009 巻き込まれ体質
俺の目の前で叔母の像が身長5mのロボットに膨れ上がり、全てを破壊すると言っていた。
【最終警告します。情報を取得した対象および目撃者の殲滅します。その後自爆しますので付近の人間は安全の為に10km以上距離を置いてください。付近に人間を確認! 住民番号を提示してください。先ほど排除した生命体は亜人の為に保護対象外ですので問題はありません】
「亜人!?」
どうやら、コミニケーションが可能なユニットのようだ。
牧師を亜人と言っているが人間だったはずだ。住民番号ってなんだ? 困った時は記憶を自分で思い出すよりナビに聞こう。
『住民番号ってわかるのか?』
『カジ・タクマの義体製作時に作成されたアセンブラ社における資産番号は、AD20020505-4649-42731-XYです。これが住民番号に相当すると考えられます』
うむ。ナビがいなかったらヤバかったのかもしれん。アンドロイドになった際に多くの知識をインプットされたがその内容を思い出すのに高度な検索が必要なようでとっさには自分で出なかっただろうな。
通用するかわからないが言ってみよう!
「AD20020505-4649-42731-XYのカジ・タクマだ!」
【衛星リンク中………月面基地データベースに該当者を発見。基本的人権が認められる人間と断定………例外処理………安全確保の為に殲滅行動を中止します。なお、カジ・タクマが10km離れた時点で殲滅行動および自爆行動を開始します。速やかに避難してください】
「行動の停止はできないのか?」
【カジ・タクマには、命令権限がないので変更できません。カジ・タクマが10km離れた時点で殲滅行動および自爆行動を開始します。速やかに避難してください】
自爆行動は止まらないのか!
今いる町が滅ぶのか?
住民番号がないと亜人扱いで人間として扱われない感じなのか?
俺が人間として認識されたために時間は稼げたが、命令に従って動くユニットで融通がきかないようだ。
ナビと相談してみよう。
『このロボットが自爆すると、どれぐらいの範囲で被害がでるのだろうか?』
『M7ユニットの後期型だと仮定すると自爆による内臓の重力装置の崩壊で半径5kmが更地になると予測されます』
町がなくなるな……
『俺の機能で街の被害を防ぐ方法はあるか?』
まったく対応が思いつかないのでナビさんにダメ元で聞いてみる。
『地球公転周期の計算を除いて、体内に内蔵されているタイムマシーンで千年後に飛ばすことにより宇宙空間に放出できます』
まじか! ナビさん優秀だな。千年後の地球に飛ばしてしまえば大丈夫だってことだな。
しかも、地球の公転はわずかに位置がずれているので未来に飛ばす際に対象の公転の位置計算を抜かせば、地球と位置がずれている宇宙空間に飛ばされるって事だな。
早速ナビに従ってロボットに触れると、放電の様なスパークをしてロボットが消えた。
消えたロボットの下には、地面とロボットの足に圧縮されたつぶれた神父が横たわっていた。
神父には悪い事をしてしまったが、ここに居ては俺が犯人にされかねない。
急いで宿にもどって身支度をしてクルト法国を目指すことにした。
神父が亜人扱いで人間として見ていなかった点が気になる。
他にもロボットが情報を取得する際にリンクした衛星や月面基地など、新たなキーワードが登場していた。
さらに叔母の像の目的がわからない。俺にメッセージを伝える為の目的ではなく別の目的で配布されている気がする。
それを利用して、叔母が未来に来ている俺にメッセージを残した感じだな。
製作されている場所に行けばわかる事だ。
今回の出来事でわかった事は、アセンブラ社の資産番号を使用できる事と俺が人間としてアセンブラ社のユニットに認識され保護対象になっている事だな。
宿に戻ると薬草を取得しながら町に来て買った、大型のカバンや多少の衣服を持って宿を出た。
町を出る前に第二王女に行くと約束していたのを思い出して、ベルモント公爵の屋敷を訪ねた。
ベルモント公爵の屋敷は、町の外れにあって広大な広さだった。
裏門はすぐに見つかったが、表門に周るように言われて移動しているが激しく遠い。
正門に到着すると二人の守衛に呼び止められた。
「見慣れない男だな! 何者だ?」
「俺はタクマと言う者だが、クシナ王女に呼ばれて訪ねたのだがどうすれば良い?」
「お前の様な姿の人物を王女が呼ぶわけがないだろう! どこで王女がこの屋敷に居る事知った!」
一人が武器を構えて威嚇しながら、もう一人の守衛が閉じている正門の横から中に入って応援を呼んでいる声が聞こえる。
これはまずいな。
そして、無抵抗のままベルモント公爵の館の地下牢に入れられてしまった。
誤解が解けるかと期待して逆らわなかったが、まったく誤解は解けなかった。
いや誤解ではなく、なにかあるような感じにも感じた。
初めから武器らしい物も持ってなかったから、大型のカバンや多少の衣服のチェックはされたが何も取り上げられずに牢に入れられた。
最後まで館に王女が居る事をどこで知ったかを問い詰められたが、町に来る際のエピソードを話すが信じてもらえなかった。
牢と言っても人が通り抜けれない幅の鉄格子の牢なので、俺の身体であれば液化してサイズを細くすれば容易に脱出できる。
約束を守らないで町を出るべきだったと後悔する。
深夜になったら抜け出そうと考えていると、隣の牢から話し声が聞こえる。
「………王女様……かなら……」
「かまいません……貴方の……」
壁に耳を当てて聴力を向上させると聞き覚えがある声が聞こえた。
隣の牢に居るのは、助けたはずの第二王女と女騎士のローズだった。
「もはや、ここまででしょうか?」
「まだ望みがあります。今夜にワールド教の牧師が領主に働きかけると言っていました」
「エブラ帝国の手がここまで広いとは想像していませんでした。ベルモンド公爵が寝返っているとは……」
カッシ公国のベルモンド公爵が帝国側に寝返っていた感じなのかな?
俺の身体であれば壁を殴打して穴を空けるとは容易い事に感じる。
運命なのか牧師ってロボットにつぶされた人物だったら不味い気がするし、助けた王女が不幸になるのも見ぬ振りも出来ないので壁をおもいっきり叩いた。
ドッコン!
上から降り降ろす感じで壁を叩いたので人が一人通れるほどの穴が開いたが、瓦礫は斜め下方向に飛んだので王女がいる牢には崩れた際の煙だけが充満した。
「何事です!?」
「誰だ!」
「タクマです。王女に再会しに来たら牢に入れられました」
「タクマ様!」
「タクマ殿!」
壁を破壊した音で誰かが来る可能性があったが、誰も来なかったので二人から事情を聞いた。
想像していた通りにベルモンド公爵が帝国に裏では寝返っていて、王女を軟禁していた。
帝国は人質として利用価値がある第二王女を捕まえたかったようだ。
「なぜ戦争中に王女は危険な移動をしていたのですか?」
「今回の戦争エブラ帝国の策略によるもので、カッシ公国が望んだものではないのです。中立を保っているクルト法国のミエダ法王に事情を話して、公国の後ろ盾になってもらい停戦をするために私たちは法国へ向かっていたのです」
ローズが悔しそうに目的を話してくれた。
叔母を探す方が重要で、この世界の国の争いなど興味はないが二人に出会ってしまって縁を作ってしまった事と目的地が一緒である事、何より王女と行動すれば叔母の行方の情報を持っていそうな法国の法王に会う事がすんなり可能になりそうなので二人と行動を共にする事にした。
「俺を法国まで護衛として雇わないか?」
「良いのですか? こちらからお願いしたいぐらいです。貴方が良ければぜひお願いしたい。クシナ様もよろしいでしょうか?」
「も、もちろんお願いします」
なぜかクシナ王女が顔を下に向けて俺の顔を見ないで答えた。
町に入る際に助けた事が好印象で惚れられてると感じるのは意識過剰なのかな?