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迷宮をただ歩む者  作者: 洗濯紐
序章
3/16

地図化の力

 クミアが指差した場所を見ると、小部屋が存在していた。ど真ん中に有るのは確かに宝箱で、今の俺のレベルでは中を見通す事は出来ないが隠し部屋と言うに相応しい空間だった。

 少しおかしいのがその隠し部屋へと通じる事が出来そうな通路が存在しない事。いや、存在しないわけではないのだが、その隠し部屋の周囲には罠である落とし穴しか存在しなかった。


「これは……落とし穴から行けって事か?」

「そうじゃない?……それにしても、地図化って凄いわね」

「ルートは……なるべく人と接触したくないからこれだな」


 半透明な青色の地図の中、濃い色で表示される一つの道。少し遠回りになってはいるが、これが一番人との接触が少ないのは間違いない。場合によっては一人もいない可能性すら有るだろう。


「……便利ね」

「行くぞ、道中の敵は任せる」

「分かったわ」


 表示されていた地図を仕舞い、クミアよりも前に出る形で先導する様に迷宮を進んでいく。途中で道を覚えているのかと聞かれたが、地図記憶という研究所でも新発見となったスキルのおかげで覚えていられているので問題ない。スキルレベルが1な為100時間以内に地図にした場所しか覚えてられないので、そろそろ王都の地図は忘れそうだが……まあもう行く機会が無さそうだし気にする必要は無いだろう。


「スライムだ。頼む」

「ええ」


 自動地図化の範囲内に入ったスライムを曲がり角に入る前に感知してお願いする。流石にスライムに負ける事は無いと願いたいが、研究所内最弱だった俺はスライムに飛びかかられるだけで死にかねない。初心者の死亡数堂々一位を飾る影からのスライムによる飛びかかり。……勝てるといいなぁ。


 クミアがあっさりと倒し、魔石を回収したのを確認してから再び進んでいく。

スライムの魔石の値段は50d。迷宮都市内で最底辺と思われる宿の飯無し雑魚寝一泊代が1000dだ。複数人で入るとどれだけ取り分けが少なくなるのかが理解させられる。……野宿する場所もないので泊まれないとスラムに行く事になりかねない。


「……クミア、同業だ」

「ええ」


 脳内に表示されている道を凡そ半分程進んだタイミングで、同業者と思われる人達を見つけた。迷宮内では基本的に関わるべきではないというのが暗黙の了解なので俺達が端に避ける形でやり過ごす。


「怪我人がいたわね」

「ああ。傷からしてゴブリンだろうけど、《地図化》……死体が3つあるな。群れに当たるとは運が悪い」


 最初に地図を表示した時に3個ぐらいしか見つける事が出来なかったゴブリンの群れ。今回確認した限りでは周囲に群れは1つしか存在しなかったのであまり気にする必要は無いだろうが、初心者である俺達にとって一番警戒すべき相手だ。


「目的地まであとちょっとだが同業とはもう会わないで済みそうだ。ただゴブリンと2、3回接触する事になりそうだが……いけるか?」

「問題ないわ」

「分かった……早速お出ましだ」


 行きたい道とは違う、脇道から現れた一体のゴブリン。持ってる武器が棍棒なだけまだマシだが……同業さんが戦った相手は3体中2体が小剣だったのはよっぽど運が悪かったのだろう。出来るならばその小剣を回収しに行きたいのだが、道から逸れてしまうし近くに他の群れがあったのでリスクが大きすぎる。


 クミアが両手の小剣でゴブリンを切り刻んでいくのを確認しながら、もう一度地図化を発動させる。


「おっ……」

「どうしたの?」

「いや、ぶつかる予定だったゴブリンが別の道に逸れてった」

「そう……」


 ゴブリンの胸を裂いて魔石を取り出しながら問いかけるクミアだが、俺が余計な接敵をしないで済むと喜んだのに対して少し残念そうにしていた。宝箱が有る事が分かった今、なるべく戦わないで中身を売りに行けるに越した事は無い。中身が粗悪品だったとしても宝箱から出たものだし数千dはするのは間違いないだろう。


「行くぞ。あと1体は確実にぶつかる」

「分かったわ」


 クミアが腰に有る袋に魔石を入れているのを尻目に確認しながら進んでいく。ローブの中に有る”何か”に上手く入れたように見せかけていたが……あれマジックポーチだな。最低品質の物であっても部屋一つ分ぐらいの物を入れられる高級マジックアイテム。隠していた以上聞かないべきなのだろうが……平民の少女が持てる様な物ではない。


「クミア」

「ええ」


 落とし穴の罠まで後少し、といった所でもう一度ゴブリンが現れたのでクミアに声をかけるが、既に見つけていた様で走り出していた。……俺は無視されてたスライムでも倒すか。

 無視されていたスライムの前でしゃがみ、なけなしの金を使って買った短剣を使って核をほじくり返していく。スライムは武器を溶かす液で出来ているが、定期的に布で拭けば問題ない。偶に飛ばしてくるスライムの液に少し冷や汗をかかされたものの、数分かけてほじくり返す事に成功した。


「……ルイス、弱いのね」

「地図化とかそういうのに特化してるから」


 女子に弱いと言われてしまうと少し情けない物が有るが、研究所では日常的に言われていた言葉だ。……少し心にダメージを受けながらも、無いとは思うが自分の位階を……


「え?」


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