36.王都編⑫〜模擬戦開始とたった一つの贈り物〜
広めにとられた模擬戦場は既に周りには多くの人が集まっていた。
イチカ王女やリッカも既にそこにいた。
──オレは一人模擬戦場のど真ん中まで歩いていく。
すると今回のオレの模擬戦相手、ケルベルトもど真ん中に向かって歩いてくる。
そしてオレとケルベロスは模擬戦場のど真ん中で睨み合う。
なんだかアニメの最終決戦みたいな雰囲気にこんな状況なのにもオレは少しだけテンションが上がってきた。
「──ほぅ、来たのか。それだけは褒めてやろう、俺はお前が逃げ出すんじゃないかとばかり思っていたからな」
「誰が逃げるもんか! オレはお前をぶっ倒してリッカを連れてスタットに帰るんだよ!」
オレはやけに上から目線のケルベルトに腹が立つ。
「ふふははは! 何を言っている? お前ごときの雑魚がオレにかなうわけがなかろうが」
ケルベルトは突然腹を抱えて笑い出し、オレを小馬鹿にする。
ケルベルトはこれでも王国の兵士長なのだ、この態度も自信を持つのも無理ないのかもしれない。
「──それでは役者は揃いましたので、模擬戦を開始したいと思います」
第一王女のイチカが皆に聞こえる程度の声を出し、オレとケルベルトのいるど真ん中まで歩いてくる。
「これは仕掛けなんて全くないただの木刀です、今回はこれを使って貰います」
言いながらイチカ王女はオレとケルベルトに剣を手渡しする。
「ははっ! このケルベルト、この国のため、全力で戦います!」
こういう時だけ兵士長っぽいんだな……。
オレはゴミを見るような目でケルベルトを見つめる。
そんな視線には気づいていないのか、気にせずに跪き木刀を受け取る。
そしてイチカ王女が木刀を渡した後再び模擬戦の説明をする。
「今私が渡した木刀などを使い、相手を気絶や武器がなくなってしまった時などの戦闘不能な状態にする、もしくは降参により勝敗が決まります」
オレは勝てるのか?
この王国の兵士長ってことは、この国一番の剣の使い手ということじゃないのか?
それをわかっていてオレをケルベルトと戦わせようとしているということはやはりイチカ王女はリッカを手放す気はないらしい。
オレとケルベルトは少し距離を置き、剣を構える。
「──それでは…………模擬戦開始!」
王女の合図と共に模擬戦が始まった。
──合図とほぼ同時にケルベルトはこちらに直ぐに走り込んでくる。
さすがは王国最強だ、反応速度が半端じゃない。
あっという間に距離を詰められたオレは何とかケルベルトの木刀を防ごうとする……が、ダメだった。
ケルベルトの剣の速度は異常なほど速くて防ぎきれず、オレの顔面はとてつもない力で叩かれた。
オレはそのまま地面に叩きつけられる。
死ぬ……まじで死ぬ、痛いとかいうレベルじゃない。
オレは一撃で地面に叩きつけられてしまい、もう体が休みたいと叫んでいる。
「──どうした? もう終わりか? さっきまでの威勢はどうした?」
本来ならもうオレの心はズタボロだ、こんなの勝てっこないもん。
だけど今日のオレは背負ってるものの重さが違う。
──オレは全身を使って立ち上がる。
「ほぅ、面白い。なぜあそこにいるとにかく無能で禁忌の魔法まで覚えてしまった第二王女のために戦うんだ? お前達にとってはもはや無意味だろ?」
「──かまだから」
「ん?」
「仲間だからだよ!」
「つまらん」
言いながらケルベルトはオレに木刀を振った。
オレは咄嗟にそれを防ごうとする。
いける、次は防げる!
オレがゲームで鍛えてきた受け流し技術を舐めるなよ!
そう思いながら木刀を受けたその時だった。
バキッという音をたててオレの木刀は砕けた。
そのままオレは木刀を当てられ、またも地面に叩きつけられる。
「──所詮その程度か……立て…………立てと言っている!」
言いながら追い打ちをかけるようにオレを木刀で殴る。
「お兄ちゃん! もう勝敗は決まっているはずです! ……なのにどうして誰も止めないですか!」
「サエ落ち着いて! これにはなにか事情があるはずよ」
サエは言いながら第一王女の方を見る。
すると王女は立ちながらビクともせずに眠っているように見えた。
「──もう辞めて! ケルベルト、もう辞めて! 勝負は着いているはずよ!」
言いながらリッカは模擬戦場に上がってくる。
「何を言っているのですか無能第二王女? 俺が今日から王になるというのに」
「何をふざけているの? もうやめてと言っているでしょう?」
「ふざけてなんかいないさ、今日から俺が王になるといっているだ、手始めに見せしめとしてそこで馬鹿みたいに寝ている第一王女を処刑して……次はお前だよ? 無能第二王女」
「本性表したなおっさん……ぐわっ! オレは最初からわかってたけどよ……」
「もうやめてよ! お願いだから……ヒラガを傷つけないで!」
言いながら今もバシバシと木刀で叩きつけられているオレを庇うようにしながら前に出るが、力なく叩き飛ばされる。
「うるさいぞ無能王女、第一王女には麻酔バリで眠らせておいたのだが、お前には毒バリでここで死んでもらうのも悪くない。そうは思わないか?」
それを聞いたリッカは尻もちを着いた状態で後ずさりする。
ケルベルトはそれを追うように笑いながら歩き迫る。
──そしてサエは突然、まるで何か凄いものを見るような驚いた目をする。
ケルベルトの真後ろで、もうボロボロになっているにも関わらずオレが全身を使ってまたも立ち上がろうとしていたのだから。
その表情で察したのかケルベルトは後ろを振り向き高笑いする。
「面白いぞ少年! 目立つ要素のない若者だと思っていたが、ここまでオレを楽しませてくれようとは! 少しは見直したぞ」
「──なんで……立ち上がるのよ……! 私の問題にあなたは関係ない!」
オレは無様にも立ち上がる。
リッカがいくら辛そうに涙を流していようがそれは関係ない。
「……関係あるさ……オレの仲間に手を出そうとするやつは……誰であろうと許さない……!」
「ふはははは! 一体どの口が言うんだよ?」
仲間のためなら友達のためなら、オレは結構頑張るって決めてんだよ。
「ヒラガ! もうやめてよ!」
リッカがくれたたった一つ贈り物、使わせてもらうぞ……。
「『フラッシュ』ッッ!」
そう、これはリッカがスタットで最後に押しミスしてオレが覚えた魔法。
MP全てを使い尽くし、相手の視界を奪う魔法。
本来なら誰も覚えたがらない最弱の魔法。
これが皮肉なことにもリッカからのたった一つの贈り物だ。
だが、それでいい。いや、それがいいのかもしれない。
──魔法を使った瞬間、ケルベルトの目の前に強い光が発生する。
そしてケルベルトの視界を奪った。
その瞬間オレの全ての力が抜けていく。
MP切れを引き起こしたのだ。
まだ倒れるな鈴木平賀!
お前はリッカを救うんだろうが!
オレは意識が朦朧とする中必死に踏ん張り、その時に地面で掴んだ砂をケルベルトの目を目掛けて投げつける。
見事にも散り散りになりながらも砂はケルベルトが目を開いた瞬間、追い討ちをかけるように目に入り込む。
するとケルベルトは両手で目に入った砂を取るように目を覆い隠す。
それを見ていた周りがザワついているの様子が伺えるが、周りの声なんて関係ない。
オレはその時にケルベルトが落とした木刀を拾い、朦朧とした意識の中、ケルベルト目掛けて振るった。
するとオレの振るった木刀は見事にケルベルトの脳天をカチ割った。
その衝撃でケルベルトはフラっと地面に倒れ、そのまま気絶した。
「──勝ったんだな、オレ……」
オレも力尽き、地面にばたりと倒れた。
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次回で話の区切りとなります。
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