001 遥か彼方に飛ばされて
少ない時間でなんとか書いています。
誤字報告などありましたら大歓迎!大変助かります。
俺は、梶 琢磨17歳である。
高校二年の夏に、母親の姉である叔母のおかげで人生が狂ってしまった。
それは、今から話す内容なのだが本当にあり得ない事だった。
定期テスト期間が終わって夏休み初日にやり込む予定だったゲームを母親の姉である叔母の須藤 鈴40歳独身に持って行かれた事が発覚する。
叔母はなにかの研究員をしているが、派遣のような契約形態で給料が安い為か激貧であった。
趣味は発明で、ゴミの様な電気製品を持って来ては実験テストに俺を付き合わせる。最終的には失敗して爆発やボヤ騒ぎを起こすとんでもない人だった。
そもそも最後に持ってきた反重力装置なる装置も隕石から採取した鉱石を使用していると自慢して、装置の電源を入れた途端に装置自体が地面にめり込んで自壊した。
これってある意味成功して本体の重量が上がったのでは?
更によく俺の家にタダ飯を食べに来ては、俺の私物を持ち出していく。
よりによってテストで留守の間に楽しみにしていたゲームを持っていくとは許せない叔母である。
叔母の家は、俺の家から徒歩五分のボロアパートの一階の一部屋だ。
俺はラフな私服を纏って、家を出発する。
叔母のボロアパートに到着すると、一階の一番奥の薄暗い玄関まで移動する。
コンコン!
ノックをしても返事がないのでドアのノブを回すと、鍵もかけられておらずすんなり開いた。
「すずおばさん? 盗まれる物がないからって無用心すぎだろ?」
部屋に入るといつ掃除したのかわからない1LDKの部屋が視界に入る。
1LDKと言っても結構広い一部屋で20畳ぐらいあるだろう。
なんの装置かわからないゴミのような叔母が作成したと思われるガラクタをかき分けて、旧式のテレビの前に移動すると俺の家から持ち出されたゲームソフトが置いてあった。
「すぐ見つかって良かった! それにしても何処で寝てるんだ? すずおばさんは留守か?」
寝るスペースもないほど物が散乱している周囲を観察すると、ゴミの中に空白の直径2mぐらいの円形にえぐれた場所があった。
何かそこの部分だけ空間的に球体の形で抉られている感じだ。
「なんだこれは?」
近寄ってみると、床まで抉られていて床下が見える。
マジか? 前来た時はなかったので、すずおばさんが何かを使って開けたのか?
まぁ、ゲームソフトも回収出来たので、家に帰ろうと考えて玄関へ移動する。
散乱するゴミのような叔母が作成したガラクタを避けながら移動すると何かを踏んでしまう。
「いてて!」
踏んだ物をみると時計のような物で、腕に巻くバンドに付いている留め金が足の裏に刺さったようだ。
「危ない物を置いとくなよ!」
時計の様な物を手に取ると、腕時計の様だが普通のGショックの2倍ぐらいある大きさでデジタル表示する場所とボタンが一つ付いてるだけの訳がわからない物だった。
何気なく腕に装着すると、くそ重い!
腕を鍛える時に巻く重りぐらい重かった。
「相変わらず意味不明な物を作ってるな……」
手に取った時計の様な物を装着して腕を動かすと、デジタル表示が点灯して表示された。
「1000」
千?
もう一度腕を振ると表示が再び変わった。
「2000」
二千?
万歩計なのか?
めっちゃ腕を振ってみた!
「30000」
3万?
一度振ると1000増えていくだけの機能なのか?
唯一付いているボタンは、リセットスイッチかな?
押すことによって表示がゼロに戻るのだろうと押してみた。
バチバチ!!!
腕時計の様な物から放電が始まった!
なんだこれ! 火傷しちゃうだろ!
急いで腕から外そうとすると身体が動かない!
ちょうど腕時計の様な物から半径1m程の所に何か見えない膜が放電によって形成されていく。
球体の膜が周囲を覆ったと思ったら、視界が一気に変わった。
軽い落下を味わってお尻から地面に着地した。
お尻が痛い!
「え!?」
周囲には何もない平原が広がった。
座り込んでいる場所は、地面の上に一緒に巻き込まれたと思う円形のさっきまで居た部屋の床下が敷かれている。
転移!?
初めに思いつく事は、SF小説などにあるフィクションの転送装置だった。
一体何処まで飛ばされたのだ?
いや幻覚を見ているのか?
一緒に移動してきたと思われる円形の床下から降りて地面を触ると土だった。
幻覚じゃなくリアルだな?
一瞬異世界かと思ったが、叔母の家まで歩いて来た際にみた太陽と同じ物が空に浮かんでいる。
地球だよな? 異世界って落ちはないだろう!
とにかくここが何処か調べなくてはいけない。
腕をみると3万の表示のまま、腕時計の様な物が何もなかったように存在していた。
ゲームを取りに来ただけなので、持ち物は財布と目的のゲームソフト。
服装は夏休みの始めの暑い季節の為に、わずかに薄着のラフな姿。
しかも、部屋から靴を履かずに来てしまった為に靴下のみである。
裸足でないだけましだと思うが、地面の感触が靴下越しにダイレクトに足の裏に伝わる。
暫く歩くと見覚えがある地形なのだが、舗装された道路や建物は皆無だった。
元いた場所と地形は似ている?
近所の川があった場所に川があった。
たしかドブ川のように濁っていたはずの川が綺麗な小川になっていた。
うむ。全く状況が飲み込めない。
やはり夢なのか?
しかし、歩いた時に足から伝わってくる感触は本物である。
もしも、元の場所であったならば、川を下って五キロほどいけば海に着くはずである。
二時間ほどかけて川を下って行った。
道がない為に、川の浅瀬を歩いたり川の周囲の獣道のような場所を歩いていく。
足の裏が限界で、かなりヒリヒリしてきた。
靴の重要性が理解できる。
稀に野生動物が現れた。
普段見ない狐っぽい動物もいた。
海が見えて来た時に俺は悟った。
此処は元いた場所で時代が違うんじゃないか?
大昔なんじゃないか?
それは、海に見えた景色が自分が覚えている景色と全く同じだったのだ。
沖合いに大きな石が二つ重なっていた。
小さい時から見覚えがある特殊な地形を見て呆然とした。
腕についている腕時計の様な装置を見る。
3万の表示のままで何事もなかったように腕についている。これってタイムマシーンなのか!?
放心しながら海へ歩いていくと記憶にある建物や道路などもなく、ただ地面が続いた。
3万って表示は3万年なのか3万時間なのか?
年だとすると日本だったら石器時代か?
とにかく人を探さなくてはいけない。
海沿いに歩いていくと、ありえない物を見つけてしまった。
頭から血の気がひいた……
海からの漂流物に、半分溶けたコカコーラの瓶が浮いていた。
え!?
過去じゃなくて未来!?
いや、俺と同じように過去に来た人の物かもしれない。
急いで元来た道へ引き返し、過去の記憶で道路があったと思われる場所を手で掘り始めた。
土が硬くなって掘れなくなったら、適当な木の枝を探し出した。
その木の枝を利用して更に深く掘った。
そして、よく見たら舗装された道路の様な地表が出てきて理解した。
ここは未来だ……
道路が全て覆われるほどの土の堆積。
建物が全て朽ち果ててなくなる年月。
3万年後なのか?
「うおおおおおおおお! なんじゃこりゃ!」
思わず叫んでしまった。
暫くして、落ち着いてから海を眺める。
俺は、しがない高校二年生。
こんな状況どうすれば良いか全くわからん!
時間だけが経過していく。
夕方になって周りが赤く染まり始めた頃に海に異変が起きてた。
海上を白い船の様な物が高速で右から左に移動しているのが見えた。
見た事もない様な流線的な外見をしている。
思わず上着を脱いで激しく振りながら叫んだ。
「誰か!! 助けて!!」
十分ぐらい叫ぶと高速で移動して視界から消えようとしていた白い船が、こちらに進路を変えた様に感じた。
そして、高周波の様な音が聞こえてくる。
キーーン!
確実に私の方向に船が向かって来ている。
ってデカイ!
遠かったから小さい白い船に見えたが豪華客船並みの大きさなのか?
形は涙の様な雫の形で、よく見れば海面スレスレを飛んでいる!
高周波が甲高くなって、耳を塞がなければ耐えられない程になった。
耳を塞いで船を見つめていると目の前まで迫って来たいた。
思わず目を閉じると高周波が消えた。
再び目を開けると、船は消えていた。
当たりが暗くなり夜になったようで、月明かりが当たりを照らす。
虫の鳴き声がわずかに聞こえる。
幻覚だったのか?
ポアーン!
何かが開く音が上から聞こえた。
上を見ると先程の船が俺の真上に浮かんでいた!
なんで空に浮かべるんだ?
さっきの音は船の一部が開いた音だったようで、開いた場所から眩しいほどの光線が俺を包んだ。
身体が浮遊感に包まれて浮かんでいく。
未来だからなんでもありか?
全く仕組みがわからない方法で船の中に俺は運ばれていった。