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迷宮をただ歩む者  作者: 洗濯紐
序章
5/16

固定パーティ

 固定パーティ。要するに、引退するか死ぬかするまで一緒のパーティを組み続けるという物。何かアクシデントがあればパーティは解散するだろうが、この腕輪を考えての発言ならば多少のアクシデント程度では解散できるとは思えなかった。


「……本気で言ってるのか?」

「ええ。ルイスが弱いのは知ってるけど……守ってあげるわ」

「……お互いに隠し事が多いと思うが?」

「……そう、ね。まあ、固定パーティって言ってもそんな物でしょ?生涯を共にする訳じゃないんだから」

「まあ、そうだな」


 クミアが何を隠しているのかはわからない以上確実とは言えないが、俺よりも大きな隠し事をしているのはほぼ間違いない。パーティを解散したくなったら腕輪を破壊すれば良いだけなので一方通行で行う事も出来るだろうし……なんら問題ないだろう。

 ただ……、


「俺、金ないから今日で死にかねないんだが」

「……貸すわ」

「……助かる」


 貸してくれるというのは簡単に出来る事じゃないだろう。例え数千dだとしても、今の俺からしてみれば喉から手が出るほど欲しい物だし、簡単に返せる物でも無い。腕輪を付けるぞ?と念の為確認し、頷いたのを見てから装着する。クミアは右手に装着していたが、俺は利き手と逆に装着したかったので左手に装着した。


「これで念話が出来るようになった、のよね?」

「ああ、多分」


 お互いに自分の腕輪を眺めながらそんな会話をするが、どうやったら念話が出来るのか想像出来なかった。……触りながら唱えるか?


『あー』

「きゃっ!?……ねぇ?」

「……故意じゃない」


 唐突に俺の声が聞こえたからか睨みつけてくるルミアを見るに、成功したと考えてよいのだろう。が、あまり気分の良い物では無かった様で……。


「腕輪に手をあてながら念じればいけるぞ」

『あ!!!』

「ッッ!?……おい」

「仕返しよ。なにか悪い?」

「……いや」


 唐突に大声が脳内に響き渡る。これは確かに、あまり気分が良い物ではないだろう。頭の中をその声が響き渡るため、普通の声を聞くのとは全く違う感覚。……多用できないな。


「取り敢えず……出るか」

『ええ』

「……『楽しそうだな』」

「……止めるから止めて」

「分かった」


 地図化で周囲に何もいないことを確認してから落とし穴を登っていく。スライム程度で位階が上がったと思われるとは考えられない以上、見て分かる能力系を何も考えずに上げる訳には行かず、自動地図化を3まで上げたが……周囲6mの地図が自動で頭の中に入ってくる為先程までとの違和感が大きい。


「……取り敢えず、《地図化》。どうする?まだ帰るには全然早いと思うし、金を借りる身としてはなるべく稼いで起きたいんだが……」

「……2層に行くのは?」

「俺が死ぬ」

「……ゴブリンを倒して周るわよ」

「分かった」




 ゴブリンがいる所へと案内し、戦っている最中は見学するかスライムを倒す。クミアがゴブリンを倒すのにかかる時間よりも俺がスライムを倒すのにかかる時間の方が長いのは心に来たが……仕方がない。位階が6に上がったと喜んでいるクミアを尻目に俺も位階が上がっていて驚いたり……としているとあっという間に時間が過ぎていった。

 ……腰の袋に入るとは思えない量の魔石を収納していたのだがクミアが気づいているとは思えなかった。


「クミア、魔石を全部これに入れてくれ」

「……?……え、あ。そうさせてもらうわ」


 一瞬何を言われたのか分かっていない様子だったが、理解してもらえた様で助かった。わざわざ此処でマジックポーチについて言及したくない。それに伴って何か知らなくて良いことまで知ってしまったら面倒くさい事この上ないのだ。

 地図化を定期的に使う事で誰も来ていないことを確認し、クミアの方を見ないようにしながら俺が用意した皮袋へと移し替えるのを待つ事数分。


「終わったわ」

「ああ、じゃあ……俺が持つ」

「ええ」


 皮袋にパンパンまで詰められた魔石が思ったよりも重かったのだが、それを顔に出さない様にしなが


『ふぅーーー』

「うわっ!?」


 脳内に響き渡る吐息の様な声。事前に予兆があれば耐えられただろうそれも、唐突に来られれば驚きで皮袋を落としかける。右手を使って皮袋を持っている以上左手に有る腕輪を触る事は出来ないし……悪戯が成功したとでも言わんばかりの笑みを浮かべているクミアに苛立ちを覚えながらも、どうやって止めさせるかを考える。


「クミア……」

『何?』

「夜中にやるぞ」

「ごめんなさい」


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