷用のベリーアーマーの装備に加え、対対戦車成形炸薬弾用爆発反応装甲のXM19とXM32を装備している。加えて後方監視カメラを含むその他の装備を追加する市街地線生存性向上キット、略してTUSKⅡを装備している」
何やら難しい言葉はゆいとには呪文の様に聞こえた。ぶっちゃけ何言ってるかわからん。なんか盾とカメラが付いてる事位しかわからなかった。
てか"略してTUSK Ⅱ"って、それは英語での略だ。確かに日本語での略称は存在しないのだが……
「俺、これに成るんですか?」
「成るんじゃない、成れるんだ」
「あぁ……」
「約70[t]の重さの車体を馬1500頭分のパワーを出すエンジンで強引に走らせる。太くない木々ならなぎ倒して前進する事すら可能なバケモンだ。まあ、現代の戦車としては特別じゃないけどな」
「戦車ってやっぱりすごいんですね」
「町中を走ればアスファルトを痛める害虫だよ。地面揺れるしな、特にM1シリーズは騒音がデカい」
「良い事ばかりじゃないんですね」
「そうだ。だがお前はこの先この力を行使しないわけにはいかない。お前の頭がぶっ壊れてなければな。ってわけで外見覚えたろ?これに変身してみろ」
「いゃ……」
「ボンッてこれに成るんだよ。そう想像しろ」
「ボン……」
まったりスローライフなんて未来は厳しそうに感じた。ゆいとはうるさい雀に命令されて仕方無く戦車に変身する自分の姿を思い浮かべた。
"ドガシャン!!"
ギュイーーーンと高いジェットエンジンめいた音が響き渡る。うるさい。
ゆいとは戦車に変身した……してしまったのである。
暗かった森が、ハッキリと見える。冷たくない物質が発する遠赤外線を見る熱線映像装置は、周囲の明るさに関係無く視界を確保する。ライトすら必要無い。
同時に収集される複数のカメラの映像にゆいとの頭は混乱、しなかった。あれ?目が増えたのにまるで元からこれが普通であったかの様に、混乱などしなかった。ミーム汚染?いやいやミームじゃない。
しかしゆいとは焦った。雀の姿が見当たらない。もしや、潰した?
「お前私が潰れたとか思っただろう」
地面から飛び上がってきたSCSはサファイアの防弾レンズを嘴で何度も突く。うるさい雀だ。勿論レンズは何ともない。
ゆいとは喋ろうと思った。しかし口が無い。だが喋れた。
「本当に、体が……」
「これでお前もテレパスだな」
「テレパス?テレパシー?あれ!?えっ!?あれっ?」
異変に気付いたゆいとは驚いた。
「戦車に成っといて何んな細かい所で驚いてるんだよ。戦車がテレパシー使うよりも人間が戦車に成る方がよっぽど驚きだわ」
「まあ、確かに……けどどうしてあなたは俺が戦車に成れるって知ってたんですか?」
「今更だな。多くは語るまい。だがそれがSCSってもんだ」
「はい?」
「私はお前が知り得ない情報を多少提供し、お前があまりにもバカな事をしないようにする為の監視を行う。以後口数は減っていくだろう」
「はぁ……」
「そんな事より、自分の体は思うように動かせるだろう?」
エンジンは急に高鳴り、重たい体が動いた。
ゆいとは驚いた。
「うわっ」
「おいここお前が驚く所じゃないぞ」
「あ、はい、ごめんなさい」
ゆいとはまたなんとなく謝ってしまったが……
「ぶっちゃけ謝る必要無いんだよな……後どうせ後伸ばしにしても仕方がない。主砲ぶっ放してみろ」
「えっ!?」
突然の命令じみた提案的な何かにゆいとは驚いた。タイホウ!ツヨイ!コワイ!
「どうせいつかは使わなきゃならねー。なら早くなれておいた方がいいだろ?」
「使っちゃうんですか?」
「主砲の使えない戦車なんざ大して役に立たん」
「まあ、確かに……」
ゆいとは知らなかった。対人戦では主砲なんかよりも機関銃の方が使いやすいと言う事を……
ぶっちゃけオタクはお呼びではないです。特に教えてやってるんだぞ系は。
2021/01/20
細かい所を修正しました。