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迷宮をただ歩む者  作者: 洗濯紐
一章
12/16

常識の有無

 『これですか?』とミルが言うと共に背中に現れた4つの純白の翼に、綺麗な黒髪の上に現れた光で出来た輪。両方共に白い光を発しながら空中に浮遊していた。翼の根本、衣類の辺りがどうなっているのか気になって《自動地図化》を全力駆使して確認したが……衣類を押さえつけながら背中に接触していた。


「……今まではどうやって隠してたんだ?」

「体内ですよ?翼も輪も魔力の塊ですから」

「へ、へぇ……」


 真面目な顔で何かを考えだした様に見えるクミアを横目に見ながら、その後も幾つか好奇心からの質問を続けていく。その間もずっとクミアは目を閉じて何かをしているように見えたが……。


「無理ね」

「そうか」

「どうしたんですか?」

「「いや、何でも……」」


 お互いに言葉が重なり途中で止めてしまったが、それを見てミルは何か納得したのかニコニコしながらそれ以上聞くのを止めてくれた。俺はついクミアの目の前で悪魔だと言ってしまったが、なにか事情がありそうだしあまりバレたくないのは間違いない。


「お腹、空きましたね!」

「そうね。夜ご飯を頼もうかしら」

「はい!」

「夜?」

「ルイスは……気絶の原因が原因だし5日ぶりでも問題ないわよね」


 そう言いながら部屋を出ていくクミア、ミルの後に続いてふらつきながらも部屋を出る。寝室の前にある空間の机の周りに有る椅子の一つにミルが座っていたので、俺もそれに応じて椅子に座った。クミアは魔道具を使って何かしていたが、それで注文でもしていたのだろう。


「今まではルイスの分もミルが食べてたのだけど……一人分で足りる?」

「足りない事は無いと思います!……多分」

「……俺のを分けようか?」

「位階急上昇による気絶って、復活した時に沢山食べるらしいわよ。私が分けるわ」

「いえっ!悪いので大丈夫ですよ!?一日ぐらいなら耐えれます!」


 それでも一日しか耐えられないのか……とミルがどのぐらい食べるのかが気になりはした物の、口には出さなかった。


「……明日は2層に行く予定だから倒れられたら困るのよ」

「お腹空いたぐらいじゃ倒れませんよ?」

「……ならいいわ」


 それから数分と経たない内にパンやスープなど、割と高級そうに見える夜ご飯が運ばれてきた。


「……これ食べて良いのか?」

「……?良いわよ?」

「早く食べましょうよルイスさん!!」

「あ、あぁ」


 精霊神様に祈った後に、各々で食べ始める。クミアもミルも精霊神様に祈る時は変な顔をしていたが、このぐらいはしなきゃ駄目だろう。クミアに借りている事になっているであろう大量の金から目を逸しつつ、抗えない食欲からご飯を食べ始める。


「ほれひにても──」

「食べてる途中はしゃべるなよ……」

「ふみまへん……それにしてもルイスさんって本当に変ですよね」

「……」

「……おいそこ、笑うな」


 口に含んでいたスープを吹き出しそうになりながらも何とか堪えたクミアだが口元が緩んでいるのは間違いないし、俺へと面白そうな目線を向けているのも間違いなかった。


「で、何がおかしいんだ?」

「スライム程度じゃ位階は中々上がりませんよ?それにスキルレベルもおかしいし」

「あ、それ私も思ったの。詳しく説明してくれない?特にスキルについて」

「……『ミルいるけど?』」

『良いじゃない、この子バカよ』

「……さっきも言ったんだが、俺は歩くだけで位階を上げられる。スキルは……自動地図化の事だな。10レベルにしたら気絶した」

「「……」ツッコミどころが増えたのだけど」


 ツッコミどころ……は自動地図化が理論上最大値まで上がっている事だろう。流石にこれは指摘されてもおかしくはない。まあ、俺が研究所にいた頃は10レベルに到達したスキルなど普通にありふれていたので指摘される程度ですむはずだ。


「ルイスさん……あれですね!常識がない人です!」

「は?」

「ぶふっ……」

「おい?」


 ガタンと音をたてながら立ち上がり、俺を指差しながら頭の可笑しい事を宣ったミルはこの際おいておくとして……


「おい、さっきから笑いすぎだろ」

「だって面白いんだもの」

「……?ルイスさんが変なのは面白いんですか?」

「ふっ……そうよ」

「そうよじゃねえよ」

「……?でもルイスさん、常識ありませんよ?」

「いや、あるから」


 研究所では一般教養を教わる時間もあったのだ。常識がない訳がない。確かにその一般教養では学べた事はそこまで多くないかもしれないが、それでも常識は有るはずだ。


「じゃあ……常識クイズでもしてみましょうよ!」

「あ、良いわね」

「分かった」


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