第零話 炭鉱のカナリア
初投稿です。何かアドバイスございましたらコメントでもなんでも構いませんのでお伝えくだされば幸いです。
バトル系がとにかく好きです。頭使うバトルも、脳筋ガンガン殴り合うバトルも好きです。
同志がいればぜひ見ていってください!
その部屋は暗く、そして冷たかった。別にメイド服越しに感じる気温が低いとかそういうわけではない。仲の悪い同僚二人に挟まれたときのあの感覚、冷え冷えとした張りつく空気を、侍女悪魔のホーン=ハルベルは感じていた。
部屋の中にいるのは自分を除き4人の男女。円卓の前には椅子が8つ並んでいるが、そのうちの半分は空席になっている。
自分が作り、運んできた夕食をナイフとフォークを使って口に運んではいるものの、その各々の表情は不機嫌を貫いていた。
「ねえねえ、ハルベル~。なんかこの部屋臭くない~?いやー、誰かなーこんな臭い匂い漂わせてるやつ。せっかくの夕食が台無しなんだけど。」
「そらお前の鼻カスの匂いだ糞猫。ジョーカー様の部屋に文句たれるとはいい度胸だな。今すぐ出て行けよ。」
一人の女…猫の絵が描かれた椅子に座る少女は、あからさまに一人の男を見ながら鼻をつまみ悪態をつく。大きな…大きな男だ。ローブからのぞかせる丸太のように太い腕を伸ばせば、対角にいる少女の首をもへし折ってしまいそうである。男はその鋭いまなざしで女を射抜くようににらみつけた。
「カトゥザ様、テテム様、おひかえください。もうすぐジョーカー様がおつきになられます。」
「ハルベル、こんな奴らほっときな。どうせいうことなんて聞く気ないだろうしさ。」
「ナツメリアの言う通りかもね。カトゥザがからかってテテムがそのケンカを買うなんて珍しいことでもないし。」
「あ?なんだよジャック。何か文句でもありそうな言い草だな。」
「絡むなよ、でくの棒。ボクは事実を言っているだけだ。」
大男…テテムの鋭い眼光はジャックに移る。ジャックは丁寧なしぐさで自身の口についたソースをハンカチで拭くが、その口から出る言葉は敵意あるものだった。青い瞳と金色の髪。整えられた西欧の貴族服をまとったその見た目からは想像もつかない。
「「………」」
両者の間に沈黙が過ぎる。しかし、互いの魔力は徐々に上がる。
「覚悟できてんだろうな。」
「何の…かな?」
テテムが右腕を引き絞る。ジャックが携える剣に手をかける。一触即発。互いが互いの殺気を察知し、動き出そうという次の瞬間―――。
―――魔王城、円卓の間の扉が開かれる。
「―――全員そろって…いるわけがないよな。そりゃ。」
銀色の髪。深紅の眼。遠くがよく見えていないのか、彼の目はいつもしわを寄せている。くるくると癖のついた髪を雑にかきむしりながら、あくびをしながらふてぶてしく席につく。
―――否。それが正しいのだ。
「で、テテム、ジャック…『何しようとしてやがった』」
威圧感。殺気が自分に向けられていないのにもかかわらず、足がすくんでしまいそうになる。
「世代交代でクッソ忙しいこの時に、遊んでんなんて冗談じゃねーぞ。不愉快だ。やるなら落ち着いたときに血戦でも勝手にやれ。」
「…御意。」
「わかりました。」
たったその言葉だけで、二人をおさめる。これがジョーカー。これが…天界と人間界を打ち滅ぼさんとする新魔王。ジョーカード=フィル=フォン=アーガノルド=ハーディスの影響力。
「…で、ポルトマとエースが来ていないようだが…」
「ジョーカー様、発言の許可を。」
ナツメリアがそう言って手を挙げる。実のところ、彼女の姿をまともに見たことは一度もない。ローブに覆われたその素顔があらわになった姿を見たものは果たしてジョーカー以外にいるのだろうか。
「いい。どうせポルトマは処刑場で罪人に剣の試し切りだろ。エースについては初めっから来るとは思ってねーよ。」
ジョーカーの予想は当たっている。彼はため息をつきながら本題だ、と切り出した。
「魔界は墜とした。次は天界か人間界だが…人間界を墜とす。」
「あれれ、ジョーちゃん?」
少女…カトゥザが頬杖をつきながら手を挙げる。その腰からのびる尻尾もくねくねと踊っていた。
「天界じゃなくていいの~?こういっちゃなんだけど、今魔界は世代交代したばっかりだし、これから人間たちとやりあうとなれば、そのあとの天使どもとの勝負の前に消耗しちゃうんじゃない?
そっちよりも先に天界墜としちゃってさ。」
「…おい、糞猫。言葉遣いには気をつけろよ。ジョーカー様だ。間違えるな。」
「テテムさあ、臭いから口開かないでほしいな。」
「貴様…っ。」
「いい、テテム。」
テテムはジョーカーへの不敬で立ち上がるが、それを彼は止めた。
「カトゥザの言い分も一理ある。人間と天使だったら誰が見ても天使のほうが強いというだろう。俺も魔族と人間との一対一のケンカでお前らが人間になんて負けるはずがねえと思ってるよ。
―――でもだ。」
ジョーカーは目の前に並べられたフォークをもてあそび、逆手に持つと皿の上の肉に突き刺した。それを持ち上げ、しばらく眺める。滴る琥珀色の液体は、小さな小さな飛沫をあげて元の自分の場所に戻っていく。
「―――やりにくいのは人間だ。あいつらは手段を択ばない。生き残るためなら何でもしてくる。俺達には理解できない、やりづらさがある。
…第一次異世界大戦で俺たちが負けたのは、あの人間どものそれに負けたんだ。だから。」
鋭い目つきのまま、肉に小さくかみつく。十分に咀嚼し、飲み下すと彼は言った。
「先に墜とすのは人間界だ。あいつらを最後まで残せば何をやるかわからねえ。正面から徹底的に、全力で蹂躙しろ。」
今日の会合の目的はこれで完了。ジョーカー様から仰せつかった内容はこれですべてのはずだ。そこに、ジャックが手を挙げる。
「して、ジョーカー様。エースとポルトマが来ていないのは理解できますが、キングは。何か任務ですか。」
「ああ、お前らに伝えておけばよかったがな。ハルベル。」
「はい。キング様ですが………人間界にいらっしゃいます。
――――――宣戦布告のために。」
開戦の時は近い。
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プレッシャーになってしまったら申し訳ありませんが、私の好きな友人の言葉です。
「好きなものや、続けてほしいと思うものには気持ち伝えたり評価したり、課金したりするのはいいことだと思う。それをしないと、いつかその人やその会社が自分の好きなものを作ってくれなくなるから」
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