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迷宮をただ歩む者  作者: 洗濯紐
序章
6/16

ギルドと買い取り

 多少の昼食をクミアに恵んでもらったとはいえ、貰った量はそこまで多くないので道中にある屋台からの匂いが後ろ髪を引く。昼食を十分に食べたクミアはそうでもないのか、俺を急かしてギルドの方へと移動していくが……宿を取るために少し早く出たとはいえ充分な人がいた。


「……めっちゃ見られてるんだが」

「皮袋ね」

「気づいたらこんなに溜まってただけなんだけどな……俺何もしてないし」

「面倒臭いから分配は半分で良いわ」

「助かる」


 俺の脳内地図には1層の全域が表示されている。腕輪の様なマジックアイテムを見つける事は出来なかったとはいえ宝箱は2、3個見つける事が出来ており、それの中身は全てマジックポーチの中に回収してもらっていた。定期的に地図を使ってゴブリンへの最短ルートを見つけ出す。そんな単純なことしかしていないとはいえ、一日の稼ぎとしては破格な域まで到達しているのだろう。


「次の方……魔石の買い取りは隣の建物で行っております」

「あっ……じゃあ、パーティ登録お願いします」


 ギルドに登録した時と同様の列にクミアと並んでいるとそんな事を言われてしまったので、何もしないで移動するのはあれなのでパーティ申請をする。クミアの方を見ると驚いていたので彼女も知らなかったのだろう。


「パーティ登録はお互いの同意が必要となっておりますが……」

「「問題ないです」」

「ではギルド証の提示お願いします」


 言われるとおりに各々でギルド証を提示する。パーティを組んでもわざわざギルドに登録する必要は無いとはいえ、固定パーティを組むのならばやっておいた方が良いと思っていたパーティ登録。迷宮に潜るだけで依頼を受けないならば恩恵はあまり無いが、お互いに何かがあった時には役に立つだろう。


「リーダーは……」

「クミアで」

「ルイスで」

「「「……」」」


 クミアの顔を見るが何言ってんのこいつ?みたいな顔をしていた。恐らく俺も同じ様な顔をしていただろうが……。


『事情あって目立ちたくないのよ』

「……俺がやります」

「分かりました。パーティ名を登録しますか?」

「いえ、良いです」


 依頼を受けないのだし、わざわざパーティ名を決めるまでもないと考えて登録はしない。そもそも考えてすらいなかったのだが……目立てない事情があって平民が持てないようなマジックアイテムを持っていて……?犯罪者ではない事を願いたいが、犯罪者の方が楽かもしれない。


「では、Gランクのルイス様をパーティリーダー、Gランクのクミア様をパーティメンバーとして登録します」

「お願いします」


 パーティ登録を済ませて魔石の買い取りをする為に、川袋を左手に持ち替えてから移動を開始する。


「……ルイスは知らなかったの?」

「何が?」

「買い取り」

「……俺、今日来たばっかだから」『後で軽く説明しろよ』

「あー、私もよ。わざわざ分けられてるとは思わないわよ普通」『家出中なのよ』

「……もう、何も言わなくていい」


 口と念話で別々の事を話すという器用な真似をしながら、ギルドを出て隣の建物へと移動する。本当は事情なんて聞きたくなかったのだが、これで犯罪者だったなどとなると命に関わる。そういう意味もあり、”後で”説明しろと言ったのだが……家出中か。色々と気になる点が増えたのは間違いないのだが、犯罪者ではないのならばそれ以上聞くのは藪蛇だろう。


「で」

「ああ」


 隣の建物の入り口で俺とほぼ同時に足を止めたクミアが何を言いたいのかは簡単に分かった。


「おまえ、何の役にもたってねえんだから分配は無しでいいだろ!」

「今日の宿どうすれば良いんだよ!?」

「知らねえよ、お前が使えねえのが悪いんだろ!?」


 朝に絡んできたパーティの内の一つらしき人達の、分配揉め。


『私、あれだからああいう奴等嫌いなのよね……てか、これ便利ね』

『事前にもう少し、一言言ってくれ。唐突にやられると心臓に悪い』

『……分かったわ』


 軽く手を動かす動作が見えたから少しは身構える事が出来たが、それがなければ本当に心臓に悪い。取り敢えず、彼等に見つかるよりも前に出て一度出直したかったのだが……、


「行くわよ」

「まじか」

「あんな奴等に私の予定を乱されたくないもの」


 クミアが普通に入っていき、それに続く形で俺も入っていく。ある程度の人数が並んでいるとはいえ、限界まで詰められた革袋は否応なく目立っていた。


「……クミア、持つの交代しないか?」

「今更よ」

「……」


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